EC企業のためのSEO対策とコンテンツ作りのポイント。「コンテンツ作りの基本は5W1H」「ユーザーの気持ちを読み取るDo-Know-Go」
EC企業が2020年移行に向き合うべき検索エンジン対策(SEO対策)のポイントを解説したセミナー「検索No.1-SNSとコンテンツの局地戦で中小企業が大手に勝つ方法-」(主催はフューチャーショップ)。後半は「SEOとコンテンツ作りのポイント」「SNSを活用した事例」について、二天紀執行役員でユウキノイン代表取締役の酒匂雄二(さこうゆうじ)氏の講演内容を紹介する。
「小さな池のクジラ」をたくさん育てる
「大海のクジラではなく、池の中のクジラをめざそう」。これは、酒匂氏がスーツ屋で働いていた時、「スーツはすでに強い企業があって太刀打ちするのが厳しいが、モーニングや燕尾服などニッチな市場なら勝てるのではないか」と感じた経験から掲げた理念だ。
Googleアップデートで突然アクセス数が減る
酒匂氏は機能性肌着を取り扱う店舗から「ある日を境にアクセス数と売り上げが落ちた」と相談を受けたという。
「原因はGoogleのアップデート」(酒匂氏)。
Googleは検索品質の評価基準「YMYL(Your Money or Your Life)」という概念を持ち続けている。これは「ユーザーの将来の幸福、健康、経済的安定、人々の安全に潜在的に影響を与えるページ」を指すという。
この概念に基づいてアップデートが行われた結果、身体にかかわるアパレル商品や栄養・効果効能をうたった食品では、商品の紹介に医療的な表現が含まれることが多いため、YMYLに抵触し、大きく順位を下げてしまったのではないか。(酒匂氏)
そのため、健康へ直結する商品はきちんとしたエビデンスが取れているもの、たとえば、医療機関、国家機関、厚労省のデータなどに商品ページからリンクを入れる方が良いとのこと。
意図や関連性の読み取りが深くなるGoogle検索
「Google検索は、検索意図のくみ取りや関連のくみ取りが強くなってきた」と酒匂氏。
今までの検索結果は、「ユーザーが検索した内容が入っていた場合」に太字でハイライトされるようになっていたが、「ユーザーが知りたいであろうキーワード、検索の先にあるユーザーの意図」をGoogleが読み取って表示するようになった。
太字で表示されるキーワードは、ディスクリプションではなくコンテンツ本文にあるtableタグ内の内容。「htmlに準拠した記載方法で、tableタグ内に商品のスペックや材質、使用用途などををしていると出やすい」と酒匂氏は解説する。
3つに分類される検索キーワード
検索エンジンは、検索内容(キーワード)を以下3つの項目に分類されるという。
- ナビゲーショナルクエリ:案内型。特定のウェブサイトに行くこと
- インフォメーショナルクエリ:情報収集型。ユーザーが知りたい情報のこと
- トランザクショナルクエリ:取引型。購入や申込みに関すること
酒匂氏が特に注目したのは2のインフォメーショナルクエリと3のトランザクショナリクエリ。
2のインフォメーショナルクエリは「ユーザーが知りたいこと」や「ハウツー」などのことを指し「コンテンツを充実させるのにピッタリ」だという。
このクエリに該当するコンテンツを充実させると、同機の高い検索経由が取れる。ユーザーの同機が高そうなものをコンテンツで書いていき、そこから商品にリンクを貼ってSEOをしていく。(酒匂氏)
3のトランザクショナルクエリは商品の購入や会員登録、資料請求などの行為にあたるため、ECにとって重要な部分になるという。
「Do-Know-Go」を重要視した対策
Googleは「Do(Buy)-Know-Go」を提唱している。そのため、キーワードを見る際は「何をしたいのか」「何を知りたいのか」「どこのサイトに行きたいのか」「買いたいのか」といったユーザーの気持ちを読み取ることが大切だという。
Search Console(サーチコンソール)のデータを見て、クエリがDKG(Do-Know-Go)のどれに当てはまるのかを確認する。どのようなユーザーの意図が含まれているのか掘り下げてどんな文章、コンテンツを作るのか決めながら集客につなげていく。(酒匂氏)
上記を踏まえた改善ポイントを酒匂氏は以下のように解説した。
①検索順位は低いが表示回数が多い/クリック率が平均より高い
……検索結果の上位に表示されるコンテンツが、ユーザの意図を満たしていない可能性がある
②検索順位は高いがクリック率が少ない
……表示されるコンテンツがユーザーの意図とずれている可能性がある
いずれもコンテンツの見直しを行うことが重要という。
コンテンツ作りの基本は5W1H
酒匂氏は「コンテンツを作る際に大切なのは5W1Hだ」と説明する。
たとえば、複数人が1人の相手に対しそれぞれプレゼントを贈る場合。プレゼントを受け取る人は1人だが贈る人が複数いる場合、贈る人の数だけプレゼントを選ぶ基準がある。
そのためには、「プレゼント」というビッグワードを取るのではなく、「プレゼント 同僚」や「プレゼント バッグ」などロングテールで取っていく方が購入頻度が高くなる。(酒匂氏)
さらに、5W1Hにプラス1R(Research)をつけて考えると良いという。その部分はユーザーからのレビューで「こう言った目的ために使いました」という使用目的などを参考にし、社内で共有してコンテンツ作りに活かしていくと良い。
コンテンツマーケティングの基礎は100本ノック
コンテンツマーケティングについて、酒匂氏は自身の考えを「100本ノック」と説明。
コツコツとブログやコンテンツを更新していくことが大切。まずはたくさん書いてみること。(酒匂氏)
ただし「1日にたくさん記事を書くことより、安定して更新していくことが大切」とのこと。「ユーザーが見たときに『大体何日に1回更新しているんだな』と更新頻度がわかるようにコンテンツを更新するのが良い」(酒匂氏)
コンテンツは「好きなものを等身大で作ること」が大切
コンテンツ作りのコツを「コンテンツを作る前に、自分の職業と好きをマップ化するのが良い。そうすると良いコンテンツが生まれる」と酒匂氏は話す。
あるブライダル企業で「ディズニーが好き」というスタッフがいました。ディズニーについて話を聞いていたら「ディズニープリンセス」があると。「プリンセスならドレス着ていることが多いので、ウェンディングと絡めてコンテンツを作ってみたら」とアドバイスしました。
それを受けて書いた記事は「ディズニー 結婚式 大阪」と検索した結果、2060万中の2位。好きなことと職業を絡めて良い結果が出た例だと思います。(酒匂氏)
複数のコンテンツを自社で競わせる「パシュートSEO」
「自社の2つのコンテンツを『追い抜き』させながら強いコンテンツを探し、作る」というSEOの手法について酒匂氏は説明。
商品ページを先に一定作りこみ、検索結果の順位を確認して先行させます。その商品ページと順位を指標にしてカテゴリを作りこむ。先行する商品ページをカテゴリページで検索順位を追いかけていく。場合によってはブログでさらにロングテールを撒き、スケートのパシュートのように2つのページで追い抜き競争をさせていきます。(酒匂氏)
既存コンテンツに対して後発(ブログ)コンテンツで追い上げをかけることも可能だ。専門性があると検索上位を取ることができるとのこと。
「セレンティビティ」なコンテンツは強い
酒匂氏は「自分が良いと思えるような商品に偶然出会える『セレンティビティ』なコンテンツを持っているサイトは強い」と言う。
セレンティビティなコンテンツは閲覧からすぐにコンバージョンには結びつかないかもしれないが、自社の存在を知ってもらい、自社とユーザーの出会いを作りながら新規のユーザーを獲得していくことができる。(酒匂氏)
「SEOなどのように直接的でなくても、変化球からお客さんを入れ込んでいくこと」に力を入れていくことが大切だという。
1つの受注の質を見る
SEOを開始してユーザーにたどり着くまでにいろいろな方法がある中で、酒匂氏は「セレンティビティなコンテンツ作り」を推奨した。
まっすぐなSEOは効果が出るが、大手の壁、巨大通販モールの壁に直面する。セレンティビティはコスト・時間ともにかからないが、効果が出るまでに時間がかかる。リスティングは効果がすぐに出るが価格が高い。それぞれ特徴がある。
いくつかある方法の中で「結果が出るまでに時間がかかるが、ユーザーに『あった!』と思わせるコンテンツ作りが濃いユーザー獲得につながる。ニーズやペインが強いワード、ニッチ、ロングテールのキーワードをかき集めることが大切。(酒匂氏)
SNSの活用事例
酒匂氏はSNSの活用事例について説明した。「SNSを複数使うことに越したことはないが、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムと各SNSを使っているユーザーの属性を理解することが必要」(酒匂氏)
ツイッターの4択アンケート活用
ツイッターの活用事例では「4択アンケート」を利用した例をあげた。
「4択アンケート」を利用することにより、ユーザーの考えを知ることができる。これにより社内の意見で固まってしまい、失敗してしまうことを防ぐことが可能。「内輪だけで『これだ』と決めつけないためにも4択アンケートは有用」(酒匂氏)
「4択アンケート」で広く意見を募集したい場合は、投稿内容に「フォロー&リツイートで」など拡散してもらいたい旨を記載すると拡散数が増えやすいという。
また、イベント時などは「○名にギフトカードをプレゼント」など景品を用意するとユーザーの反応が良くなる可能性があるという。
フェイスブックのモデル写真をユーザーに
酒匂氏は企業フェイスブックのヘッダー写真に自社商品を着用したユーザーの写真を使用している例をあげた。
「予算的にモデルを雇うのが厳しいので、ユーザーに着てもらいその写真を使わせてもらいたい」と考えたのがきっかけです。写真に採用されたユーザーは自分の写真が使われると嬉しくなる。そうすると「ここに自分の写真が載っている」といって拡散してくれるようになるんです。ユーザーがインフルエンサーになる例です。(酒匂氏)
インスタグラムでABテスト
「インスタグラムでABテストを行うと、ユーザーの好みやささりやすさを確認できる」とのこと。
同じハッシュタグ・投稿時間に設定し、写真を変えてABテストを行ってみるというもの。
最後に
酒匂氏は最後に「コンテンツマーケティングとは、お客様のお悩み解決・お役立ちコンテンツ」と締めくくった。
お客さんの分からないに手を差し伸べるようなコンテンツ作りをする。「あなたが探しているものを私たちは持っています」と提案できるようなコンテンツ作りを心がけて下さい。(酒匂氏)
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