メンズアパレル、バイオリン製作、宝石印鑑……ECのプロが選んだ「優れたサイト」がやっていること
ジャパンEコマースコンサルタント協会(JECCICA)の「ECデザイン大賞 2019」の最終プレゼンが5月17日に開催された。ECデザイン大賞では、見た目のデザインだけでなくUXやUIも評価の対象。登壇した5サイトは業種も業態も異なるが、それぞれ創意工夫を凝らし、個性的で魅力的なWebサイト作りを実現していた。結果発表とそれぞれの特徴をまとめた。
【ダイヤモンド賞】
「TAYLOR STITCH(テイラースティッチ)」
2008年にサンフランシスコで誕生したメンズファッションブランド 「TAYLOR STITCH(テイラースティッチ)」は、2017年に日本に上陸。日本での事業はトランスコスモスが手がけ、鎌倉の七里ヶ浜に実店舗を構えている。
ECサイトのコンセプトは「洋服を売るだけでなく購入後のライフスタイルを提案する」。サイトでも「まず商品を出すのではなく、コンテンツを重視している」(トランスコスモス 長尾氏)。
【プラチナ賞】
「高橋ヴァイオリン工房」
「高橋ヴァイオリン工房」があるのは高知県の四万十町。高橋氏はイタリアで10年間の修行を積み、故郷にバイオリン工房を開いた。四万十町は過疎指定地域。故郷を活性化させたいという思いもあった。しかし、工房に注文が来ない。そもそも県内にバイオリンの奏者がほとんどおらず、製作したバイオリンの9割は県外の楽器店への卸。そんな状況を打開したいと思い、Webサイトの立ち上げを決意した。
制作を担当した大塚氏は、県内の企業家やクリエイターを紹介するメディア「EIMONS(エイモンズ)」を運営しており、高橋氏と大塚氏もその取材の中で出会った。
サイト完成後、念願のオンライン初受注が実現し、ヴァイオリン教室の生徒も倍の14名になった。「サイトを作ったことで、四万十町から世界に発信できると確信できました。あとは自分が世界に通用する製作家になれるようにがんばりたい」(高橋氏)
【ゴールド賞】
「ROSE STONE(ローズストーン)」
小林大伸堂は福井県で120年以上の歴史を持つ印鑑店。伝統的な印鑑を取り扱う店舗を運営する一方、「ROSE STONE」では水晶やヒスイ、メノウといった貴石の印鑑を取り扱っている。
リニューアルを手がけたのはルグラン。モバイルからの流入を考慮して購入導線を改善し、それまで掲載されていた情報を整理し、シーン別に印鑑を提案するページを追加するなどした。
サイトでは結婚や出産など、人生の転機での印鑑購入を提案している。店長の小林氏がブログを運営しており、「プロポーズや入籍を機に、男性から女性に印鑑をプレゼントする」という訴求をしている。ブログからの流入も多い。
リニューアル後、受注件数が20%増加。高額商品が売れるようになり、平均購入単価も1.5倍になった。また、LINEチャットボットを導入したことで、問合せ件数が6分の1に減少した。グローバル展開も視野に入れている。
【シルバー賞】
「東急ベル」(SALUS ONLINE MARKETなど)
東急ベルは東急電鉄が運営する沿線特化型ホームコンビニエンスサービスを提供している。ECやネットスーパー、ハウスクリーニングサービスなどを扱っているが、今回はECのリニューアルを行った。制作を担当したのはドーモ。
ECサイトは東急ストアの「ネットスーパー」、東急百貨店と東急ストアのギフト商品を扱う「ギフト日和」、新しく立ち上げた「SALUS ONLINE MARKET」の3つで構成されている。
Mobifyを利用することで、PC共通のHTMLでありながらモバイルに最適化し、リッチなコンテンツも素早く表示できるよう工夫した。
【特別賞】
「Clara Nail 」
新日本ビューティーはネイルサロンを経営しており、「Clara Nail」ではネイルに使用するジェルやパーツなどを販売している。新日本ビューティーの瀧沢氏が目指すのは「眺めるだけでハイセンスを感じさせるサイト」。テーマは「高級感」「安心感と信頼感」「使いやすさ」。世界観を保つため、主に金髪の外国人モデルを採用している。