通販の配送トラブルをなくすために知っておくべき、誤配と破損・汚損が起きるメカニズム
通販・EC事業者の皆さん、誤配と破損・汚損が起きるメカニズムは知っていますか? 誤配と破損・汚損が起きる原因を知れば、配送クレームがなくなるかもしれません。そのためには、宅配会社を営業所単位で1つの取引先と考え、その責任者と密にコミュニケーションを取る環境を構築し、自社主導で品質管理を行っていくこと。前回コラムの遅配が起きるメカニズムを合わせて読むと、よりいっそう配送現場のことが理解できるはずです。
なぜ誤配が起きるのか、そのメカニズムを知ろう
誤配の原因の大半が「空目」です。配送ドライバーって、そこに存在していないものを見たと認識してしまうことがあるんですよね。
荷物に貼る送り状の届け先を記入する枠は、縦4cm×横7cm程度しかありません。商品を発送するためにそこへ20~50くらいの文字が書き込まれているわけです。
現場のドライバーや仕分けスタッフはそれを何十個、人によっては何百個も瞬時に読み取り、判別しなければならないのが宅配業務の仕事です。
機械化が進んでいるものの、まだまだ「人」による仕分け作業が多いのが事実。日本には紛らわしい地名がたくさんあり、それが原因で「誤配」が起きるケースが多いんです。
また、購入者が配送先住所の記入をミスしてしまうといったケースも往々にしてあるんです。
たとえば、市区郡名だけを見ても……
- 中野区(東京都) と 中央区(東京都・大阪市・札幌市・福岡市・相模原市・他)
- 中野区(東京都) と 中野市(長野県)
- 大田区(東京都) と 大田市(島根県) と 太田市(群馬県)
- 松山市(愛媛県) と 松本市(長野県) と 松江市(島根県)
- 玉野市(岡山県) と 玉名市(熊本県)
- 飯田市(長野県) と 飯山市(長野県)
- 綾瀬市(神奈川県) と 綾部市(京都府)
- 亀山市(三重県) と 亀岡市(京都府)……etc
ぱっと見て判別しづらい名前が多いですよね。これが町名ともなるともっとわかりづらい。
たとえば東京都中央区で「日本橋」と付く町名は……
と、20余りも存在しているのです。
この「日本橋」の例を見ても、うっかり「○○町」の部分を入力もしくは書き忘れたり、間違えたりすることは往々にして起きうることです。万が一、書き間違えた住所に同じ苗字のお宅があったりしたら大変なことですよね。
もし、自社で発送している荷物で「遅配」「誤配」が多いなと感じているのであれば、「送り状」をよーーーく眺めてみましょう。
印字されている(書かれている)文字が小さかったり、変なところで改行されていたりしていませんか?
ひょっとするとそれがドライバーの「空目」の原因になっているかもしれませんよ。
破損・汚損が起きるメカニズム
商品を集荷し、送り先の営業所までに送るまでにはさまざまな行程があります。大型のトラックがよく使用されますが、そのなかは“通勤ラッシュ時の満員電車”のようなもの。最近ではエコやコスト削減の観点から、一部で簡易梱包が流行っているようですが、簡易梱包で荷物を送るというのは、「満員電車にパンツ一丁で乗るようなもの」なのです。
要するに、商品の破損を防ぐ方法はしっかり梱包をすること以外にないということ。宅配便が安く荷物を運べるのは「混載」をしているから。「混載」とは自分の荷物がまったく知らない会社の荷物と一緒に積み込まれて運ばれることです。
たとえば簡易梱包での配送は無謀な行為です。やめた方が身のためです。だって、あのアマゾンさんでさえ、厳重に梱包するのですから。
なぜ“通勤ラッシュ時の満員電車”のようなことが起き、破損事故が起きてしまうのか。そのメカニズムを説明しましょう。
クロネコヤマトのホームページによると、東京~大阪まで120サイズ(みかん箱程度)の荷物を送ると運賃は1512円(税込)になります。しかし、同じ東京~大阪間を誰かがタクシーに乗って、この荷物を届けに行くと、20万円以上の運賃を請求されます。
なぜ同じ距離を移動させるのに130倍もの料金の差が発生するのか考えたことはありますか?
宅配便の料金が安い理由は、大量の荷物を集約して運ぶからです。たとえば、夜間高速道路をビュンビュン走っている大型トラック。この荷台の箱のサイズは(車種によって差はありますが)長さ9.5m×幅2.4m×高さ2.5mといったところが標準です。
このサイズの荷台のなに、さっきの120サイズの荷物が単純計算で1000個ほど入ります。
では、大型トラック一台のチャーター料金が、タクシーと同じ東京~大阪まで20万円の運賃だったとするならば(本当はもうちょっと違う料金なんですけど)、これまた単純計算で1個あたり200円となります。もちろん宅配貨物はそんなに単純な動きをするわけではありません。
宅配会社のセンターで夜間に仕分けをし、何度も積み替えをして、配達をするドライバーの手元まで渡ってから、消費者のもとに届けられます。そういったコストも加算されての東京~大阪は1512円となるわけなんです。
この低価格が実現されているのは、トラックの荷台いっぱいに隙間なく荷物が積まれていることが前提となります。もし半分の1.25mの高さにしか荷物が積まれてなかったら、1個あたりの運賃が200円→400円になるわけですから。
1000個の荷物を最も効率よく運ぶためには、トラックの荷台の箱のなかに長さ9.5mで幅2.4m、そして高さ2.5mの荷物の立方体を作り上げなければならないということなんです。
そしてその巨大な立方体を最高時速80kmのスピードで移動させなければなりません。外側は箱で囲われているとはいえ、荷物は“ジェンガ”のように積み上げられ、その1つひとつに時速80kmの慣性の法則が働くので、最悪の場合2.5mの高さから荷物が落下することも十分あり得ることなのです。
EC会社の皆さんにとって配送は自社の手が届かないところです。クレームを引き起こさせないためにできることは、宅配会社の営業所と密にコミュニケーションを交わし、自社主導で品質管理を行っていくことなのです。