海外では2021年、多額のVC(ベンチャーキャピタル)投資資金が動き、数多くのユニコーン企業が生まれました。この記事では、EC担当者の方々が興味・関心を持つEC分野にフォーカス。シリコンバレーでデジタル分野の事業開発調査を行うトランスコスモスの担当者が、米国現地で捉えたVC投資のトレンド、2021年に注目を集めた具体的なEC関連の新興ユニコーン企業を紹介します。

コロナの影響を追い風に生まれるユニコーン企業

2020年から2021年にかけて、新型コロナウィルス感染症が世界的に猛威を振るい、飲食や旅行・レジャー業界中心に、大きな打撃を受けた会社が増えた一方、コロナの影響を追い風にしている企業もあります

海外では、巨額の資金を得て、ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)として躍進する新興企業が数多く生まれているのです。

米調査会社CB Insights社の発表によると、2021年第2四半期のグローバル全体でのVC資金調達額は1562億ドル(約17兆円)で前年同期比157%増で、過去10年間で最高額を記録。

2021年第2四半期のグローバル全体でのVC資金調達額
2021年第2四半期のグローバル全体でのVC資金調達額(CB Insights社の公表資料からキャプチャ

新興ユニコーン企業の数も同四半期だけで136社と、2020年全体の128件を上回る規模まで増加しています。そのうち、半数以上の76社がアメリカから生まれているのです。

新興ユニコーン企業の数
新興ユニコーン企業の数(CB Insights社の公表資料からキャプチャ

ユニコーン企業の業種はさまざまですが、ECの他、フィンテックやデジタルヘルス、サイバーセキュリティ、AIなどの分野の企業が多いのが特徴です。

新興ユニコーン企業がコロナ禍に資金を大きく集めることができているのは、これからの成長期待の表れであり、事業成長のヒントとして学びも多くありそうです

2021年にユニコーン企業の仲間入りをした海外スタートアップ企業のなかから、ECに関連する企業を5社をピックアップしました。

  • Back Market:フランス発のスマホ/タブレット再生品マーケットプレイス
  • Weee!:アメリカのアジア系/ヒスパニック系食材宅配サービス
  • Meesho:インドのソーシャルコマース
  • Misfits Market:アメリカの規格外農作物のEC
  • Cameo:アメリカの著名人ビデオメッセージマーケットプレイス

Back Market:フランス発のスマホ/タブレット再生品マーケットプレイス

ランス発のスマホ/タブレット再生品マーケットプレイス「Back Market」
フランス発のスマホ/タブレット再生品マーケットプレイス「Back Market

フランスのスマートフォン・タブレット・パソコンなどのリファービッシュ再生品(メーカー再生品)マーケットプレイスを運営する会社です。2014年設立、本社はフランス・パリ。

「サステナビリティ(持続可能性)」を事業の核に据えており、昨今の世界的なSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)を追い風に、2021年5月の資金調達で、32億ドルの企業評価額で3億3500万ドルを集めています

リファービッシュ再生品は、商品の品質が事業の要となります。品質を確保するためにBack Market独自の厳しい品質ガイドラインを設置。登録販売者にはガイドラインを満たすことを求めるほか、最初の40日間は1日に5点以上の販売不可、Back Marketスタッフによる無作為の商品購入による確認、1年間の動作保証と14日間の全額返金保証など、購入者が安心して購入できるショッピング環境を構築しているのが特徴です。

2021年から日本でも事業をスタート。現在、アメリカ、ヨーロッパを中心に13か国(アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、スペイン、ベルギー、オーストリア、オランダ、ポルトガル、フィンランド、アイルランド、日本)で事業を展開しています。

Weee!:アメリカのアジア系/ヒスパニック系食材宅配サービス

アメリカのアジア系/ヒスパニック系食材宅配サービス「Weee!」
アメリカのアジア系/ヒスパニック系食材宅配サービス「Weee!

アメリカのアジア系/ヒスパニック系のオンライン食材宅配サービスを提供する会社です。2015年の設立、本社はアメリカ・カリフォルニア州フリーモント。

アメリカでは、大手スーパーマーケットチェーンによるオンライン宅配サービスは進んでいますが、これらのスーパーマーケットで販売されるアジア系・ヒスパニック系の食材は極めて限定的で、品数も少ない状況です。

移民の国ということもあり日系・中国系・韓国系・インド系・ヒスパニック系など、各地域の専門店が数多く存在し、現地のアジア系・ヒスパニック系の方々は、それぞれの国の食材は専門店で購入することが一般的です。

しかし、専門店は1つひとつが小規模で、オンライン宅配などのサービスはまだ充実していません。その需要をうまくくみ取ったのがWeee!です

2019年時点、アジア系アメリカ人は約2300万人ヒスパニック系アメリカ人は約6050万人。その数は白人の人口増加以上で増えることが予想されています。

ニッチなマーケットながら、市場成長の期待が大きく、2021年3月の資金調達で28億ドルの企業評価額で3億1500万ドルを集めています

Meesho:インドのソーシャルコマース

インドのソーシャルコマース「Meesho」
インドのソーシャルコマース「Meesho

Meeshoはインドのソーシャルコマースプラットフォームを提供する会社で、Facebookも出資。有望なスタートアップを数多く輩出してきたシードアクセラレーターY Combinatorの 2016年アクセラレータープログラム出身です。2015年設立、本社はインド・バンガロール。

インドは、経済発展中で、依然として個人商店が数多く存在し、経済を下支えしています。ただ、個々は資金力が乏しく、Amazonのようなマーケットプレイスへ出店するにはハードルがあります。

Meeshoは、出店費用がかからないWhatsAppやFacebook、Instagramといったソーシャルメディアプラットフォーム上で商品を販売できるオンラインマーケットプレイスを提供しています

特徴的なのは、個人商店などの「セラー」が販売する商品に、インフルエンサーなどの「リセラー」が独自のマージンを乗せて、ソーシャルメディアで販売できるオンライン“リセール”マーケットプレイスを提供している点です。

Meeshoへの出店は基本無料。売買成立した商品の配送に基づいて、10-20%の手数料を受け取るビジネスモデルです。女性をメインターゲットにしており、商品は、民族衣装のサリーなどのアパレル・ファッションや化粧品、ジュエリーなどが販売されています。

2021年4月の資金調達でソフトバンクグループなどから、21億ドルの企業評価額で3億ドルを集めています。

Misfits Market:アメリカの規格外農作物のEC

アメリカの規格外農作物のEC「Misfits Market」
アメリカの規格外農作物のEC「Misfits Market

アメリカの規格外のオーガニックな農作物をオンライン販売する会社です。2018年設立、本社はアメリカ・ニュージャージー州ペンサウケン。

スーパーなど小売店に卸せない、型崩れや規格外の新鮮なオーガニックの農作物を、市場より40%程度価格を抑えてオンラインで販売する、というサービスを提供しています。野菜など生鮮食品だけでなく、食品会社の余剰在庫品やラベル貼付ミス商品なども取り扱っています。

2021年4月時点の利用者は40万人で、2020年は前年比5倍の成長を記録し、年商は1億ドルを超えるようです。現在のサービス提供エリアはアメリカの東海岸を中心にしており、他の地域にも順次拡大予定としています。

食品廃棄物を軽減することを事業の核に据えており、サステナビリティの観点でも評価され、2021年4月の資金調達で、11億ドルの企業評価額で2億ドルを集めています

Cameo:アメリカの著名人ビデオメッセージマーケットプレイス

アメリカの著名人ビデオメッセージマーケットプレイス「Cameo」
アメリカの著名人ビデオメッセージマーケットプレイス「Cameo

著名人とファンを結ぶビデオメッセージのマーケットプレイスを提供する会社です。2017年に設立、本社はアメリカ・イリノイ州シカゴ。

俳優やタレント、アスリート、ミュージシャン、クリエーターなど各分野の著名人に、サプライズの動画など、パーソナルなビデオメッセージを依頼できるマーケットプレイスを提供。料金は、1ドルから1500ドルの間で著名人が自由に設定でき(概ね1本50ドル~300ドル)、Cameoが25%手数料として受け取り、残りの75%が有名人に支払われる仕組みです。

具体的には、利用者が依頼する際、支払いとともに250文字で依頼内容を送信。著名人は、依頼が入ったら、依頼主の台本を読み上げたものを録画し、動画をアップロード。利用者はその動画をダウンロードして閲覧できる、というものです。

新型コロナウィルスの影響により、アスリートやミュージシャンなど著名人もファンとの接触機会が激減しました。この追い風もあってCameoの需要も高まり、2021年3月の資金調達で、10億ドルの企業評価額で1億ドルを集めています

まとめ

新型コロナウィルスの巣ごもり消費の影響で、世界的にECの需要は急増しました。AmazonやWalmartはこのコロナ禍に過去最高売上を更新しましたが、追い風に乗ったのはこれら大手事業者だけでなく、新興のECスタートアップも、大型資金調達でユニコーン企業の仲間入りをして躍進してきました。

今回取り上げたEC関連のユニコーン企業を見ると、Back Marketのスマホ再生品やWeee!のアジア・ヒスパニック食材、Mistfits Marketの規格外農作物など、商材を絞り、ニッチだが確実に市場がある分野に専門特化するビジネスモデルが投資家の評価を得ていました

インドのMeeshoも、現地にはAmazonやFlipkartなど大手事業者が存在するなか、現地商習慣に合わせたソーシャルコマースを展開しており、その独自性が評価を得ているようです

また併せて、以前のトランプ政権時代には際立っていませんでしたが、スマホ再生品のBack Marketや規格外農作物のMistfits Marketを見ると、サスティナビリティ(持続可能性)の観点も、海外投資家の間では評価が高まっているようです

筆者が、今回取り上げたEC関連のユニコーン企業から得た、評価されるポイントのファインディングスは以下の3つです。

  • ニッチだが確実に市場がある分野への専門特化
  • 現地商習慣に合わせた独自性
  • サスティナビリティ(持続可能性)

本記事が、読んで頂いた方の事業成長のヒントを生み出すきっかけとなれば幸いです。

  • 本記事は、2021年8月20日までの情報をもとに作成しています。
  • 本記事は、執筆者が一般に信頼できると思われる情報に基づいて作成していますが、情報の正確性や完全性を保証するものではありません。
  • また情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。
  • 本記事の情報を利用することで、読者に何らかの損害が発生したとしても、執筆者及びトランスコスモスは一切責任を負わないものとします。

この記事は「トランスコスモス 調査部公式ブログ」に掲載された記事をネットショップ担当者フォーラム用に再編集したものです。

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