BtoBサイトの性質を踏まえた最新の施策、「リードの獲得につながらない」などコンテンツマーケティングの壁とその対策、「SEO×コミュニケーション設計」について専門家と語り合います。

御社の記事コンテンツ、成果を出していますか?

製品とターゲットユーザーが限られるBtoBはSEO施策が難しい業種です。そこまで明確なキーワードがなかったり、商材が専門的すぎて検索が発生しないことも多いのです。

そこで、昨今流行っているのが記事コンテンツ。記事で周辺ニーズを獲得するという手法が流行り、SEOを意識したコラムコーナーなどを運営しているBtoBサイトをよく見かけます。

そして、最近よくある問い合わせが「記事で流入は取れるけど、リードが獲得できないんです……」というお悩み

それはその通りで、記事で情報収集したユーザーはすぐに離脱します。仮に、そのサイトの製品に興味があったとしても、一律「お問い合わせ」に誘導している記事から問い合わせをするでしょうか?

そのような背景を踏まえて、アユダンテでは「SEO×コミュニケーション設計」という新たな施策を打ち出しています。「コミュニケーション設計」とは、SEOで獲得したトラフィックを成約までどうつなげていくか、どう潜在顧客とコミュニケーションを取り続けるか、SEOの先の施策になります。

今回は、「コミュニケーション設計」を得意とし、アユダンテとさまざまな取り組みを一緒に行っているA-canの白砂ゆき子氏をお招きしました。白砂氏はFaber Companyで長年コンテンツマーケティングに携わってきたエキスパート。さまざまなセミナーにも登壇しているのでご存知の方も多いかもしれません。

白砂さんと15年くらいのお付き合いがあり、ここ数年、コンテンツマーケティングやSEOの情報交換をするなかで、BtoBに最適な施策、そしてコンテンツのその先の施策として「コミュニケーション設計」という取り組みを教えてもらいました。アユダンテの製品で施策してみて効果を感じたので、協業する形で顧客にも提供しています。

白砂ゆき子氏(写真右)
株式会社A-can 代表取締役 /株式会社FaberCompany シニアコンサルタント。映像コンテンツプロバイダー・化粧品メーカーECでのWebディレクション・マーケティング担当を経て、コンサルタントに。20社以上のオウンドメディア・コンテンツの企画・戦略設計を行った経験を持つコンテンツマーケティング専門家。2018年5月に独立。検索ユーザーに寄り添うコンテンツ設計を得意とする。 「Web担当者Forum ミーティング 2019 春」「MarkeZine Day 2019 Autumn」で講演。 寄稿はWeb担当者Forum、SATORIマーケティングブログなど多数

コミュニケーション設計の3つのステップ

江沢氏 コンテンツマーケをやっていますが、感じた課題や限界などありますか?

白砂氏 多くのオウンドメディア立ち上げ、グロースに関わってきましたが、コンテンツを充実させて検索流入やPVを増やしたところで、「思ったよりコンバージョンが起こらない」という課題に幾度も直面してきました。

なかには100万PV以上のメディアに育てたのに「成果が出ないから」と経営サイドから閉鎖を言い渡された案件もありました。検索流入のことだけ考えて運営を開始しコンテンツを投下していたら、いずれこのような壁にぶつかるのです。最初からコンバージョンを意識した設計を行う必要があると強く感じました。

全体で100本あることは把握しているが、各コンテンツの役割は不明確。整理してみると……

江沢氏 コミュニケーション設計はどんなことをどんな流れでやっていくのか、改めておさらいさせてください。

白砂氏 おおよそ、図のような流れで進めます。

① 現状把握(コンテンツリスト作成) ② バイヤージャーニーの設計 ③ コンテンツ制作・リライト、リンク設計

① 現状把握(コンテンツリスト作成)

白砂氏 すでに記事コンテンツがある場合は、現状のコンテンツを洗い出し、コンテンツリスト、いわゆる「在庫表」を作成します。

多くのオウンドメディア運営チームではコンテンツが何本あるかは管理していても、そのコンテンツが見込み顧客のどのフェーズ向けのコンテンツなのか把握できていません。各コンテンツのテーマを確認し、どのフェーズ(ターゲット)の読者に当たるのかを洗い出します。もちろん、各コンテンツの現状のターゲットとなる検索ニーズや検索順位、流入状況も把握しておきます。

また、Googleアナリティクスの行動分析からコンバージョンの経路となっているコンテンツも把握します。記事コンテンツ以外のWebページやホワイトペーパー、動画など、コンバージョンさせるために使えそうなコンテンツはすべて洗い出します

江沢氏 そうそう、すでに記事コンテンツがあるサイトの場合、この「在庫表」が重要なんですよね。私も何度か見てますが、全記事を「興味関心」「話題・ニーズ」「認知」「情報収集」「比較検討」の5つのフェーズに分類するんですよね。

これによって、「興味関心フェーズの記事は多いけど、情報収集系の記事がまだ十分ない」というように評価するんですよね。

もちろん新規で記事コンテンツを作っていく際にもこのフェーズを意識した検索ニーズ調査が重要! またこの在庫表は記事だけでなく、そのサイトが保有しているあらゆるコンテンツ(ホワイトペーパー、事例集、デモ動画など)も一覧化するんですよね。「自身がどんなコンテンツを持っているのか」この視点ってとても大事だと感じています。

チラ見せで恐縮ですが、こんな項目でリスト化してこれをずっとアップデートしていきます。ターゲットという列で5つのフェーズにわけています。

② バイヤージャーニーの設計

白砂氏 次のステップで「製品・サービスを購入する」ことが前提となる、見込み顧客のルートを、コンテンツをベースにして作成します。簡単に言うと、先ほど洗い出したコンテンツのどことどこをつなげると、見込み顧客の「買いたい気持ち」を育てていけるか、設計していくのです。

たとえば、製品で解決できる課題に対し「興味関心があるだけ」の人向けのコンテンツから、いきなり製品紹介やLPにリンクしても、なかなかクリックしてもらえませんよね。「課題への興味関心」だけの人には、「その課題を解決することで何が起こるのか」が載っているコンテンツへの誘導が必要なんです。

江沢氏 出た! バイヤージャーニー。これはすごいですよね。どことどこをつなげると見込み顧客の「買いたい気持ち」を育てていけるかを可視化したこの図版は、まさにコミュニケーション設計の肝です。

③ コンテンツ制作・リライト、リンク設計

白砂氏 ②のジャーニーを描くことで不足しているコンテンツや、カギとなるコンテンツがわかってきます。次の3つ目のステップでは実際のコンテンツ制作を行います。たとえばコンバージョンにつながりやすい集客コンテンツの検索順位や流入数が悪い場合はリライトしたり、類似テーマへのコンテンツ拡張をしたりします。

併せて、ジャーニーマップのコンバージョン経路に空白があれば、そこを担うホワイトペーパーや説得型ページなどのナーチャリング・クロージングコンテンツを新規で作成していきます。

また、ヒートマップを確認しながら、CTA(Call To Action)の挿入位置やリンク先の設計も行います。この際に、②で作成したジャーニーが羅針盤となります

江沢氏 やっと制作ですね。キーワード調査→ライティングして記事作成という流れが一般的ですが、やはり最初の分析と設計をまずしっかり行うことが重要だなと私も感じています。改めてまとめるとこんな感じかな?

江沢氏 コミュニケーション設計、奥が深い…。では次に、やはりSEO的に大事な記事コンテンツ部分において、白砂さんのこだわりやポイントがあれば教えてください!

白砂氏 CTAの挿入位置にはすごくこだわっています。必ずヒートマップ分析を行い、熟読エリアの直下(いったん話が終わるタイミング)や、スクロール離脱が50%以内のエリアから送客することなどですね。SEOコンテンツ改善も、ナーチャリング・クロージングコンテンツの改善もすべてヒートマップを使います。

私はミエルカのヒートマップツールをよく使っています。熟読エリアとスクロール離脱、クリックエリアを見比べながらCTA挿入で効果が出そうな場所を特定できます。無料から始めることができミニマムプランが月額9800円というのも嬉しいですね。

ミエルカヒートマップ

江沢氏 ミエルカヒートマップ、アユダンテでもずっと活用しています! 記事のリライトにしてもCTA設置にしても、この分析は欠かせないですよね。

自社が保有するコンテンツの棚卸から始めよう

江沢氏 次にコミュニケーション設計部分でのポイントを教えてください。これ、本当に経験が必要でなかなか難しい施策だと感じています。

白砂氏 重要なポイントは、現在保有しているコンテンツの棚卸と整理整頓をしっかりやることですね。あるクライアントは、Webダウンロードには出していないけど現場で使っているホワイトペーパー(冊子)をたくさん保有しており、それらがリード獲得に使えることがわかりました。

みなさん意外と自分たちが保有しているコンテンツのすべてを把握できていないのです。また、それぞれのコンテンツの役割や目的も曖昧になっています。全体設計の前に、各コンテンツにきちんと役割と目的のラベル付けを行いましょう

そしてジャーニー設計を行ったら、不足コンテンツの作成や成果の悪いコンテンツのリライトやリメイクをし、コンテンツが増えるたびに在庫表とジャーニーマップを更新、これを繰り返していきます。かなり面倒な作業に感じますが、作る意味のわからないコンテンツを作り続けるより成果が出ます。制作本数を減らしてでも、管理体制を整えることをおすすめします

江沢氏 確かに! SEO観点でコンテンツを作るとどうしても人気のキーワードにフォーカスしちゃうんですよね。あと大きな企業になればなるほど保有コンテンツを活用しきれていないケースはよく見かけます。在庫表にしても、ジャーニーマップにしてもとにかく可視化することが大事ですよね。

BtoBの内部施策とは?

白砂氏 江沢さんに質問してもいいですか? 私はコンテンツマーケティングが主ですが、やはりBtoBのSEOで内部施策もまだ重要なんでしょうか?

江沢氏 そうですね、昨今のBtoBのSEO施策は記事優位みたいな風潮がありますが、やはり内部施策は重要だと感じています。案外、本体側にもキーワードがあり、記事よりCVRが高いのに対策できていないケースが多い。ちょうどBtoBの内部施策で何をどう進めるべきか、「Web担ビギナー」のこちらの記事を監修したのでご紹介しておきます。

よくありがちなのが、記事への導線が本体側からほとんどないケースです。やはり内部リンクは超重要ですし、記事の中には訪れたユーザーの役に立つものもたくさんあるので、TOPページのメインエリアから新着記事、人気記事、コラムTOPなどへのナビゲーションをしっかり設置したほうが良いです。グローバルナビにも入れてほしいです。

白砂氏 この連載はSEO×広告ですが、BtoBにおいて広告との取り組みって何かありますか?

江沢氏 結構、BtoBはSEOと広告のコラボレーションの事例があります。広告はキーワード単位のCVRデータがわかるので、そこから記事のネタを探したり、SEOでいまいちの記事を広告でデリバリーして強化したり、逆にキラーコンテンツを広告出稿してさらにコンバージョン獲得を目指すなど、さまざまな取り組みをしています。詳しくは広告の回で河野さんに取り上げてもらいます。

BtoBは「総合力」が大事

江沢氏 最後に白砂さんに聞きたいです。今後のBtoBのSEO施策はどうなりますか? どこに注力していきたいですか?

白砂氏 コンテンツを作って流入を稼ぎ、アクセスを増やすだけだと成果が出ないことがわかってきました。ソーシャルメディアやメールマーケ、オフラインやイベント・セミナー、動画コンテンツなどを融合させて、総合力で勝負できるよう、すべてのコンテンツに詳しくなりたいですね。

そして、先ほど説明した全体設計を行い、描いたシナリオ通りに成果が出るコンテンツマーケティングを実施していきたいです。忍耐力の必要な施策ですが、やりつくせば必ず成果が出ます

江沢氏 そうですね、どの業種でも「SEOだけ」「広告だけ」「SNSだけ」では大きな効果が望めなくなってきていますよね。総合力で勝負、大事な言葉だと感じました。

白砂さん、今回はありがとうございました! SEOのその先のコミュニケーション設計、私自身も今後の打ち手として非常に期待していますし、すでに効果を体感しています。BtoB、そしてBtoCでも検討期間の長い商材では有効ではないかと感じています。

◇◇◇

次回は実際にSEOとコミュニケーション設計を実施して流入とリード獲得の成果が出たサイボウズ様の事例をお届けします。

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