山田 大樹 2015/2/12 6:00

オムニチャネルのプロジェクトは、全チャネルをまたいだ変革が必要です。前回記事(【ユーザーエクスペリエンスの統一がオムニチャネル成功への第1歩】を参照)で記載したように、さまざまなチャネルにおいて統一のユーザーエクスペリエンスを提供するためには、部門を横断した体制作りが不可欠です。オムニチャネルを進めるプロジェクトにおいては、一部署だけで進めてしまったことで導入や実施の段階でつまずいた事例も多いのが現状です。全社を巻き込んでプロジェクトを進められるか、また十分な社内体制が作れるかが、重要なポイントになります。

オムニチャネル成功には、経営トップ直轄のプロジェクトにする準備が重要ポイント

では、オムニチャネル戦略を進めていくための手順を説明します。

  1. オムニチャネル施策を進めるためのプロジェクトを起案する際、自社における内外の環境分析から、プロジェクトで具体的に取り組むテーマをまとめる
  2. 想定効果とそのためにかかる体制、コスト、期間をまとめる
  3. どのタイミングで何を実現するかの実現ステップ、マイルストンを設定したロードマップを整理する

オムニチャネルは多部門の協調によるプロジェクト推進が欠かせないため、経営トップ直轄プロジェクトとして進められるよう準備を進めましょう。

経営層向けには、プロジェクト起案内容を簡潔にまとめた“エグゼクティブサマリ”を作成します。

経営トップから、起案したプロジェクトの内容の理解を得て、トップ自身がこのプロジェクトをやり遂げるというコミットメントを取り付けましょう。そして、全社へ発表、周知してもらうように働きかけます。

足りないタッチポイントをどのように補うか想定しておくこと

実際にプロジェクトをスタートするために、社内のプロジェクト体制を作ります。各チャネルの部門、IT部門、マーケティング部門などから適切な体制を構築していきます。

プロジェクトでは、起案時に定義した施策の内容に沿って、顧客を起点にした消費行動のモデルケースを作成します。チャネルをまたいで、顧客がどのように販売商品に興味関心を持ち、購買に至るかのか、消費行動のプロセスをフローチャートにしていきます。

想定される顧客の購買行動の流れをモデル化し、どのプロセスでどのチャネルを利用するのか、チャネル別、プロセス別のタッチポイントを明らかにします。

また、モデル化で明確にしたタッチポイントと、現状提供できているタッチポイントとのギャップを明らかにすることも、オムニチャネル戦略を進めていくには重要です。

作成したモデルでは存在する顧客とのタッチポイントが現状では対応できていない部分、不十分な部分がどこなのか特定していきます。そして、足りない部分を満たすためにどのような方策があるのかを洗い出していきます。

たとえばECの場合、どのようなユーザーインターフェースや機能が必要なのかを抽出します。また、タッチポイントから発生するデータにはどのようなものがあるのか、また発生したデータはその先のどのプロセスで必要になってくるのかをまとめていきます。

各チャネルで改善するタッチポイントを特定することで、顧客とのインターフェースをどう構築するか、そのために必要な機能や役割、そこで生じるデータを明らかにしましょう。チャネル全体を通じて重点的に強化する箇所を把握し、その実現に向けてプロジェクトを進めることができるようになります。

ローンチして終わりではなく検証改善サイクルを

プロジェクトでは、各チャネルで対応が分断しないように、全体での整合性に不備が生じていないかを確認しましょう。そして、次のような準備も同時並行して進めていきます。

  • 各チャネル
  • タッチポイントをつなげたテスト
  • 従業員への教育
  • リハーサルの準備
  • サービス開始に向けたプロモーションやキャンペーン
  • 告知・販促の準備

新しいオムニチャネルの施策が完成したローンチ時期になっても、それで終わりではありません。結果をもとに検証を進めることが重要だからです。

検証のために、データの統合やタイムリーな分析は不可欠です。トライアンドエラーを繰り返す改善サイクルを社内の業務プロセスのなかに組み込みましょう。

この改善サイクルが日常業務のなかに浸透し、継続的に進化できるようになると、オムニチャネルが一過性の施策で終わらず、継続的な顧客へのロイヤリティ向上につながります。

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