全米第2位の小売業「Albertsons Companies(アルバートソンズ・カンパニー)が取り組むデジタルトランスフォーメーション
米国35の州で2,300店舗ほどのスーパーマーケットなどを運営する「Albertsons Companies(アルバートソンズ・カンパニー)」は、米国でウォルマートに次ぐ規模を持つ小売企業だ。
「Safeway(セーフウェイ)」「Albertsons(アルバートソンズ)」など21ものブランドを擁し、2017年の売上高は599億ドル(1ドル=110円換算でおよそ6兆5,890億円)で、従業員数は275,000人(2017年7月時点)、1週間に同社系列の店舗を利用する顧客は平均3,400万人にのぼる。
その「Albertsons Companies」が近年、EC事業で急成長している。2018年は前年比112%の成長を見せたという。「Albertsons Companies」の製品管理 プラットフォーム部長が、「Adobe Experience Cloud」を活用したデジタルマーケティングへの取り組みについて語った。
データ中心主義でグループ企業全体の顧客体験に挑む
「Albertsons Companies」の製品管理 プラットフォーム部長 ポール・ジョンソン氏は、激しさを増す競争に打ち勝つべく、よりデジタル化されたサービスを顧客に提供できるよう取り組んでいると説明した。
「Albertsons」では2000年からeコマースに取り組んでおり、18年以上の歴史がある。現在ではウォルマートのような伝統的な小売店だけでなく、Amazonのような新興のeコマース事業者、さらにはスタートアップなどもあり、競争は激しくなっている。このため、1年半前から我々もデジタルトランスフォーメーションに取り組んでおり、新しい価値の創造に取り組んでいる。(ジョンソン氏)
「Albertsons Companies」の課題は3つあった。
- 利用者により優れた購買体験を提供すること
- 21もの異なるブランドの顧客アカウントをきちんと管理できるよう、技術的な課題をクリアにすること
- 持っているデータを活用すること
同社は21のブランドで小売業を展開しており、それぞれのブランドで異なる会員サービスを展開していた。さらに、スマホアプリが42個もあるなど、複雑な状況にあり、それらを統合していく必要があった。
具体的な解決方法として、できるだけ手を広げないでシンプルにしていくことを目指した。例えば、実店舗のポイントカードの仕組みとeコマースの仕組みを統合し、シングルサインオンを実現した。できるだけ早くリリースするよう開発チームを鼓舞したが、「これまでのやり方を継承しない」「痛みを避けない」ということは決めていた。(ジョンソン氏)
こうした課題を解決するため、社内で決めたのが下記のルールだ。
開発チームと密接なやりとりを行なうこと、データと顧客中心主義を貫くこと、さらに「Adobe Experience Cloud」を中心とした複数のソリューションを活用していくことが、課題を解決する上で重要になった。(ジョンソン氏)
徹底的にデータを重視する姿勢を貫くことで、利用者の購買体験は大きく変わったと説明した。
正しい取り組みには正しいツールが不可欠
続いて登壇したアンジェラ・シングー氏は下記のように述べた。
正しい取り組みには正しいツールを使わなければならない。Adobeのサービスの中で、最も自社に適切なのは何なのか、精査しなければならない。(シングー氏)
結果的に同社が利用したのは分析サービスの「Adobe Analytics」、ユーザー体験を管理する「Adobe Experience Manager」、カスタマーへのリーチを目指す「Adobe Target」の3つ。それらのツールを利用した5年間のロードマップを立てて取り組んでいるという。
まずは価格表示のA/Bテストから始めた。次いでクーポンのUIのテストを行い、次にレコメンデーションのテストというように、段階を経て取り組んでいる。
現在はまだロードマップの途中。2018年は分断されていた複数のブランドのデジタル環境を1つにまとめ、ポイントカードやeコマースの環境を整備した。すでにeコマースの業績は110%伸長した。2019年はその延長として、実店舗とeコマースでシームレスにショッピングができる環境を整え、より顧客にリーチできるマーケティング体制を整え、顧客の利便性を上げてきたいとした。
これまでも予定を立てて取り組んできたが、実際には予定通りには進まず、たくさんの落とし穴があった。しかし、大事なことは常にゴールを維持して、困難を乗り越えて前進することだ。(シングー氏)