ICPコンサルティング[執筆] 6/5 8:30

ECサイトの会員を増やすことは中長期的な売り上げを生む重要な施策です。会員登録したくなるEC企業側のアクションには何があるのか? 会員登録したくなるECサイトのポイントを解説します。

なぜECビジネスは会員登録が重要なのか? 心理学を利用したアプローチに学ぶ会員数を増やすための基礎

今日のお客さま:EC担当者2年目 のんちゃん

小売業で店長業務を3年経験後、本社移動になりEC担当者に。1年目はIT用語を覚えるので精一杯だったが、2年目になり上司からの期待も高まってきた。

今日のお客さま 2人目:Webデザイナー3年目 カイトくん

のんちゃんのネットショップを担当するWebデザイナー。転職組で専門学校のバイト時代から、ネットショップ畑を歩む。

常連さん:コンサルタント「コアラさん」

経営コンサルタントの国家資格「中小企業診断士」の資格を持ち、全国の企業支援やセミナーに奔走中。仕事での報酬交渉はシビアだが、ここでは日本酒1杯で相談に乗ってくれるお酒好き。

上司の壁を越えろ! 売り上げにつながるショップの特徴7つを実装する

のんちゃんカイトくん

のんさん、あの方がコアラさんですか? 経営コンサルって、ロレックスの腕時計付けて紺の縞柄のスーツ着てる系か、素足に革靴系かってイメージだったんだけど、この昭和な居酒屋に溶け込んでいるというか、なんというか……。

コアラさん

お、のんちゃん! あれ、今日はお連れさんとご一緒?

のんちゃんのんちゃん

うちのネットショップで、デザインとコーディングをやっているカイト。今年、うちの会社にジョインしてくれたエースです。

カイトくんカイトくん

エースなんて! おだてたって、今日はのんさんの奢りですよ。

コアラさん

はじめまして、カイトさん。のんちゃんは、気前がいいんだね。

カイトくんカイトくん

いや、ECサイトの会員数増やしたいから、一緒にコアラさんの話を聞いて、形にしてくれって連れてこられたんですよ。コアラさん、この前、売り上げを2倍にするためには、短期的な広告やキャンペーンもいいけど、中長期的にお客さまとつながることにも注力してはどうかって提案してくれたんですよね。ただ、のんさんは、上司のOKがなかなか出ないから、とりあえずシレっと「会員登録はこちら」ってボタンを大きく変えろ! って言うんですよ。それだけで、会員増えると思います?

コアラさん

カイトさんが疑問に思うのも仕方ないね。カイトさんだったら、会員登録が増えて売り上げにつながるようなネットショップって、どんなのを想像します?

カイトくんカイトくん

やっぱり、まず登録特典の魅力があることかなぁ。デザイン的にはボタンより、まずその特典をちゃんと訴求したいっすね。

コアラさん

さすが! まずボタンを押す前に、動機付けをちゃんとしたいですよね。会員登録したくなるECサイトの特徴としては、一般的にこんなところがあげられると私は考えています。

  • ターゲットやペルソナが明確
  • ターゲットに魅力的な会員特典が提供されている
  • 他のショップにない会員特典がある
  • サイトに会員登録のメリットが明示されている
  • ブランドとお客さまが関係性を築く仕組みがある
  • 個々に合ったコンテンツや情報が提供されている
  • 参加型のコミュニティやコンテンツが形成されている
のんちゃんのんちゃん

なるほど……。お客さんに魅力的で、かつ差別化できる会員特典がまず必要だよね。そして会員になった後にも、よりロイヤルティを高めていく仕掛けがいるってことかぁ。うちのショップにないものばかり……。

カイトくんカイトくん

そうだ、のんさん。この前、チーム有志で会員登録にフォーカスしたカスタマージャーニーを描いたじゃないですか。あのゴールをもう少し先に置いて、「売り上げにつながるまで」に変更してみません?

コアラさん

いいですねぇ。

のんちゃんのんちゃん

え、今、できてないことばかりでカスタマージャーニーマップって作れないでしょ?

コアラさん

なら、のんちゃん、一旦、実行しやすい施策を中心に仮説で作って、テストマーケティングをしてみる手はあるよ。

カイトくんカイトくん

いやぁ、何をやるにしても、根回しが面倒なんです。

コアラさん

なら、ペルソナに近い人にヒアリングして、客観的な情報を元に「カスタマージャーニーマップ」を作ってみてはどうですか? たとえば、その人が会員登録している他のお気に入りのショップやブランドについて聞いてみるんです。その結果を参考に、会員登録の増加が売り上げにつながるストーリーを作り、KPI(重要業績評価指標)や1年間の取り組むべきタスク、役割分担、スケジュールを決めて、企画書の形で提案すれば、上司も耳を傾けてくれるかもしれません

のんちゃんのんちゃん

うちの上司って、何か提案すると、事例を持ってこい、根拠はあるのか? ってすぐ言うんですよね。

コアラさん

じゃぁ、のんちゃん、社内にあるデータで根拠を何か作ったら? 売上10位までの顧客情報とそれ以下の層で会員率を比べるとか、会員と非会員で客単価や購買頻度を比較するとか……。何かできそうじゃない。で、会員登録がいかに売り上げにつながるかを訴求してみたらどうでしょう。

のんちゃんのんちゃん

それなら、Excelで15分もあればできそう!

コアラさん

それがネットショップの強みだからね。お客さまの購買行動がデータ化されているのだから、活用したいよね。

会員と売り上げを増やすための具体的なステップ

カイトくんカイトくん

のんさん、もし上司を説得できたら、何から手をつけます? コアラさん、いかんせん、うち、できてないことばかりで……。

コアラさん

カイトさん、誰だって、最初はゼロから始めるものですよ。少なくとも、のんちゃんとカイトさんのチームでは、ペルソナやそのゴールはしっかり言語化できているようですから、こんなところから着手したらどうでしょう。店長、また黒板借りますよ!

ステップ1: 魅力的な会員特典の導入
コアラさん

のんちゃん、この前飲んだ時に、マズローの話をしたのを覚えている? ペルソナにとって魅力的な会員特典が何か、とことん考えるところから始めよう。のんちゃんやカイトさんの独断と偏見はできるだけ捨てて、会員の購買履歴、行動データ、アンケート、ヒアリングの結果を根拠に考えましょう競合他社の特典を研究してもいいですね。それは市場として需要がある特典のはずですから。

カイトくんカイトくん

コアラさん、A/Bテストとかもいいですかね?

コアラさん

カイトさん、さすが妙案ですね。のんちゃんのチームは、雰囲気が良さそうだから、チームでアイデア出しをして、候補を絞ってA/Bテストを実施してはどうでしょう。特典案をランダムに表示させて、特典案ごとに会員登録者数や会員の客単価や購買頻度などを比較してみるのです。よかった方を会員制度に組み込みましょう。また、期間限定で特典案をテスト導入して効果測定をするのもよいと思います。

ステップ2: 会員登録プロセスの改善
コアラさん

ここはカイトさんの得意分野ではありませんか?

カイトくんカイトくん

そうですね、会員登録の手順はもっと簡単にしたいです。一度、会員特典に興味を持ってくれた人を離脱させちゃうのはもったいないんで、入力してもらう情報も画面遷移も少なくしたいです。あと、SNSのアカウントから連携できる機能や、購入時にチェックボタンなどのワンタップで会員登録できる仕組みも入れたいです。

のんちゃんのんちゃん

だったら、お店のレジに、会員登録のQRコードを設置したい! 今は会員登録の手順を載せたリーフレットを渡してるだけだけど、その場で店員さんに登録や使い方を教えてもらった方が簡単じゃない。

カイトくんカイトくん

それ、最高のUX(ユーザー体験)ですね!

ステップ3: 会員との関係性を深める
コアラさん

徐々に会員登録から売り上げに結びつける施策にも手をつけましょう。メルマガやSNSを活用し、会員限定のコンテンツや情報を充実させるのです。メルマガやSNSの投稿って必ず読んでくれるとも限りませんけど、「希少性の法則」ってご存知ですか? 心理学の言葉なのですが、人って、限定モノに弱いので、気に留めてもらいやすいと思います。大事なのは継続して提供すること、会員との接点を継続的に持ちましょう

のんちゃんのんちゃん

あ、「単純接触効果」ですね。「何度も見ることで好感度が上がる」っていう。

コアラさん

お、のんちゃん、よく覚えていたね。会員とブランドが関係性を深めるにはキャンペーン、クイズ、アンケートに参加してもらう、クチコミに対してレスポンスをする、フォーラムやイベントで直接交流を持つ、といった手がありますね。「私はこのブランドに自ら関わった」という経験が大事なんです。「認知的不協和」って言葉をご存知ですか?

カイトくんカイトくん

あ、聞いたことあります。人は矛盾した行動をしないようにするっていう……。

コアラさん

そうです、そうです! 「認知的不協和」は、自身の持つ認知と他の認知との間に不一致がある状態のことで、人はそれをすごく不快に思うんです。よって、自分の考え方を変えるか、行動を変えるかで矛盾を解消しようとするわけですね。「私はこのブランドに自ら関わった」という経験を重ねることで、たとえば、カイトさんのブランドと競合のブランドで服を迷った時にカイトさんのブランドを自ら選ぶようになるでしょう。

ステップ4: クチコミ施策やその制度化
コアラさん

会員の友達や知り合いっていうのは、同じような趣味嗜好を持っている可能性が高いわけです。そこで、新規会員を増やすには既存会員のクチコミを最大限に活用しましょう。アパレルではあまり「紹介制度」って聞きませんが、たとえば他に、

  • クーポンや特典、キャンペーンをSNSなどで積極的に拡散してもらうように促す
  • 会員限定でイベントやキャンペーン情報を流し、SNSや口コミで拡散してもらう
  • 招待制のイベント、キャンペーン、特典を実施(招待コードを会員のみに通知)
  • インフルエンサーマーケティングやアフィリエイトの実施

など、クチコミを発生しやすくする仕掛けは考えられますね。

カイトくんカイトくん

ほら、のんさん、「会員登録はこちら」ボタンを大きくする前に、やることがありますよ! 早速、企画書に起こしましょう! 今日は僕からコアラさんに日本酒一本つけてください!

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