鎌野 誠司 2015/4/3 8:00

日本郵便は2015年4月から、個人取引などの需要を狙った信書が扱える新サービス「スマートレター」を始めました。また、ヤマト運輸ではクロネコメール便廃止の代替新サービスとして「宅急便コンパクト」「ネコポス」を開始しましたが、クロネコメール便の廃止を発端に、一気に世間の注目を集めたのが「信書問題」です。そこで、改めて「信書」についておさらいし、「信書」が扱える配送サービスについて説明していきます。

通販の荷物に同梱する納品書が「信書」にあたらないという根拠は知っている?

「信書」とは、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」のことを指します(郵便法第4条第2項及び民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第1)。

請求書・納品書・領収証・申請書・見積書・招待状・許可証・証明書などのすべて信書に該当し、ダイレクトメールなどであっても「会員の皆様へ」「○月がお誕生日の方へ」などと書かれていると「信書」に該当してしまいます

郵便法に違反すると、最大で3年以下の懲役又は300万円以下の罰金刑を科せられてしまう可能性があります。

信書に該当する文書に関する指針(平成15年総務省告示第270号)
信書に該当する文書に関する指針(出典は総務省の資料

そして、多くの人が「日本郵便が配達をするサービスは信書を送って大丈夫」と思っていますが、実は信書が扱えるサービスは、日本郵便の配送サービスのなかでも、第一種郵便(定形郵便・定形外郵便)第二種郵便(はがき)、「レターパック プラス」「レターパック ライト」、それに今回新しくサービスが開始された「スマートレター」しかありません。

【日本郵便が扱える信書配送サービス】

つまり、日本郵便のサービスであっても「第三種郵便」「ゆうメール」「ゆうパック」などは信書を送ることができないサービスなのです。

そしてもちろん、クロネコヤマトや佐川急便などの宅配便も、信書を送ることができないサービスとなります

信書に該当する文書に関する指針(平成15年総務省告示第270号)

あれ? でも宅配便で納品書などが商品に同梱されて送られてくるよね。あれって大丈夫なのかな?

ヤマト運輸さんのクロネコメール便廃止でクローズアップされた「信書」のことで、こんなことを感じた通販・ECの担当者も多いでしょう。答えは「可」です。なぜ、「信書」を送ることが禁止されている宅配サービスに納品書を入れて大丈夫なのか。この疑問にお答えします。

郵便法第4条第3項但書において、「信書であっても、貨物に添付する無封の添え状又は送り状については、運送営業者による送達が認められている」という規定があります。これは、荷物として送るモノに添える(荷物が主で添え状が従の関係であることが条件)挨拶状や納品書などは信書であっても、宅配便やゆうパックなどに同梱することが許されているということなんです。

「無封の添え状」とは、「送付される貨物の目録や性質、使用方法等を説明する文書及び当該貨物の送付と密接に関連した次に掲げる簡単な通信文で、当該貨物に従として添えられるもの」とされています。

(1) 貨物の送付に関して添えられるその処理に関する簡単な通信文
(2) 貨物の送付目的を示す簡単な通信文
(3) 貨物の授受又は代金に関する簡単な通信文
(4) 貨物の送付に関して添えられるあいさつのための簡単な通信文
(5) その他貨物に従として添えられる簡単な通信文であって、(1)から(4)までに掲げる事項に類するもの

と、このように定義されており、この(1)~(5)に該当する文章であれば、ゆうパックや宅配便に同封してもOKとされています。ただし、あくまでも荷物がメイン(主)であって、添え状はその荷物について説明する程度のもの(従)でなければならないってことですね。

信書に該当する文書に関する指針(総務省のPDF)

貨物に添付する無封の添え状・送り状について
信書に該当する文書に関する指針(出典は総務省の資料

主従関係にあたらない信書を同梱する場合はどうする?

通販の荷物の納品書などの「信書」は、主従関係さえしっかりしていれば同梱することができるということを説明しましたが、場合によっては、「主従の関係にあたらない信書を含み、且つ4キログラム(定形外郵便の最大重量)を超える重さの荷物」を送らなければならないケースが発生するかもしれません。

そんな時に使えるサービスが、いくつかの民間企業が行っている「信書送達事業」です。

2003年に郵政事業が民営化された際に、日本郵便株式会社(旧郵政公社)だけではなく、民間業者でも信書送達事業を扱えるよう法律が改正されました。

簡単に説明すると、信書を輸送する事業は「一般信書便事業」と「特定信書便事業」の二種類に分けられ、総務大臣の認可を受けることができれば、誰でも行うことができるものなのです。

とはいえ、「一般信書便事業」は日本全国にポストを設置することが必須条件であったりするため、参入ハードルが相当高く、現在のところ日本郵便以外の参入はありません。しかし、「特定信書便事業」は比較的参入ハードルが低いため、2013年現在で400社程度が認可を取得しています

その「特定信書便事業」を、大手運送会社、またバイク便事業者や地場の運送会社などが行っており、そのなかで代表的なものが、佐川急便の「飛脚特定信書便」、日本通運の「特定信書輸送(ビーエスピー1・ビーエスピー2)」、西濃運輸の「カンガルー信書便」などとなります。

特定信書事業とは、その名の通り「特定の信書」を取り扱う事業なので、以下の3つの条件に該当する信書のみが取り扱いの対象となります。

  • 第1号役務 → 長さ、幅及び厚さの合計が90cmを超え、又は重量が4kgを超える信書便物を送達する役務
  • 第2号役務 → 信書便物が差し出された時から3時間以内に当該信書便物を送達する役務
  • 第3号役務 → 料金の額が1,000円を超える信書便の役務

このなかで、多くの企業はハードルが低めの「第1号役務」「第3号役務」の認可を取得しており、「第2号役務」の認可は電報の配送サービスを行っている企業などが取得しているようです。

「飛脚特定信書便」を使って信書を送ってみた

さて、ボクも実際に佐川急便の「飛脚特定信書便」を使って信書を送ってみましたので、その模様をレポートします。

まずは、送るべき荷物の準備を始めます。今回送ろうとしている荷物は、名刺の束と申込書を同封したものです。名刺は信書にあたりません。しかし、申込書が信書に該当し、「無封の添え状」でもないとの判断により、特定信書便で送ることにしました。

「飛脚特定信書便」を使って信書を送付
「飛脚特定信書便」を使って信書を送付

梱包を済ませ、佐川急便の集荷受付に電話をしたのですが、ここで問題が発生しました。「飛脚特定信書便」で荷物を発送するためには、通常便を発送するときに使っている顧客コード(請求書を作るための出荷人ごとの個別のコード)とは別の、専用コードを新しく作らなければならないんだそうです。

ここから新しく専用コードを作ってもらうと、予定している日にお届けが間に合わなくなってしまうので、佐川急便の営業担当者と電話で相談し、今回は現金用の送り状を持ってきてもらって、それを使って「飛脚特定信書便」を送ることにしました。

「飛脚特定信書便」の送り状
「飛脚特定信書便」の送り状

顧客コードの問題がクリアできれば、その後の流れは通常の宅配便を送るのとなんら変わりはありません。改めて佐川急便の集荷受付のフリーダイアルに電話し、ドライバーが集荷に来るまで待機。集荷に来たドライバーに「これ、特定信書便で!」と念を押して荷物を渡すだけです。

「飛脚特定信書便」を使って、佐川急便が集荷に来た
佐川急便さんが集荷に来た!

荷物を渡してしまえば、そのあとは貴重品扱いで輸送され、通常便と同じリードタイムで配達されます。もし不在だった場合も通常便同様、不在表を投函して後日再配達されるとのことでした。

気になる運賃は、飛脚特定信書便用の運賃タリフに沿って算出されますが、ここも通常の宅配便の規定料金とほぼ同等です。そして1回に出荷する個数がまとまると、50個まで10%引き、100個まで15%引き、500個まで20%引き、500個以上30%引き、という値引き設定があります。また通常の宅配便と同様の貨物追跡も利用できるので安心です。

佐川急便の荷物問い合わせサービス
佐川急便の荷物問い合わせサービス

注意しなければならないのは、サイズの規定があることです。

今回ボクが利用した佐川急便の「飛脚特定信書便」は、佐川急便が総務省から「特定信書事業(1号役務・3号役務)」の認可を取得して行っている事業ですので、ここでもまた法律で定められているルールを守らなければなりません。

  • 1号役務 → 長さ&幅&厚さの合計が90cmを超え、または重量が4kgを超える信書便物を配達するサービス
  • 3号役務 → 1冊の料金(運賃)が税込みで1000円を超える信書便物を配達するサービス

との規定で、これよりも大きい荷物でなければ取り扱うことができないのです。ちなみに、日本通運や西濃運輸も同様の特定信書便の輸送事業を行っていますが、佐川急便と同じく総務省からの「1号役務」「3号役務」を取得して運営している事業なので、取り扱いの条件は同じです。

さて、ここまで記載したように、「信書」を含む物、含まない物を合わせ、国内輸送の方法は多くの選択肢があり、運賃も運送会社や輸送方法によってさまざまです。しかし運送事業は国土交通省の認可が必要な事業であり、お金を払って荷物を輸送してもらうという行為に対し、必ず法律の縛りがあるものなのです。

荷物や封筒が梱包されてしまうと、そのなかに信書が入っているかいないかは運送会社側ではわかりません。

ですから、信書の発送に関しては、荷主のみなさんが正しい知識を得たうえで、自己責任で正しい発送方法を選択しなければならないのです。

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