Forever 21のZ世代を獲得する2つのアプローチとは? CVR6割のカゴ落ち対策&メタバース活用
ITリテラシーが高いZ世代は、オンライン通販を利用するときに迅速なチェックアウト(編注:支払い)を望む人が多く、決済完了までにかかる時間が長いとカゴ落ちにつながりやすくなります。
効率化されたスピーディーなチェックアウトプロセスを実現したアパレルブランドのForever 21と決済プロバイダーのBolt Financial(ボルト・フィナンシャル、本社米国)の取り組みから、Z世代に受け入れられやすい迅速なチェックアウト例、メタバース領域の施策を解説します。
- Forever 21の、効率化されたチェックアウトプロセスを利用した消費者のカゴ落ち率は37%に減少した。
- Forever 21は、メタバースでも百万点もの3Dアパレル商品を販売している。
- Forever 21の親会社であるAuthentic Brands Groupは、2022年にBolt Financialを提訴。現在はBolt Financialの株式を所有し、良好なパートナーシップを築いている。
「今すぐほしい」に応える決済スキームとは
決済プロバイダーBolt Financialのサービスを導入
アパレル小売チェーンForever 21のジェイコブ・ホーキンス氏(デジタル部門最高マーケティング責任者)は「モバイルで買い物するZ世代には、チェックアウトのスピード感が大切」だと言います。
私たちの顧客であるZ世代は、商品が今すぐに欲しいのです。Z世代はテクノロジーに精通しています。私たちが導入しているBolt Financialの決済サービス「Bolt」は、ITリテラシーが高く、スピーディーなチェックアウトをしたがるZ世代のニーズに応えています。(ホーキンス氏)
Forever 21は、決済サービス「Bolt」(Bolt Financialの決済システム)を2019年に導入しました。導入当初はトラブル続きでした。
Forever 21を傘下に持つAuthentic Brands Group(オーセンティック・ブランズ・グループ。米国のブランド管理会社)は2022年3月、約束したテクノロジーを提供しなかったとしてBolt Financialを提訴。2022年7月に和解し、Authentic Brands GroupはBolt Financialの非公開株式を獲得しました。
Forever 21とBolt Financialへの電話インタビューでホーキンス氏は、「私たちは今、良好なパートナーシップを結んでいます。トラブルはすべて過去の話です」と説明。Bolt Financialの広報担当者も「前進あるのみです」と語りました。
チェックアウトにかかる時間の大幅圧縮に成功
Forever 21は「Bolt」導入による効果を実感しています。Forever21.com(編注:Forever21の自社ECサイト)での「Bolt」を使ったチェックアウトの時間は100秒で、ゲスト・チェックアウト(編注:ECサイトにサインインしていないゲストの状態でチェックアウトすること)より43秒短くなりました。
ホーキンス氏は、「43秒は“永遠”に思えるほど長く感じる」と指摘。実際、消費者は時間がかかりすぎると離脱してしまいます。
店頭に行ってレジに並ぶのは誰だって嫌なものです。Webサイトでも、誰も長い時間待ちたくはないでしょう。(ホーキンス氏)
「Bolt」を使ってチェックアウトした消費者のカゴ落ち率は2022年に37%でしたが、ゲスト・チェックアウトを使った消費者のカゴ落ち率は60%でした(編注:ゲスト・チェックアウトでは「Bolt」を利用しないため、チェックアウトにその分時間がかかる)。
言い換えれば、「Bolt」を使用してチェックアウトを開始した消費者の63%が購入を完了しているのに対し、ゲスト・チェックアウトを使用して購入完了に至った消費者は40%にとどまったのです。
ホーキンス氏は「時間がかかればかかるほど、購入する人は少なくなる」と指摘します。
若年層はカゴ落ち傾向が高い?
『Digital Commerce 360』のデータによると、若年層の消費者は他のオンライン通販利用者と比較して、カゴ落ちする傾向が高いことがわかっています。
調査会社のBizrate Insightsがオンライン通販利用者1060人に行った調査によると、カゴ落ちの理由で「チェックアウトの工程が長すぎた」と回答したのは全体で9%でしたが、18歳から29歳の消費者では13%でした。
自動入力で購入フローを短縮
「Bolt」を使うとなぜチェックアウトに要する時間が短縮するのでしょうか? それは消費者が入力しなければならない情報の項目が少ないため、チェックアウトがより速くなるのです。
Forever21.comでゲスト購入しようとする消費者は、チェックアウトページの項目にEメールと電話番号を入力。以前に「Bolt」を導入しているECサイトで買い物をしたことがあれば、ECサイトが購入者を認識し、SMSで1回限りのパスコードを送信します。
消費者が「Forever21.com」でそのパスコードを入力すると、請求先と配送先情報が自動入力され、購入ボタンをクリックできます。
「Bolt」を使わず、ゲスト購入する消費者は、請求先や配送先などの情報を入力し、確認ボタンを押すといったフローは5ステップほどを要します。
「Bolt」は数百ものオンライン通販事業者が導入する決済サービス。そのため、消費者が「Bolt」を使って買い物をしたことがあれば、Forever21.comでも「Bolt」を使って簡単にチェックアウトすることができます。
多くのエンドユーザーが「Bolt」で支払い情報を保存
Bolt Financialによると、1800万人以上の消費者が「Bolt」のサービスを利用しているそうです。アカウントの多くは「Bolt」を使用しているECサイトでチェックアウトし「将来の購入のために支払い情報を保存する」ボタンをクリックした消費者です。
Forever 21はモバイルユーザーの新規獲得に期待感
ホーキンス氏は「スピーディーなチェックアウトページは、モバイルを利用する消費者にとって特に重宝されている」と言います。モバイルでの売り上げは、Forever 21のオンライン売り上げの「大部分」を占めているそうです。
ホーキンス氏は、Forever 21のオンライン売り上げが全社売上高の何%を占めるかについては言及を避けましたが、「健全な割合」であり、成長していること、そして今後1~2年のうちにさらに成長する見込みであることだけは言及しました。
『Digital Commerce 360』では、Forever 21の売り上げの約27%がオンライン経由であり、オンライン売り上げの75%がモバイル経由と推測しています。
この数字は、『Digital Commerce 360』発行の「北米EC事業 トップ1000社データベース 2022年版」にランクインしている、小売事業者のモバイル端末からの売り上げの中央値58.0%よりも、はるかに高い数字です。
さらに、『Digital Commerce 360』によると、Forever 21のオンライン通販利用者の41.9%は18~24歳で、「Top500Guide.com」の同年代の中央値(15.5%)よりも、かなり高い割合になっています。
「『Bolt』を使う利点は、インターネット詐欺の防止ができることに加えて、新しい顧客を獲得できること」だとホーキンス氏は話します。
Z世代の心をつかむ、メタバース領域での挑戦とは?
Forever 21は、Z世代の消費者のニーズに応えるアプローチとして、スピーディーなチェックアウトに加えて、ブランドをメタバースで展開しています。
Roblox社が提供する オンラインゲーミングプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」内でアパレルコレクションを展開。消費者は自分のアバターにForever 21のアパレルブランドを購入し、着せることができるようになりました。
たとえば2022年6月、Forever 21は米国の玩具メーカーMattel(マテル)社のバービーブランドとコラボレーションしたコレクションを開始。
消費者はバービーブランドのアパレルをオンラインや店舗で自分用に購入したり、Roblox上の「Forever 21 Shop City」(編注:ユーザーが仮想店舗を運営できるゲーム)でメタバース内の自分のアバターにそのアパレル商品の3D版を購入することができました。
ホーキンス氏は「Forever 21にとって、Z世代が過ごす場所では、それがどのチャネルであろうと、マーケティングとエンゲージメントに取り組むことが重要」だと言います。
Z世代が夢中になっている分野の1つがメタバースです。私たちはそこで、彼らと出会い、質の高いつながりを持ちたいと考えています。これは素晴らしいチャンスなのです(ホーキンス氏)
Forever 21は、メタバースの商品が好評だったため、メタバース専用に「Forever 21」と書かれた黒いビーニー帽(編注:ニット帽の一種)をデザインしました。この商品についてホーキンス氏は「爆発的に売れ、デジタルで100万個以上売れた」と話しています。この成功をもとに、Forever 21は2022年12月にこのビーニー帽を実店舗とオンラインで販売。その結果は満足のいくものだったそうです。
ホーキンス氏は「我々はメタバースでの事業拡大にとても期待感をもっています 」と言います。Forever 21は、2023年に向けて新たなメタバース構想の計画を立てているそうです。