森田 秀一[執筆] 2023/7/12 8:00
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卸売店や小売店を経由せず、直接顧客とつながり、サービスや商品を販売、そしてその声を聞くことができる「D2C(Direct to Consumer)」。インターネット技術やデバイスの発展という追い風もあり、D2Cビジネスに着手する企業が増えている。その一方で、集客、販売、顧客対応、購入後のアフターケアなど、きめ細やかなサポート体制も必要になる。

D2Cビジネスを成功に導くためにはどんな準備が必要なのか? ECプラットフォーム「ecforce」の開発・提供と、自社D2Cブランドの運営を行うSUPER STUDIO 執行役員CMO 飯尾元氏が解説する。

D2Cの継続に重要なのは「CPAとLTVのバランス」

SUPER STUDIOが開発・提供する「ecforce」は、バルクオム、北の達人コーポレーション、タマちゃんショップなど、1000ショップを超えるEC/D2C企業が導入している。多くの企業をシステム面から支援するSUPER STUDIOから見ても、近年はD2Cのブームが巻き起こっている状況だという。「新たにD2Cに乗り出すお客さまが多い。参入障壁の低さがその要因の1つだが、D2Cを立ち上げた後に課題にぶつかるケースも少なくない」(飯尾氏)。

SUPER STUDIO 執行役員CMO 飯尾元氏

基本的にD2Cとは、主にメーカーやブランドが商品やサービスを企画・販売(メーカーであれば製造も入る)する製品供給者として、主にECを通じて顧客に直接販売することを指す。そのため、モノづくりから集客、販売、購入後のアフターケアまでを一貫して行う仕組みを構築する必要がある。カバーすべき業務領域は広く、専門的なノウハウも必要になる。

そのため、商品の製造・生産については熟知しているが、マーケティングで集客しきれない、発注が追いつかない、イベント実施まで手が回らないといった事態に苦しむケースも多いという。飯尾氏によると、D2Cビジネスで最も重要なことはCPA(顧客獲得単価)とLTV(顧客生涯価値)のバランスだという。SUPER STUDIOが「ecforce」の導入企業などEC/D2C事業者を対象に実施した調査結果の一部を見てみよう。

EC/D2C事業者のCPA・LTVに関する調査。左のグラフがCPA、右が顧客1人あたりの年間購入額(LTV)(出典:SUPER STUDIO調査)

広告やキャンペーンなどで新規顧客を獲得した際の単価、いわゆるCPAは、5000円~15000円と回答した割合が多い。また、顧客1人あたりの年間購入額も5000円~15000円の割合が多く、CPAとLTVがほぼ同水準にある。

この結果から、新規顧客の獲得にコストをかけても、それとほぼ同等の売り上げしか得られていないという現実が見えてくる。ではどうすればいいのか。新規顧客だけでなく、既存顧客に注目してビジネスを見てみよう。集客して一度購入してくれた顧客を、どうすればリピート顧客に育成できるか――こう考えることも重要だと飯尾氏は指摘する。

D2Cが実現する「顧客の資産化」

このように、D2Cビジネスには課題が多い。そもそも、なぜここまでD2Cビジネスは注目されているのだろうか。これまでメーカーやブランドは、製品を企画・開発する一方で、販売については卸売・小売の各事業者に任せるのが一般的だった。

D2Cビジネスは、メーカーやブランドがEC運営から商品発送まで行うため、名前まで見える顧客1人ひとりと直接つながることができる。そのため、製品改良などに役立つ顧客の声が直接届いたり、顧客とコミュニケーションをとることでリピート購入につなげたりできる。これこそがD2Cビジネスの最大の魅力と言えよう。

これまでメーカーやブランドは、売り上げを伸ばしたくても販売を担う卸売・小売に依存せざるを得なかったケースがほとんど。その依存から部分的にでも脱却したいというニーズが、メーカーには少なからずあったのだろう。(飯尾氏)

一般的な流通モデル

自社製品をどんな顧客が買っているのかという、ごく基本的な情報さえメーカーは知る手段がほとんどなかった。

この状況をコスト起点で捉えれば、メーカーやブランドはある種のマージンを卸売・小売側に支払い、卸売・小売が持っている販売網や顧客情報を“使わせてもらっていた”という言い換えもできる。

D2Cの販売モデル

これをD2Cビジネスが一変させる。顧客情報という重要な資源をメーカーやブランドが入手し、活用できるようになったのだ。飯尾氏はこの「顧客(情報)の資産化」こそがD2Cビジネスのすべての出発点になると強調する。

D2Cビジネスの意義は「顧客の資産化」

しかし、卸売・小売側の力を借りない以上、集客も含めてすべてをメーカーが担うことになる。だからこそ、新規顧客獲得のコスト指標となるCPAは極めて重要になる。

もちろん、消費人口には限りがあるため、新規顧客を獲得し続けることは難しい。1回売ったら終わりではなく、メーカーと顧客が長期的な関係を構築し、リピート購入の割合を増やしていかなければ、売り上げを維持できなくなってしまう。だからこそ、LTVもまた重要なのだ。

LTVからCPAを引いた値が黒字であり続けることが、D2Cビジネスを成功に導くための絶対条件。この状態を作るために顧客情報を活用し、“売れる仕組み”を作ることが最初の目標になる。(飯尾氏)

D2Cマーケティングの基本

D2Cビジネスにおけるマーケティングは、以下の4つの工程に集約される。

  1. 集客
  2. 接客
  3. 成約フォロー
  4. 顧客価値最大化(成約後)
D2Cビジネスにおけるマーケティング ①集客 ②接客 ③成約フォロー ④顧客価値最大化

この4つの工程の中では集客に目を向けがちだが、飯尾氏は「自社サイトでの顧客獲得の“効率”維持」と「LTV最大化」こそが施策判断で重要だと強調する。

しかし新興D2Cにとって、この4工程すべてを徹底するのはハードルが高い。そこでもう少し要素を絞り込み、D2Cビジネスを成長軌道に乗せるためのグロースプロセスとして示したのが以下の図だ。

D2Cビジネスの基本プロセス ①新規獲得のゴールデンルートの確立 ②新たなゴールデンルートの開拓 ③新商品の継続投下とCRM強化 ④収益性の向上

ここで言うゴールデンルートとは、新規顧客獲得の効率が良く、その再現性の高い施策群のこと。露出・集客を行う媒体、商品の訴求法、訴求後のプライシングなどをひとまとめにして「ルート」と捉え、複数のルート案を試す中で特に成果があったものを指す。「このルートであれば新規顧客を安定的に獲得できる」というチャネルをまず1つ見つけることが重要だと飯尾氏は語る。

ゴールデンルートが見つかったら、今度はまた別のゴールデンルートを探し、さらなる新規顧客の獲得につなげていく。顧客基盤が確立してきたら、今度は既存顧客に新商品を提示するなどしてLTVを向上させる。LTVも上がってきたら、サプライチェーンを見直したり取引先と交渉したりするなど、収益性を上げていく。これが理想的なD2Cビジネスの成長過程だ。

「LP型」と「総合ショップ型」の選択を間違っていないか?

D2Cビジネスの中心となるのはECサイトだが、ECサイトは販売形態に応じて2つのタイプに分かれる。1つ目が「LP型」で、単品通販やテレビショッピングのように少数の製品を徹底して売り込む方式。2つ目の「総合ショップ型」は、幅広い商品ラインナップでさまざまな顧客ニーズに対応する販売形態だ。

著名なECサイトの多くは後者の総合ショップ型である。しかし、立ち上げ間もないD2Cは商品数が少ないため、自然とLP型を選択することになるという。サイト内のページ数が少なく、総合ショップ型のように複数の商品ページを回遊してもらう方式ではないため、顧客に対するニーズ喚起がシンプルになる。よってゴールデンルートも見出しやすくなる。

「LP型」と「総合ショップ型」の比較

飯尾氏は「成長不振のD2Cは、ECサイト構築をLP型にするのか総合ショップ型にするのかの選択が間違っているケースが多い」と言う。一体どういう意味なのだろうか。

具体的には、少SKU・高単価商材のD2CにはLP型が適しているという。美容商材や比較的高単価な家電商材などが該当するケースが多いが、この場合はいわゆる“ヒーロー商品”を軸にサイトを設計していく。何より、少数のSKUで売り上げを最大化しなければならないため、定期購入やまとめ買いなど、アップセルにつながる販売技法をECサイトへ積極的に組み込むべきだという。

一方、SKUが多いD2CはLP型にこだわる必要はなく、最初から総合ショップ型でサイトを構築すべきだと語る。たとえばSKUが多いアパレルD2Cであれば、商品をコーディネートしてセット売りできるような、クロスセルの機能が多い方が売り上げアップに直結する

少SKU/多SKUに適した商材や特徴

D2Cが見るべき指標はこれだ

顧客データ・購買データへのアクセスのしやすさがD2Cビジネスの魅力ではあるが、実際にそのデータを活用できているかはまた別の話。データが溜まらない、適切な指標が見つけられないといった声が多くあがる。そこで飯尾氏は、「売れるD2C」で活用が多い指標・データとして以下の項目をあげた。

「売れるD2C」が活用する指標・データ

新規顧客獲得と購入時のアップセル/クロスセルのために注目すべき指標・データ

▼獲得パフォーマンス指標

  • 「媒体×クリエイティブ×LP×オファー」別のCPA(「ゴールデンルート」単位のCPA)
  • 広告運用者別CPA
  • LPコンバージョン率
  • チャット型フォーム起動率
  • チャット型フォームコンバージョン率
  • 離脱防止ポップアップ経由コンバージョン
  • 流入経路別購入比率、CPA

▼サイトパフォーマンス指標

  • セッション数
  • UU数
  • オーガニックCVR(ブランドサイトCVR)

LTV最大化のために注目すべき指標・データ

  • チャット型フォーム内アップセル率
  • サンクスページアップセル/クロスセル率
  • F2、 F3転換率
  • F2購入リードタイム
  • 新規顧客、既存顧客比率
  • 年間継続購入率、年間購入回数
  • 購入あたり単価
  • ユニットエコノミクス(顧客あたりLTV-CPA)
  • 顧客獲得経路別(媒体×クリエイティブ×LP×オファー)ユニットエコノミクス
  • 決済手段別ユニットエコノミクス
  • CRM施策あたりROI
  • 顧客アンケートリサーチデータ
  • サブスクリプション解約理由(商品起因・サービス起因)

これらの指標は、SUPER STUDIOの自社D2Cブランドでも活用されているという。飯尾氏も「PDCAを回すにあたってこのあたりの指標やデータを見ておけば不足はない」と補足し、活用を勧めている。

D2Cは競争激化。成長の鍵はLTVにあり

たとえば、モール型ECにメーカーが出店するのもD2Cの一類型である。日本国内におけるインターネット普及前から試みられたスタイルだが、モール型ECは集客から販売まですべてをモールに依存しており、顧客データの活用は進んでいなかった。

これが国内では、2018年前後の、SNSの進化期になると状況が変わってくる。デジタルマーケティングの手段が多様化し、メーカーが新規にD2Cを立ち上げても低いCPAで新規顧客を獲得できるようになった。

今後、D2Cビジネスを始めようとする企業はさらに増えていくと考えられる。その競争によって広告費は高騰し、これまでのような低CPAで顧客を獲得するのは難しくなっていくだろう。よって商品力、そして顧客データの活用によってLTVをどれだけ高められるかが、D2Cビジネスの長期的な成長の鍵だと飯尾氏は分析する。

今までのように楽に稼ぐことは不可能になるだろう。しかし、顧客への価値提供を目的にD2Cビジネスを磨いている企業にとっては、むしろ利のある時代になった。調査の結果でも、“売れるD2C”はリピート獲得で売り上げを確保していることがわかる。(飯尾氏)

「売れるD2C」の売上構成例

加えて、消費者は企業からのCRM活動を拒絶してはいない。SUPER STUDIOが実施した調査では、「ブランドやショップからのお知らせを受けたことがきっかけで商品を購入したことがあるか」という質問に対し、49.9%が「同じブランドショップから再購入したことがある」と回答した。企業からのお知らせが、商品購入の後押しとなっている傾向がうかがえる。

7割以上の事業者がMAツールを充分に活用できていない(出典:SUPER STUDIO調査)

SUPER STUDIOでは、D2CビジネスのCRM施策をより強力に支援すべく、「ecforce」と連携するMAツール「ecforce ma」を3月にリリースした。「ecforce」のカートシステムと完全連動しているため、正確な顧客情報や購入データをもとにしたCRM施策が容易に行える

また2023年末から2024年にかけて、データ分析をより手軽に行うための機能の強化を計画しているという。飯尾氏は「D2CビジネスにとってECシステムの性能・機能は事業力を左右する基盤。システムがボトルネックにならないよう、ecforceの進化・改善を続けていく」と言う。

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