EC事業者から現状の物流状況を詳細を聞き、その状況に対応できる物流代行会社を紹介する事業を手掛けるセレクチュアーソリューション。全国70社以上の物流倉庫と提携し、EC物流に関しては業界で最も多くの情報を持っている会社だろう。その事業責任者で多くの物流関係者とも深い人脈を持つ星川保取締役に、EC物流業界で起こっている変化と今後の展望について語ってもらった。
保管、発送以外の付加サービスが重要に
ここ数年のEC物流業界で最も大きな事件といえば、佐川、ヤマトの値上げだろう。これにより、一時流行ったワンコイン物流(1荷物当たり500円で提供する物流サービス)がほとんどなくなった。つまり、物流代行会社にとって価格だけで訴求することが難しくなってきたといえる。そのため、物流代行会社は差別化を図るため、保管と発送の間に流通加工を行えるなど、保管と発送以外にどんなサービスが行えるかが重要になってきた。EC企業にもこうしたサービスをアピールしやすい環境になっているとも考えられる。
EC事業者の動きは、従来は地方から発送してもサイズの大きさは問わず一律500円の値付けが多かった。そのため、地方のEC事業者にとっては地価の安い地元に配送拠点を構え、全国に発送することが多かった。
ただ、料金改定によって距離、重量をしっかり勘案されるようになった。特に冷蔵冷凍商品、家具などの大型商品、お米など重量のある商材の値上がり率が大きい。そのため、こうした商品を取り扱うEC事業者は、発送先になるべく近い場所で物流拠点を設けようと考えるようになった。関東、関西、中部など複数の拠点を設ける需要が増えたため、物流代行事業者の利用が増えている。
一方、これまで物流代行会社にアウトソースしていた物流を自社に戻す動きも出てきている。配送料の値上げで、高まった物流コストを抑えるために、再び物流業務を自社に戻そうと考えているためだ。こうした動きは特に大手企業に多いように感じる。ただ、個人的には自社に戻すのはやめたほうがいいと思う。物流を自社で行うことで、さまざまな作業が煩雑になり、見えないコストが発生する。見た目上はコストが下がっていても、実際は人を採用するコスト、管理するコスト、教育するコストといった見えないコストが発生している可能性がある。いずれこうした点が顕在化し、問題が出てくる可能性が高いためだ。
EC物流ではここ数年、配送スピードに対するEC事業者側のニーズが高まっている。これは競合他社もやっているから自社でも対応しなければ取り残されるのではないかという恐れがあるからではないかと思う。ただ、物流コストに対する考えがシビアになっている現状、配送スピードを追いかけないという選択肢もあってもいいのではないかと思う。実際、ECの現場を見てみると、食品やギフトは翌日配送のニーズが高いが、そのほかの商材では、翌日配送サービスがなければ入ってこなかった注文というのは10%にも満たない。そのために翌日配送の体制を採用するのは採算が合わないため、経費の見直しを考えるタイミングなのではないか。
物流代行会社の優勝劣敗が鮮明に
現在、不動産会社による通販倉庫の竣工が続き、力のある物流代行会社が新たなセンターを設置する動きが目立ってきている。EC事業者は、古い仕組みを使って自社の商品を配送するよりも、新しいセンターで最新システムを使って発送したいと考えるのは当然だろう。今後、物流代行会社のなかでも優勝劣敗がはっきりしてくるのではないか。
また新しいサービスに期待したいのが大型商品向け物流サービス。従来に比べ配送料金は3~5倍になっており、多くの家具EC事業者などが悲鳴を上げている。ただ、大型商品は消費者がECで購入するニューズが高い商品なので、大型商品向けサービスをどこかの企業がリリースすれば一気に広がるのではないか。ヤマト、佐川以外の配送会社の頑張りに期待したい。