アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス市で開かれたAdobe主催のプライベートイベントAdobe Summit」を取材した。このイベントは同社のデジタルマーケティング支援クラウドサービス「Adobe Experience Cloud」をテーマにしたイベント。ブレイクアウトセッションに登壇したのは「Kohl's(コールズ)」。Kohl'sは「Adobe Experience Cloud」の中でも顧客ごとにパーソナライズされたコンテンツを表示させるツール「Adobe Target」などを利用し、ユーザー体験の提供に取り組んでいる。

Kohl'sは米国ウェスコンシン州ミルウォーキー市に本社を構える米国の小売事業者。全米に1000店以上の店舗を持っている。全米の主要都市にKohl'sブランドの店舗を構え、可能な限りローコストで店舗運営を行ないつつ、ブランド製品を比較的安く販売している。全米でデパートが苦戦している中、健全な経営を行なっている企業として知られている。

Kohl'sのECサイト
Kohl'sのECサイト(編集部でキャプチャ)

やらなくても倒れることはないが、やれば確実に効果が出る

Kohl'sでデジタルテスト&最適化担当 シニアマネージャを務めるトム・ゴレス氏はこう語った。

どのようなパーソナライゼーションを実現するのかは純粋に技術的な問題だが、やるかやらないかはジムの会員権を買って始めるか、買わないでやらないかのようなもの。ジムに通うことは生きていく上で必ずしも必要ではないが、ジムに通えばより健康を手に入れることができる。パーソナライゼーションも同じようなものだ(ゴレス氏)

Kohl's デジタルテスト&最適化担当 シニアマネージャ トム・ゴレス氏
Kohl's デジタルテスト&最適化担当 シニアマネージャ トム・ゴレス氏
Personalization
パーソナライゼーションはもはやオプションではなく、多くの組織にとって必須になりつつある

今回のAdobe Summitにおいて繰り返し登場したキーワードの1つが「CXM(Customer Experience Management/望ましい顧客体験の実現)」。パーソナライゼーションは「CXM」を実現する手段の1つ。特定のIDに対してそのIDの特性に合ったサービスを提供することで、ユーザー体験を向上させる仕組みだ。

Adobeは「Adobe Experience Cloud」の一部として「Adobe Marketing Cloud」というマーケティング支援ツールを提供しており、その中でターゲット・マーケティングを実現する支援ツールが「Adobe Target」。Kohl'sでは顧客一人ひとりに合ったデジタル体験を実現するためにこの「Adobe Target」を利用しているという。

パーソナライゼーションはいつか取り組まないといけない課題なので、今こそ取り組んでおくべき。どのように取り組んで行くかは、どのように始まるか、何をリターンとして期待するか、そしてどのようにしてリターンを数値化するかを考えて進めればいい。(ゴレス氏)

Building a practice
①どう始めるか、②何を返すか、③効果をどう測るか、という3つの段階を踏んで取り組んでいく

テストとリサーチを経て導入ツールを選定

ゴレス氏はまず施策についていくつかのテストを実施し、社内で効果を確認することで、目標やゴールを共通認識として持てるようになった。その上で、Adobe Summitのようなデジタルマーケティングのカンファレンスに参加し、他社の事例などをチェックし、実際に他社のスピーカーなどに質問したりすることでノウハウを吸収し、自社の場合にはどうしたらいいか検討を重ねた。

Testing evolution
Kohl'sにおけるテストの各段階

そして、「Adobe Experience Cloud」を構成する「Adobe Audience Manager」「Adobe Analytics」「Adobe Target」の3つのツールを協調させて動作する仕組みを作っていった。

「Adobe Audience Manager」はデータ収集からセグメンテーション、ターゲティング、最適化など、データ管理に必要な機能を備えたツール。「Adobe Analytics」はデータの測定/分析ツール。「Adobe Target」 は、顧客のエクスペリエンスのカスタマイズやパーソナライズを行うツールだ。

Operation at scale
「Adobe Audience Manager」「Adobe Analytics」「Adobe Target」を統合して利用できるようにする

「Your Price」ができるまで

こうした環境から生まれたのが顧客ごとに異なる最終価格を提示する「Your Price」だ。

カスタマーは明快な価格を求めており、そこにクーポンや値引きなどのパーソナライズされたサービスをどうやって提供していくかが重要になる。テスト環境をきちんと整え、継続した最適化が重要だ。実際のサービスの環境の中でも調査項目を決め、A/Bテストを行ない、その結果から学習するというシーケンスを何度も繰り返すことで効果がより上がる。(ゴレス氏)

Your Price
1 customer needs for price clarity
2 leverages testing platform
3 Continuous optimization
Initial concept tested well on a small scale and served as project catalyst
your price: Project sequence
Step1
Qualitative research
Step2
A/B testing conducted on site to experiment with creative and measure impact
Winning creative evolution
step3
technology teams took learnings from testing to develop permanent solution
顧客の求めているのは明快な価格。小規模なテストからスタートした

同社の決算でもケビン・マンセルCEOが「価格のパーソナライゼーションがKohl'sの成長の鍵になっている」と語ったという。

AIや機械学習もパーソナライズに活用

Kohl'sではその後、「Adobe Sensei(アドビ・センセイ)」でAIやマシンラーニングも導入し、よりスマートなパーソナライゼーションサービスが実現できるようになった。

Operating at scale : Sophistication
AI(Adobe Sensei)を導入することでサービスの洗練させていく
key takeaways
set yourself up for success
-Process and structure
-guidelines and roles
-technical support
Share
-evangelize the value of testing and democratize the findings
Persistence
- Culture Shifts take time
準備を整え結果を社内でシェアし、持続することが成功のポイント

大事なことは、成功するために自分たち自身を変えていくことだ。そのために常に“価値はなんなのか”ということを組織全体でシェアし、常に文化を変えていくことが重要だ。(ゴレス氏)

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笠原 一輝

笠原 一輝

「PC Watch」「Car Watch」「トラベル Watch」などのインプレスの各媒体などに記事を寄稿しています。クラウドからエッジまで幅広い視点でITの今をお伝えします。

JMS(日本モータースポーツ記者会)の会員として、モータースポーツの取材記事を「Car Watch」に寄稿しています。

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