越境EC × Japanコンテンツ。アジア圏で人気「エヴァンゲリオン」「ECONECO」の事例
新型コロナウイルスの影響でインバウンド需要がオンラインに移行、東南アジア、アメリカ、ヨーロッパからの需要が急増中し、「第3次越境ECブーム」が到来しています(前回の記事を参照)。今回は、越境ECで強い「Japanコンテンツ」を活用して流通を伸ばす方法についてお話しします。
日本のアニメで育った世界中の30代が熱烈なリピーターに
2020年は「鬼滅の刃」や「あつまれどうぶつの森」などがヒットし、コラボ商品も大人気でした。越境ECではこの傾向がさらに顕著です。BEENOSが運営する日本の通販サイト・オークションサイトの海外向け代理入札・代理購入サイト「Buyee」でも、アメリカ、ヨーロッパ、東アジア、東アジアの売上ランキング1位は「おもちゃ・ゲーム」が占めています。
日本のアニメ、ゲームは以前から「COOL JAPAN」として海外で人気ですが、熱烈なファンは関連グッズも多数購入します。「Buyee」のお客さまの中には300回以上お買い物をしているリピーターもいます。購入されているのは主にアニメ関連商品です。特に、アジア圏では「鉄腕アトム」や「ドラゴンボール」「遊戯王」などが再放送されており、それらを見て育ったお客さまが30代になり、リピート買いをしてくれているようです。
Japanコンテンツについての情報交換はSNSが中心で、YouTube、Facebook、Instagram、Twitterなどのコミュニティを通じて、新作アニメや関連グッズ、購入経路などをファン同士でおススメし合っています。
インバウンド消費はなくなったが越境ECは2.3倍に伸長(「EVANGELION STORE」の事例)
「Buyee」では「EVANGELION STORE」(エヴァンゲリオンストア)がTwitterを通して海外のファンを増やしています。「EVANGELION STORE」は、アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズのオフィシャルグッズストアです。
「エヴァンゲリオン」シリーズは2020年に25周年を迎えた、海外でも大人気のアニメです。日本のアパレルブランドや紳士服メーカー、DIYブランドなど多数の公式コラボレーションを行っていて、同ストアでの取扱商品数は常時5,000点を超えます。
BEENOSでは2019年5月から、「Buyee」を通して越境ECのサポートをしています。海外にエヴァンゲリオンファンが多いのはもちろんですが、正規販売店であること、日本のものづくりの技術への信頼感の高さから、「Buyee」内でも特に人気のECショップです。
新型コロナウイルスの影響でリアル店舗のインバウンド需要は大幅に減少してしまいましたが、越境ECが好調で「Buyee」での注文件数はコロナ前と比較して2.3倍に増加しました(2020年5月~2020年11月の前年同期比)。最新作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開が予定され盛り上がっていることに加え、Netflixで「新世紀エヴァンゲリオン」が全世界配信されており、ステイホームにより海外ファンの動画視聴が増えたことが消費の後押しにつながっているようです。
Twitterキャンペーンで多くの海外ファンを獲得
ファンとの交流を増やすため、2020年11月より海外向けTwitterとWeibo(微博)のアカウント運用を開始。「Buyee」にてアカウントの開設や翻訳、キャンペーン施策の展開などをサポートしています。ローンチの際に行ったプレゼントキャンペーンでは、リツイート数500件、いいね!数も1,000件を超え、フォロワーも1,185名増えました(2020年11月と12月の比較)。
🎁GIVEAWAY🎁
— EVANGELION STORE ONLINE (@eva_store) November 30, 2020
To celebrate the launch of English support on the Evangelion Store Twitter account, we are running an Asuka Figure giveaway for overseas users!
⬇️ENTER THE GIVEAWAY⬇️ https://t.co/keoTX5RFsH
⏳ Ends December 9
👑 5 Winners
Good Luck! #Giveaway #Asuka pic.twitter.com/tRPQDPisxs
Twitterを海外向けに本格的に運用するようになり、英語圏とのエンゲージメント率が通常1%ほどから7%まで上昇しました。さらに、「Buyee」内の「EVANGELION STORE」への流入経路として5%ほどだったTwitterの比率が10%以上に増加し、商品追加が多かった昨年12月は約20%まで伸長しました。海外人気の高い大型フィギュアの新作商品が販売開始されたことも重なり、2020年12月は前月比約6倍の売上となりました。
過去に「Buyee」で英語圏向けにTwitter運用をしている中で、アニメファンはTwitterで情報収集をしたり、ファン同士でコミュニケーションをしたりする傾向が見受けられました。単純な商品紹介だけではなく、ファンの方と交流するようなインタラクティブな投稿が好まれる傾向もありました。
今回のプレゼントキャンペーンは、「EVANGELION STORE」から販売終了しているレアなフィギュアをプレゼントとしてご提供いただいたこと、プレゼント応募条件の一つに「気になるエヴァグッズをツイートする」というファン参加型のコンテンツを入れたことで、エンゲージメントが非常に高まった結果になりました。
やらなきゃもったいない! 海外向けSNSアカウントの運営
実は、海外で人気の高いキャラクターのSNSアカウントでも、海外向けに対応していないケースはよくあります。例えば、Instagramのコメントの3分の1は英語や中国語などで、一定数の海外ユーザーがいるのがわかっているのに、アカウントが日本語のみで運用されている……。これは非常にもったいない話です。
海外向けにTwitterを運用すると、それを見た海外のファンが勝手に盛り上げてくれて、コミュニティ内で話題になり、エンゲージメントや流通につながりやすくなります。SNSでのキャンペーンも自社商品を使えば予算はかかりませんから、SNSアカウントを海外向けに運用することは、コストパフォーマンスの高い施策です。
海外向けにSNSで発信する際は、海外のファンが求めている情報と双方向のコミュニケーションを提供する、自社でなければ提供できない商品や情報を伝えることを意識すると良い反響が生まれるかもしれません。
人気は日本の伝統工芸とのコラボ商品
販売されているグッズの中には、日本の本格的な伝統工芸とのコラボ商品もあります。「EVANGELIONコラボ輪島漆塗」は輪島漆の高級箸で、明治年間に創業された塗師(ぬし)屋である加波次吉漆器店が手がけています。Japanコンテンツと日本の匠の技のコラボとして人気を集め、シリーズ化されています。
ビッグコンテンツでなくても流通拡大のチャンスが。アジアからラブコールが絶えない「ECONECO」
「エヴァンゲリオン」シリーズのような世界的なアニメでなくても流通拡大のチャンスはあります。越境ECではないのですが、知る人ぞ知るJapanコンテンツが流通を押し上げた事例を紹介します。台湾の店頭で人気を集めているのが「ECONECO(エコネコ)デザイン」です。ユニコーンをモチーフにしたパステルカラーの「ゆめかわいい」イラストで、日本だけでなく海外でも支持されています
「ECONECOデザイン」はLINE着せ替えのユーザーの半数が海外を占め、特に、台湾、インドネシア、タイで非常に人気です。アジア企業からも注目されていて、日本製の医薬品や化粧品などを扱う台湾のドラッグストア「日薬本舗」がECONECOを採用し「ECONECOデザイン」の美容商品を2017年末から日薬本舗で展開しています。好評を得て、その後もおしりふき、蚊よけパッチ、ティッシュ、箱ティッシュ、フェイスマスクなどを販売しています。ノベルティにも採用され、今までにバッグやポーチ、スマホケースなどが展開されています。
SNSもリアルイベントも「ローカライズ」が重要
「ECONECOデザイン」のライセンス管理を行うのが、BEENOSの子会社モノセンスで、2012年よりECONECOとライセンス契約を結んで企業タイアップやブランドのマネジメントを担っています。これまでに、台湾の新光三越や台湾そごうで「ECONECO」の展示会を開催し、現地のファンの方々が大勢足を運んでくれました。私自身もイベントの準備を行ったのですが、スマホケースを可愛く並べるのに苦労しました(笑)。
イベント開催の際には現地の代理店と連携してLINEでスタンプを配布し、ECONECOとの接点を増やしてファンのベースを作りました。さらに、Facebookページをフォローしてくれた来場者にオリジナルバルーンをプレゼントしたり、人気キャラクターのフォトスポットを用意し、Instagramと連動して来場につなげるキャンペーンも実施したりしました。ファンのベースを作ってイベントに参加してもらうという施策を繰り返すことによって、イベントを重ねるごとにファンが増え、売り上げにつながっていきました。
海外でのプロモーションではローカライズが重要です。ECONECOの例で言うと、LINEスタンプを現地の言語に翻訳、現地の流行語を取り入れるなど使ってもらいやすくする、リアルイベントでは台湾で古くから陶器の町として知られている「鶯歌(イングァ)」の陶器をつかったコースターを使った手作りワークショップを開催しました。
コンテンツやキャラクターを持っていない企業でもできるJapanコンテンツ活用とは?
ここまでお読みになって「有名なキャラクターや作品がない会社には縁のない話だな」とお思いになった方もいるかもしれませんが、キャラクターと商品を結びつけて海外でのヒットをねらうと言う取り組みは、まだキャラクターを持っていなくても可能です。
今回ご紹介した台湾で人気の「ECONECO」のように、日本ではまだビッグコンテンツでなくても特定のエリアで人気のキャラクターが存在します。特に、LINEのアクティブユーザー数が多い台湾、タイ、インドネシアに進出したい場合は、現地のLINEスタンプの人気ランキングを見てみてください。意外なキャラクターに商機が眠っているかもしれません。
「Japanコンテンツを活用して海外市場に進出する」と言うと難しく感じる方も多いと思います。しかし、今はコンテンツホルダーとメーカーを結び商品を生み出すサービスも複数ありますし、企画・開発だけでなく、商品をヒットさせるために必要な卸業を含む販売戦略や、各種メディアを活用したプロモーションの実施までワンストップで担ってくれるサービスもあります。目安として、商品開発の期間は通常の製造期間にプラス1.5か月、コンテンツにもよりますがタイアップ費用は商品価格の5%〜7% × 製造数が一般的です。
海外でのマーケティングのポイント
どんなに商品が素晴らしくても、知ってもらわなければ購入にはつながりません。作品やコンテンツ活用は自社の商品を知ってもらうための工夫であり、コンテンツが強い日本だからこそ取り入れてほしいマーケティング施策です。特に、越境ECでは日本以上に商品やコンテンツの知名度が流通を左右します。「日本のものづくりを活かした商品の魅力を知ってほしい、海外に届けたい」という企業にぜひチャレンジしていただきたいです。ポイントは下記の3つです。
- 海外のファンが求めている情報と双方向のコミュニケーションを提供する
- 自社でなければ提供できない商品や情報を伝える
- ローカライズのポイントを押さえでSNS発信を行う
コンテンツを活用して、まずは海外の消費者に自社商品を知ってもらうきっかけを作る、そこで得た海外ユーザーの反応を商品開発に活かす……。そんな、次につながるはじめの一歩をまずは踏み出してみませんか?
次回は「中小企業や地方企業も越境ECを活用すべき理由」についてお伝えします。