単品系通販サイトでやるべき広告施策② 売上最大化を目指すための目標設定と動画の活用法
単品系通販サイトにおいて、売り上げを最大化するための目標の考え方と、SNS以外のメディアや動画を広告に活用する方法について解説します。
前編(前回)
ポイント① ターゲットがわかりやすいSNSにフォーカス
・なぜ、単品系ECのプロモーションにSNSが合っているのか
・SNSはクリエイティブが重要
ポイント② オーガニックと広告の使い分け方法
後編(今回)
ポイント③ 目標の考え方
ポイント④ SNS以外の広告
ポイント⑤ 動画の活用
ポイント③ 目標の考え方
この連載の「大規模ECサイトでやるべき広告施策② 「動的検索広告」の活用と指標の考え方」では、「大規模ECサイトの目標設定は売上を軸にしたROAS重視が適している」とお伝えしました。それは、大規模ECの場合は商品の価格帯にばらつきがあるため、個数を重視したCPA(Cost par Action/Cost par Acquisition、顧客獲得単価)を目標とすると売上最大化にはならない可能性があるからです。
平均商品単価 | 広告費用 | コンバージョン数 | 売上高 | ROAS | CPA |
---|---|---|---|---|---|
4000円 | 10万円 | 100 | 40万円 | 400% | 1000円 |
8000円 | 10万円 | 60 | 48万円 | 480% | 1667円 |
商品の価格帯にもよりますが、単品系通販の場合、サブスクリプションサービスだったり、初回限定のセット商品のように同一価格で数多く売ることが売上アップにつながったりするのであれば、CPAを軸に考えて良いでしょう。CPAは「コンバージョン単価」とも呼ばれており、1コンバージョン(獲得)にかかった費用を指す言葉です。計算式で見ると、
CPA = 広告費用 ÷ コンバージョン数
となります。
たとえば、広告予算をどれくらいに設定するべきか迷った時、1件の獲得単価を1000円に設定し、1か月に100個の販売目標にした場合、「必要な広告費用は10万円」という考え方ができます。
1000円 = 10万円 ÷ 100個
CPAの算出方法はもう1つあります。
CPA = CPC(広告費用÷クリック数)÷ CVR(コンバージョン数÷クリック数)
CPCとCVRを導き出す数式も載せましたが、これを見ていただくとわかるように、CPC(クリック単価)は「広告費用÷クリック数」、CVRは「コンバージョン数÷クリック数」、どちらも「÷クリック数」を消すと、前述した数式になります。
こちらの数式を用いる時は、CPCやCVRをどのくらい改善すると目標CPAになるかを検討したい時と言えます。
1000円 = 40円 ÷ 4%
上記はCPC40円でCVRが4%であれば、目標CPA1000円を達成できることを示しています。昨今、広告配信する際は自動入札を使うケースが多いので、CPCは細かく設定しないと思いますが、その分、CVRを上げて目標CPAに近付けるなど、広告掲載の実績をもとに、目標CPAを算出する際に基本となる考え方になります。
もちろん、単品系ECサイトであっても商品の価格帯や売上目標によって広告の目標値はさまざまでしょう。シンプルにROAS(広告費用対効果)を基準に目標を設定しても、売上計画をもとにCPAを算出しても良いでしょう。
大事なことは、感覚ではなく実績をもとに目標値は設定し、クリアするべきプランを立てていくことだと考えます。
ポイント④ SNS以外の広告の活用
前回、単品系ECはSNSと親和性が高いとお伝えしましたが、もちろん、検索連動型広告などの広告も活用するべきだと考えます。SNSは商品の告知に適している上に広告のセグメンテーションが比較的精緻にできるので、ターゲット層に商品を見たり知ったりするには良いメディアだという位置付けです。ただし、そのままコンバージョンまで獲得できるとは限りません。
人は見て知って、興味を持ったら、その後、商品を調べたり比較したりするといった行動をします。また、何らかの理由ですぐには買わず時間を置くケースもあるでしょう。その時に、検索連動型広告や通常のディスプレイ広告、あるいはYouTubeなどの動画配信面でもしっかりと告知して、サイトへ誘導する窓口を作っておく必要があるのです。
重要な広告プロダクトをあげるのであれば、はやり検索連動型広告でしょう。これまでもお伝えしましたが、アイテムキーワードよりブランド名や商品名での機会損失を起こさないように配信することが大切で、SNSやディスプレイ広告では、ブランド名、商品名をしっかりアピールし、その名前で検索したときにSERPs(Search Engine Result Pages=検索結果画面)で、しっかりと自社商品が占有することを考えましょう。
「商品名の場合はオーガニックで1位になるので広告を掲載する必要はない」という意見もありますが、現在のSERPsは、オーガニック1位の上部にさまざまな情報が挟み込まれます。たとえば、ショッピング広告枠や通常の広告枠、物によってはレシピ、動画などが入ります。そして、オーガニックより前に競合の広告が出ないとは限らない仕組みになっています。
すでに確固たるブランド力や商品名が浸透している場合、その名前を検索する時の目的もハッキリしているので、広告を出さないという選択もあるでしょう。しかし、まだそこに至っていない場合、オーガニックだけに頼るよりも広告を併用し、自社サイトへの導線をしっかり確保しておくことをお薦めします。
その際、広告のタイトルと説明文はできるだけオーガニックのものと異なる訴求にするなど、占有する意義を高めると良いでしょう。オーガニックのタイトルやディスクリプションを変更するのはハードルが高い場合が多いと思いますが、広告の場合、比較的簡単に変更もできるし、複数設定してCTR(クリック率)で良し悪しを判断することもできます。
広告でテストしてそれをオーガニックに活かし、サイト改善の一翼にすることも可能ですので、検索連動型広告を活用しながら、自社サイトの改善も図ることをお薦めします。
ポイント⑤ 動画の活用
もう1つ、今、広告でしっかりと成果につなげられるものをあげるとしたら、それはやはり動画の活用だと言えます。2020年9月時点での数字ですが、月間6500万人が利用しているYouTubeは、最も人が存在するサイトなのではないでしょうか。
コロナ禍でYouTubeの利用者はさらに増え、SNSと比べても高齢層まで網羅できるのが特徴でしょう。
若年層向けの商材ではなくても、しっかりと動画を作成する用意だけはするべきだと考えます。
動画の良さは、視覚と聴覚で情報を提示することができることと、商品イメージだけではなく、たとえば、使い方などのレクチャー、使用前・使用後をフェイクなく伝えられることではないでしょうか。
何かを購入したいと思った時、それが自分にとってどんなメリットがあるのか、ファッション系であればどんな着心地なのか、どんなコーディネートができるのかなどが提示されていると、より自分事として検討できます。日用品であれば、どれほど効果があるのか、どんな使い方ができるのかなどが提示されていると、購買意欲を刺激することにつながります。
家電などはすでにYouTuberが独自に動画を流しているものもありますが、自社のブランドや商品を伝える動画は、自分たちの思想や熱意と共に制作し、ターゲット層にしっかり届ける必要があります。アプローチする場所を増やす意味を含めて、自社のチャンネルを作成し、動画をアップしていくことを検討しましょう。
現在、Google広告で動画を配信する場合、チャンネルを持っていることが必須で、そのチャンネルにアップされている動画を広告として配信する仕組みになっています。
よく行われる手法は、一般公開している動画とは別に15秒程度の広告用の動画を作成し、それを一般では見られないよう限定公開などのステータスでアップし、広告とリンクさせる手法です。
広告用動画の作成準備ですが、まず必ずやった方が良いことは絵コンテを作成すること。たった15秒程度の中で商品の特徴やユーザーメリットを伝えなければならないので、冒頭のカット→つかみのカット→メリットや特徴(2、3カット)→締めのカットくらいは決めておくべきなのです。
秒数 | 内容 |
---|---|
0秒〜5秒 | オープニング(ブランドロゴ、サウンドロゴなど) |
つかみ(問いかけ、問題提起など) | |
5秒〜15秒 | 訴求①(商品特性など) |
訴求②(ユーザーメリットなど) | |
訴求③(購入方法など) | |
15秒 | エンディング(ブランドロゴ、サウンドロゴなど) |
もちろん、キッチリ15秒である必要はないのですが、だいたい15秒くらいだと、見てもらえて印象にも残ると言われています。
動画広告のほとんどが5秒でスキップ可能になります。ということは、冒頭から5秒をつかみと定義して、5秒間でブランド名、商品名をしっかり覚えてもらう工夫も必要です。メリットや商品の特徴の部分は商材によって見せ方も異なると思いますが、複数の訴求で動画を作成できるような構成にするのも、1つの手です。
同時に、ブランドや商品のイメージや名称をしっかりユーザーに届けるためには、複数の動画を配信できるようなフローを作るのが適しています。ターゲットに刺さるような動画および動画広告を、検証しながら複数作成・配信することで、ユーザーのニーズも知ることができ、サービスにも反映できるかもしれません。
一方、作り込んだ動画を1本配信するスタンスで動画広告を作成してしまうと、検証して評価が低かった場合に新たな動画を作成しづらく、動画活用自体が暗礁に乗り上げることになりかねません。ブランドや商品のイメージを損なわないためには、雑な動画はNGですが、どのような動画が自社のターゲットに刺さるかを検証しながら、どんどん作れるような環境を整えることは必要です。
動画メディアも増えている現在、YouTubeにとどまらず、他のメディアでもテレビCMのような配信も可能になってきています。テキストや画像のみだった従来の広告よりも情報量が多く、聴覚にも訴えることができる動画広告は、今後EC広告の要になるのではないかと考えています。今からその準備を整え、試行錯誤を開始することをお薦めします。
次回は、SEOのお話に戻ります。