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北の達人コーポレーションが、品質誤認表示や不正競争防止などを巡って、はぐくみプラスを相手取った訴訟。不正競争防止法について理解してほしいという思いから、北の達人コーポレーションの木下勝寿社長へ行ったインタビューの後半では、模倣行為との戦い方、裁判を行う際に気をつけること、EC事業者へのメッセージなどをお伝えする(前半はこちら)。

ECには「争える法律」がたくさんある

──競合品、模倣品で泣き寝入りしている企業は多いです。この手の裁判は一般企業でも勝つことができるのでしょうか?

木下: 本当に相手が悪ければ、かなりの確率で勝てると思います。競合品、模倣品を争う裁判は、通常「知的財産法」(知財法)で争われます。さらにその知財法は、特許法、実用新案法、意匠法、著作権法、不正競争防止法などで構成されているので、このどれかで裁判に持ち込めば勝てると思います。

知的財産法
発明
考察
意匠
商標
著作物
営業秘密
特許法
実用新案法
意匠法
商標法
著作権法
不正競争防止法
知的財産および知的財産法の種類
「知的財産法入門」(特許庁)を元に編集部で作成

──でも、特許権とか著作権は小さな会社だと持っていないケースの方が多いです。

木下: 権利を持っていないからといって諦める必要はありません。典型的な不正な行為に対しては「不正競争防止法」が有効です。もし、相手に特許権や著作権で逃げられても、最後は不正競争防止法で訴えれば、かなりの高い確率で裁判には勝てると思います。

先述した「はぐくみオリゴ」はオリゴ糖が純度100%と言いながらも、当社で分析した結果、純度は50%程度しかなかった事例などは、品質誤認表示として不正競争防止法に抵触することが裁判でも認められました。

──つまり、競合の会社がありもしないことを「ある」と言って、自社の商品の売り上げに影響を与えた時点で、もうそれは不正競争と見なされてしまうんですね。

木下: 直接の影響がなくても不正競争防止法で訴えることは可能です。今回とは別の件になるのですが、はぐくみプラスは「はぐくみオリゴ」を販売する際、ネット広告で「コロナ禍のウイルスにいい」という類のアピールをして販売していたんですね。

──絶対にやってはいけない領域にまで踏み込みましたね(笑)。

木下: その件で当社は品質誤認表示ということで、直接的な影響はありませんが、はぐくみプラスに対して別途品質誤認表示の差止めを求める仮処分命令の申立てを起こしました。

参考

──そんなデタラメな表記を野放しにしていたら、市場そのものが信頼を失いますからね。

木下: 他にも薬機法、景表法等の規制に反した広告であれば、不正競争防止法上の品質誤認表示と同視させることが可能になります。相手が明らかに不正な行為をしていることが証明できるのであれば、一般企業でも競合品、模倣品の裁判は勝てると思います。

弁護士に全力で戦ってもらうために

──仮にネットショップを運営している会社が模倣品を見つけた場合、どのように対応すればいいのでしょうか?

木下: まずは弁護士と相談して、知財法の特許法、実用新案法、意匠法、著作権法、不正競争防止法のどれで戦うかを決める必要があります。

──弁護士はどのように選定すればいいのでしょうか。

木下: 企業法務や知財に詳しい弁護士に依頼することをお勧めします。当社は日本でもトップクラスの知財弁護士に依頼しました。「下町ロケット」のモデルとなった法律事務所です。

──強い弁護士についてもらえれば、ひと安心ですね。

木下: だけど丸投げするだけではダメです。弁護士は戦略を立てるのと裁判で戦うのが仕事ですが、その弁護士が戦えるだけの資料はこちらが用意しなくてはいけません。つまり、弁護士が戦えるだけの“武器”を、依頼した企業側が渡さなければ、どんなに優秀な弁護士でも実力を発揮できないからです。

──弁護士も法律や裁判の戦い方には精通していても、業界の事情やビジネスモデルの詳細まで完全に精通しているわけではありませんからね。

木下: 一緒になって作戦を立てて、弁護士の戦い方を理解した上で「こんなデータがあります」「そのデータならこういう戦い方があります」と、意見を出し合って戦略を密に練っていく必要があります。弁護士に頼んだから一安心するのではなく、そこからが本番だと思って、裁判にしっかり向き合っていかなければいけません。

弁護士にデータを託して戦ってもらう

もしも訴えられる側になったら

──うっかり模倣してしまって、それを相手の企業から指摘された場合はどのように対応すればいいのでしょうか。

木下: 本当に模倣や不正行為をしたのであれば、すぐに謝るべきです。今回の件からもおわかりの通り、訴えてきた相手から逃げ切ることは絶対にできません。裁判を起こされて負けでもしたら、それこそ大変なことになります。

──倒産してしまう可能性もあるということでしょうか。

木下: 知的財産に関する裁判の手順は一旦勝ち負けを決めて、その後に損害賠償額を決める二段階方式で行われます。つまり、損害賠償額を決定する段階になると、負けた側は「利益全額」を起点にして、「競合していない部分」を自ら証明し、賠償額を減額していかなければいけないんです。

──それって大変なことではないですか? 負けた側が競合していない部分を証明しようと思っても、すでに裁判では負けているわけですから防戦一方になりますよ。

木下: だから裁判に持ち込まれないほうが良いんです。不正競争防止法は本当に不正をしていれば負ける可能性の方が高いですから。弁護士が「負ける確率は10%しかありません」といっても、「じゃあ、裁判に臨もう」とは思わないことです。会社が潰れる確率が10%もあるんだったら、経営者として裁判は回避するべきです。

なぜ模倣や不正はなくならないのか

──なぜ、模倣や嘘の表記はEコマースの業界からなくならないんでしょうか。

木下: 私がEコマースを始めた20年ぐらい前は、市場も小さくて、どの経営者もお客さまのことだけを見て商売をしていました。しかし、市場が大きくなるにつれて、「あの商品は儲かる」「あの売り方が儲かる」と、競合ばかりを見る人が増えて、いつの間にか見ている方向がお客さまではなくライバルの会社ばかりになってしまいました

同業者ばかりをみて商売をしていると、出し抜こうとする人が必ず出てきて、模倣したり、嘘をついたりするネットショップは増えていく流れにはなってしまうんだと思います。

競合ばかりを見て顧客を無視するイメージ

──視野が狭くなると、競合を潰しに行くことしか考えられなくなりますからね。

木下: 新商品で10億円の売り上げを作ったとしても、それが競合から奪った10億円だったら、日本のGDPは変わりません。当社はお客さまをしっかり見て、新しい価値を生み出した上で新しい10億円の市場を作りたいと思っているんです。そういう商売のほうが、日本が元気になるし、面白いじゃないですか。

──そっちのほうが意義のあるビジネスになりますよね。

木下: Eコマース業界はまだまだ伸びる業界です。狭いシェアをお互いで取りあっているような小さなマーケットではありません。私たちネットショップ運営者一人一人がビジネスの正しいモラルをしっかり持ち、お客さまを長期的に守っていかなければいけない時代なんだと思いますよ。

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竹内 謙礼

有限会社いろは 代表取締役

竹内 謙礼(たけうち・けんれい)

1970年生まれ。大学卒業後、出版社に勤めた後に観光牧場に転職。企画広報担当を経て2004年に経営コンサルタントとして独立。楽天市場、ビッダーズ等で多くのネットビジネスの受賞履歴あり。また、千葉文学賞等の小説、エッセイでも数々の受賞暦を持つ。

大企業、中小企業のコンサルティングはもちろん、サイドビジネスや起業に対しての販促、営業、人材教育のアドバイスを行い、特に実店舗のキャッチコピー制作とネットビジネスへのコンサルティングには定評がある。また、低価格の会員制コンサルティング「タケウチ商売繁盛研究会」の主宰として、180社近いコンサルティング指導を日々行っている。

販促、企画、会計、投資の書籍執筆の他、新聞や雑誌等でも連載を持っており、ラジオのパーソナリティとしても活躍。商工会議所や企業での講演、企業での人材教育等、経営コンサルタントとして精力的に活動している。NPO法人ドロップシッピング・コモンズ理事長。著書多数(詳しくはこちら

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