ネットショップ担当者フォーラム編集部 2019/3/28 7:00

2018年にEC化率が10%台に達したストライプインターナショナル。ここ数年、デジタルシフトを推進してきたストライプは2019年、一転して「EC化率は追わない」という方針に切り替えた。

デジタルシフトは進めるが、EC化率は追わない……相反するように見えるこの方針転換が、ストライプが推進するオムニチャネル戦略の成功のカギを握っている。

ストライプが考えるEC化率を追う弊害

EC化率をうたうことで、実店舗のお客さまをクーポンなどでやや強引にECへ誘導してしまうといった弊害が出てくる。実店舗とネットの両チャネルを利用されるお客さま、つまりオムニチャネルで商品購入するお客さまは顧客ロイヤリティが高いと言われるが、当社もその傾向が顕著。いま取り組んでいるのは、リアル店舗をお客さまのエンゲージメントを高める体験の場、ECを購入の利便性を提供する場と、使い分けしやすくすることだ。

こう話すストライプの執行役員である佐藤満氏(グローバルファッション本部 本部長)は、KPI(重要業績評価指標)にEC化率を入れる弊害をこう説明。重要視するのは、ネットと実店舗の両チャネルでLTV(顧客生涯価値)を向上させること、と強調する。

EC関連の部署では売上予算は設定しているものの、「例年の10~20%成長といった数値ではなく、伸び率を最重要視せず、お客さまのLTVを重視することとした」(佐藤氏)。

従来、ECサイト限定クーポンやタイムセールといった施策を積極的に行っていたが、2018年の後半から「無茶な販促はやらないようにした」(佐藤氏)と言う。

ストライプグループの売上高推移など
ストライプグループの売上高推移など(ストライプインターナショナルのサイトから編集部がキャプチャ)

その影響を受け安売り競争からも撤退。ストライプインターナショナルは、従来から廃棄率は0.2%未満と低く、消化率を上げることに重きを置いていたが、現在はAI(人工知能)で在庫調整をしながら生産量を調整。余った在庫は値引き販売するといった戦略から、「最適な生産量を実現し、プロパー価格で販売する」といった方針にかじを切った

その意気込みを示すのが、主力ブランド「earth music&ecology」のブランドメッセージを2019年から「エシカル」に決定したこと。これには、洋服を生産する立場の責任を改めて考えるという意味が込められている。

これまで、過剰在庫は、ECサイトでのクーポン提供や割引販売などの価格施策で解消してきたが、2018年後半以降はこうした販促を抑えた。それによって「粗利率は2018年前半と比べ、2018年後半以降は大きく改善した」(佐藤氏)と言う。

株式会社ストライプインターナショナル 執行役員 グローバルファッション本部 本部長 兼ストライプデパートメント 専務取締役 兼 COO 佐藤 満 氏
株式会社ストライプインターナショナル 執行役員 グローバルファッション本部 本部長 兼ストライプデパートメント 専務取締役 兼 COO 佐藤 満 氏

店舗は体験もできる場へ。

ECサイトでの過剰なクーポン提供、割引販売を抑える一方で着手したのが、LTVを向上させるための顧客とのコミュニケーション強化。2019年、ネットとECを含めた会社全体でLTVを向上させるミッションを担うCRM室を新設した。

たとえば主力ブランドの「earth music&ecology」。2019年春の新CM「エシカルへ」篇では、「日本国内外274店舗を展開するアースは常に誠実な姿勢を持ち、生地の選定から洋服をお客さまに届けるまで、製造工場、地球環境への配慮を今まで以上に取り組んでまいります」というメッセージを込めている。

2019年春の新CM

今の消費行動を見ると、安いから買うという消費よりも、購入するための理由を考える消費者が増えている。「earth music&ecology」の旗艦店「earth music&ecology TOKYO 東京ソラマチ」では、オーガニックコットンに触れる体験ができる。体験を重視し、店舗の在り方を変えようという試みを始めている

外部のECプラットフォームを利用するメリット

EC業界では古くから、「自社EC強化」といった方針が声高に叫ばれている中、ファッションEC業界では「ZOZO離れ」がキーワードになってきている。この大本の考え方が「脱モール」である。

ストライプは自社で手がけるECサービスとして、自社ECサイトの「STRIPE CLUB」、子会社が運営するベビー服などのECサイト「smarby」、ソフトバンクとの合弁会社が運営するECサイト「ストライプデパートメント」、レンタルECの「メチャカリ」を運営している一方、「ZOZOTOWN」「オンワード・クローゼット」といった外部ECプラットフォームへの出店も行っている。

ストライプの自社ECサイト「STRIPE CLUB」。「earth music&ecology」などさまざまなブランドを横断的に購入できる場をコンセプトとしている
ストライプの自社ECサイト「STRIPE CLUB」。「earth music&ecology」などさまざまなブランドを横断的に購入できる場をコンセプトとしている(編集部がキャプチャ)

自社ECも強化するが、外部ECサイトも強化する――ストライプではこんな方針を掲げる。その背景にあるのは「チャネルごとにそれぞれお客さまがおり、そのチャネルで販売することでよりお客さまに喜ばれる」(佐藤氏)という考え方。そして、佐藤氏はこう付け加える。

気を付けているのは収益のバランス。外部のECプラットフォームを利用するメリットも大きい。外部サービスを使っているお客さまがブランドを知って、店舗で商品を購入するといった効果も生まれている

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ネットショップ担当者フォーラムが4月10日(水)に東京都中央区日本橋(コングレスクエア日本橋 3階ホール)で開催するセミナーイベント「ネットショップ担当者フォーラム2019春 eコマースコミュニケーションDay」に、ストライプの佐藤氏が登壇。

「EC化率は追わない――ストライプのデジタルシフト戦略」をテーマに、ストライプのオムニチャネル戦略を解説する。

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