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コロナ禍でインバウンド需要が期待できない今、地方の企業や自治体からのお問合せが増えています。弊社が運営する越境ECサイト「Buyee」に出品する店舗も1.25倍に増加しました(2020年7~9月の前年比)。大手企業だけでなく、中小企業からもお申し込みいただき、最近だとでは老舗の酒造店や、国産のコットンブランドなどが新たに海外販売を開始しています。

全国の中小企業や地方自治体が越境ECにチャレンジ中

「越境ECに挑戦できるのは大手だけ」と考えている中小企業や地方企業のEC担当者の方は多いかもしれません。確かに、配送や決済など、すべてを自社で行おうとすれば難易度は高くなります。ですが、多様な越境ECのサポートサービスが存在する現在、越境ECへの挑戦は想像よりもずっとハードルの低いものになっています。

たとえば、山口県産の新鮮な魚介類を販売する企業、山形のフルーツや畜産品、ビールなどの名産品を取り扱う企業など、日本全国の中小企業が越境ECにチャレンジしています。

これまで「Buyee」へのお問い合わせは「海外からの問い合わせが増えてきたので越境ECに取り組みたい」という場合がほとんどでした。しかし、インバウンド需要が見込めない状況が続く中、「自社ECがあれば簡単に海外への販売窓口を広げられるなら、まずはテスト的に越境ECにチャレンジしたい」という企業が増加。さらに、地元企業の海外進出を支援していきたい地方自治体も増えています。今回はその事例を紹介します。

「安心で安価な日本製マスクの需要」を捉えヒット
─ナナンワールドの事例

イタリアブランドのベビー用品の輸入販売を手がけていた「ナナンワールド」さんは、イタリア本国から「マスクをする習慣のある日本製のものが欲しい」と言われたことがきっかけで、助産師と看護師が監修した高機能布マスク「KAWADA ナナンマスク」の販売にチャレンジしました。現在、公式オンラインショップ「KAWADA WORLD」を「Buyee」と連携することで、海外向け販売に挑戦しています。

「Buyee」内のナナンマスク販売ページ

「Buyee」内のナナンマスク販売ページ
https://shop.buyee.jp/kawada-nananworld

世界で流通しているマスクに日本製の商品は少なく、安価で安全な日本産マスクの高い需要を感じて、ナナンワールドさんはマスク販売開始から越境ECをスタートしました。

「KAWADA ナナンマスク」の一例。高機能でデザイン性に優れたマスクは幅広い層に人気
「KAWADA ナナンマスク」の一例。高機能でデザイン性に優れたマスクは幅広い層に人気

需要に応えて越境ECに挑戦したとはいえ、海外販売はまったく未知の世界。当然不安もあったそうです。しかし、実際には海外向けにサイトをゼロから立ち上げるのではなく、日本の自社ECサイトと「Buyee」を連携する形で販売を開始したことで、申し込みから1か月弱で連携が完了し、ランニングコストも高くなく、導入ハードルは当初の予想よりも低いものでした。

マスク自体の売り上げは、外出自粛の影響を受けたベビー用品の約3倍に上っています。越境ECでの売り上げはこれから積み上げていくところですが、越境ECを導入して海外の方に知ってもらえたことで、会社としての規模感や懐が大きくなった感触を得たそうです。今後さらに海外マーケットを獲得するべく、意欲的に取り組んでいます。

●ナナンワールドさんからのメッセージ

越境ECのハードルは、想像しているよりも低く、始めようと思えばすぐに始めることができます。ただし、展開する商品によっては需要の違いがあるので、市場リサーチをしっかりする必要があります。

弊社の場合は、もともと外国籍のスタッフがいたので、コミュニティでアプローチして「良いPR会社がないか?」「現地のマーケティングはどうなっているのか?」などをリサーチしました。各国で効果的なPR方法は異なりますが、越境ECや各国のマーケットに関する説明会はたくさんあるので、アメリカ、台湾、ヨーロッパなど、自社の商品の需要を探るために参加してみるといいと思います。

越境ECに挑戦して、日本のマーケットの小ささを実感しました。日本ではヒットしなくても世界ではヒットする場合があるので、世界の動向を注視することが重要だと思います。国内向けサイトであっても、海外のお客様からアクセスやお問い合わせがあるかどうかでポテンシャルを判断できます。

越境ECへの挑戦は中小企業にこそおすすめしたいです。日本製品がいかに海外から認められているかを知ることは、自国の盛り上げ、国内の工場の盛り上げ、スタッフの盛り上げにもつながります。コロナで大変なタイミングではありますが、日本という小さなマーケットだけでなく海外を見据えることで、新しく挑戦することが増え、社内に「チャレンジしていこう!」という前向きな風が吹いています

観光客が多かった台湾にターゲットを絞り越境ECに挑戦
─青森県の事例

続いて、地元産業の活性化やインバウンド需要の取り込みのため、越境ECに挑戦する地方自治体の事例を紹介します。コロナ禍によるインバウンドの減少が、地方自治体に与えた影響は非常に大きいものがあります。青森県が発表している月例観光統計によると、、2020年における圏内35か所の主要観光施設の入場者数は前年比55.5%、県内75か所の宿泊施設の宿泊者人数は、前年比65.7%に留まっています。

この数字は宿泊施設や観光施設に限った数字なので、実際の影響はもっと大きいはずで、観光売上の落ち込みは明白です。青森県庁はインバウンド施策を積極的に行っており、効果が出ていただけに「観光客が来ない」という現状は痛手でした。青森県は特に台湾人観光客からの人気が高く、外国人観光客の44.2%が台湾からの観光客でした。

グラフ 観光庁「訪日外国人消費動向調査 2019年年間値の推計 集計結果」
観光庁「訪日外国人消費動向調査 2019年年間値の推計 集計結果」
訪問地(都道府県47区分および地方運輸局等10区分)別 回答者属性の青森県の構成比を元にBEENOSが作成

インバウンドの落ち込みだけでなく、国外での商談会の開催が困難なことも、地方自治体の事業者にとっては大きな痛手です。そこで2020年12月、青森県庁さんは「Buyee」内に台湾向けの県産品特設ページを開設しました。この特集ページでは商品を紹介するだけではなく、青森県の魅力も発信しています。

「Buyee」内の青森県特集ページ
https://media.buyee.jp/pr/special_recommended_aomori/cht/

売り上げも好調で、りんごのお菓子やジュースや海産物の加工品、ガラス工芸品など、青森県を代表するような幅広い商品が売れています。中には数十個単位での購入もあり、青森県産品の台湾でのニーズの高さが伺えます。簡単に来日できない状況で「日本ロス」が起きている今だからこそ、チャネルを広げ、日本への関心を維持することが大事です。

●青森県庁さんからのメッセージ

新型コロナ感染症の影響で、これまでのようなプロモーションが難しくなる中、Buyeeさんと連携し、BtoC向けに越境ECで県産品のテストマーケティングに取り組みました。これまでの量販店での販売やプロモーションとは異なり、購買データから購入者のペルソナが見えてきたり、クリックはされているのに購入されない商品があったりなど、課題が見えてきました

日本の人口が減少し、マーケットが小さくなっていく中で、青森県が今後どうやって海外に県産品を発信し、輸出に挑戦していくのか、今回のケースを活かしていきたいと思っています。

越境ECだからできること、わかること

青森県の越境ECは台湾向けにスタートしましたが、アメリカ、香港、イギリス、シンガポール、バーレーンなど、結果として広い地域で商品が購入されています。中でもアメリカと香港のお客様が多く、購買層も20代〜60代と幅広いものの、20代〜30代がボリュームゾーンとなっており、若年層からの越境ECのニーズを感じられる結果となっています。

訪日観光客によるインバウンド消費は、個人が実店舗で購入するので、「訪日観光客に何が売れているのか」など、詳細なデータを収集したり活用したりすることが困難です。しかし越境ECの場合、どこの国のどういった方が、何を購入したかをデータとして蓄積できるので、それを次の施策へ活用できます。

また、輸出においても従来はバイヤーが購入していたため、その先の具体的な購買層を知ることが困難でした。越境ECの場合は個人が購入するため、その点の把握も可能です。「台湾以外のお客様からも購入をいただいている」という実態も、越境ECだからこそ把握できたと言えます。このようにデータを蓄積、活用できる点は、越境ECの大きな強みと言えるでしょう。

青森県庁さんは今後の課題として、「クリックしても購入されていない商品をどうするか?」といったことをあげていらっしゃいますが、実店舗に置き換えると「手に取られているけど棚に戻されている商品」に気付くことはなかなか難しいのではないでしょうか。こうした課題を見付けられることも、越境ECならではのメリットだと言えます。

「EC=グローバル」をスタンダードに

ナナンワールドさんは、マスクを販売開始した当初から海外向けに販売することをめざしていました。青森県庁さんのコメントにもあるように、日本の人口が減少していく中で、海外に向けた発信力を持つこと、海外の購買層の開拓はますます「普通」のことになっていくはずです。

BEENOSグループでは国内外のECをワンストップで支援するグローバルECプラットフォームを構築することをめざしています。来たるネクストスタンダードに向けて、事業規模の大小に関わらず、法務や配送、決済といった煩雑なことにわずらわされることなく「自社の商品を磨いて魅力をどう伝えていくのか?」という本質的なことに集中できる世界を作りたいと考えています。

中小企業も地方自治体も独自の魅力的な商品を発信できます。越境ECに向いているロングテールの商品(定番の売れ筋商材に対して、販売数が少ないニッチな商材のこと)を持っているケースも多いと思います。日本の小さなマーケットでは需要がなくても、海外の広いマーケットに需要が見つかるかもしれません

越境ECへの挑戦はさほどハードルが高くありません。SNSを活用して地元の、あるいは自社商品の魅力を海外に発信すると同時に、まずは自社のサイトを海外対応にすることから始めてみてはいかがでしょうか?

◇◇◇

次回は「コロナ禍で変革を求められるエンタメ業界」についてお伝します。

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直井 聖太

BEENOS株式会社 代表取締役社長 兼 グループCEO

1980年生まれ、愛知県出身。コンサルティング企業に入社後、2008年にBEENOSへ入社。輸出Eコマース関連の新規事業を担当し、tenso株式会社(当時、株式会社転送コム)の立ち上げに参画。2012年、tenso株式会社の代表取締役社長に就任(現任)し、「From Japan」のクロスボーダービジネスを牽引する。

2014年、BEENOS株式会社 代表取締役社長兼グループCEOに就任。2016年には東証一部に市場変更。クロスボーダー事業を軸とした新グループ成長戦略を推進し、グループ事業や投資先とのシナジー効果を発揮、モノ・人・情報を日本と海外、双方向に繋ぐグローバルプラットフォームを展開する。

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