「機能性表示食品」制度を目前に控え、消費者庁がいわゆる健康食品の“表示根拠”に対する監視を強めている。中でも、ダイエット効果をうたう健食への執拗な監視は2013年9月以降続く。錠剤・カプセル型の健食に限ると景品表示法に基づく措置命令のすべてがダイエット関連だ。その中で起きた6件目の措置命令。ライフサポート(本社・大阪市西区、西山幹夫社長)が、刻一刻と変化する規制環境の中で場当たり的な対応に終始してきた背景に何があったのか。

媒体依存体質か

社員も含め昔から(法令遵守の)意識がなく常習犯。やられて当然(行政関係筋)

関連法規は理解していたが、“媒体社がよいなら”というスタンスだったと思う。多くの社員が数字に責任を持つ中で、作為的ではないが数字を追いかけ、行けるところまでいこうとなってしまう(西山社長が以前在籍したテレマート時代から知る元幹部)

両社のライフサポートに対する印象は異なるが、企業としてのスタンスに対する理解は近いように思える。処分の背景に何があったか。

元幹部は広告制作に向き合う姿勢を「(自分が在籍した頃は)グレーがどこかを探るということではない。一番濃いものをつくり、そこから薄くしていく。だから広告原稿を作る時もコピーライターには薬事法の事はあまり伝えなかった。まずつくってもらい、ラジオ放送局と落としどころを探っていった」と話す。

過去には薬事法違反で社員が逮捕され不祥事は二度目。だが「是正の気持ちがないわけではない。ただ、白くすると売り上げが落ちる。今の社員や体制が維持できなくなる。それでは意味がなく、『早く過去の成功パターンに戻さないと』と考えたのではないか」(同)と推測する。自ら自浄作用を持てなかったとすれば、今回の処分の背景の一つに「媒体社依存」の体質があったのではないか。

ライフサポートと景表法を巡る動きと動向
ライフサポートと景表法を巡る動きと動向

流動的な考査、他人任せの連鎖

ラジオ放送局とスポンサーの関係は複雑で、常に流動的だ。今回の処分と併せて公表された21局のうち、掲載までに確認できた十数局全てが「より厳正な考査を」と口をそろえるが「結局、放送局の考査は市況と連動している。広告が取れないと(考査は)緩くなるし、取れればきつくなる。民放連から要請はくるが、具体的な返答はせず『しっかりやります』と返す。スポンサーが逃げるし厳しくできない」(ラジオ通販事業者)。ライフサポートと取引のあったある局では営業担当の役員が窓口となっていた事から「当時の原稿は(ラジオより考査が甘い)フリーペーパーに近い水準で受けざるを得なかった」と内情を漏らす。

局によってもスタンスは微妙に異なる。テレビ局系列の場合は、独立した考査担当者がいる場合が多いが、単営の局は人数が少なく、考査と営業を兼務するケースも少なくない。「テレビ局系列はラジオの広告収入をあてにする必要はないが、どうしても営業的な面でぎりぎりを攻めないと『それならやらない』と言われてしまうので甘くなる」(放送局A社)。放送内容も事前にチェックする必要があるが「原稿も大量でチェックが行き届かない」(放送局B社)。

今回、放送が確認できたのは21局だが、番組の制作を行っていた4局(エフエム愛知、エフエム京都、広島エフエム放送、ベイエフエム)と、供給を受ける立場だった局の立ち位置に違いもある。

建前上、他局が制作した放送であっても個別に考査を行い、問題があれば原稿の「改稿要請」を行う。それでも修正されなければ放送素材の使用を拒絶する選択肢もある。だが、「制作局が一枚噛んでいて、どの局も民放連の基準に沿って考査しているからそれほど自社でチェックしない」(放送局B社)というのが実態。担当者により考査はまちまち、互いの力関係の中で落としどころを探る状態で、他人任せの連鎖が歯止めをきかなくさせていたのかもしれない。

ライフサポートの通販サイト
ライフサポートの通販サイトイメージ

「成分」と「体験談」、免罪符にならず

市場の規制環境に対する認識も広告の適正化を遅らせていた可能性がある。

考査のポイントとして多くの局で一致したのが、健食では表示根拠の資料提出を求めていたこと。前出の元幹部も「商品の企画会議ではいつも(根拠は)大丈夫だよね。という話は出ていた。きちんと確認するスタンスは今も変わっていないはず」と話す。

ただ、その内容が問題だ。ここ最近、ダイエット関連で処分を受けた企業の多くで一致するのが、「成分情報」と「体験者の声」を拠り所としていたこと。だが、これらの根拠は新たな機能性表示制度で求められるレベルを考えてもあまりに貧弱だ。いずれも処分の中で根拠とは認められていない。

「今回、商品だけで痩せる表記をしていたと言われているが、『食事制限と適切な運動』というのは必ず絡めた。それでも優良誤認とされた」(放送局C社)といった声も聞かれた。だが、総合的な印象から判断する景表法で、こうした打消し表示は必ずしも免罪符とはならない

一方、今後、考査の厳格化を図る点として「(原稿の内容の問題点として)『個人差はありますが』という表現がひっかかる。体験談があるということでなし崩し的に(表現がオーバーになってきたが)痩せたということであれば『誰が』というデータをきちんと見せてもらう」(放送局A社)、「『ほぼ全員が成功』といった表現があるが、成功しない場合もあるし、“体験者としてでてくる『Kさん』っていったい誰なの”というのは止めようという方向性にある。想像で勝手に作れてしまうわけだから」(放送局B社)などの声が聞かれた。

◇◇◇

前出の行政関係筋からは「今は謝れば済んでしまうが課徴金制度が導入されたら今までのような認識ではいかない」という指摘もある。

食品の新たな機能性表示制度を控え、自らの表示責任を果たしつつ、いかにして期待される健康食品市場拡大の波に乗るか。今一度、「自己責任」を前提に行う表示の重さを考えていく必要がありそうだ。

【措置命令の概要】4粒で「プール150往復」

ライフサポートでは13年4月以降、「快適ラジオショッピング」の名称で白インゲン豆由来成分を含む健食「キャルッツ1000」を展開。景表法の優良誤認を指摘された放送では、「脂肪になる前にほとんどなかった事に」「カロリー制限も激しい運動もなしで」などと表示していた。

その機能は“4粒で炭水化物1000キロカロリーをカット”するもの。運動量にすると「水泳なら25メートルプールを150往復」相当とし、運動や食事制限なく痩せられるかのような表示と判断された。不実証広告規制により提出した資料は成分情報や体験者の声。裏付けと認められなかった。

ライフサポートの売上高(13年6月期)は約121億6500万円。「キャルッツ―」は13年4月から今年1月まで6200セット(1セット3袋)を販売しており、約5500万円を売り上げていた(商品の売上総額は2億2000万円)。

消費者庁がラジオ広告のみで処分を行うのは初めて。広告規制の対象を「何人も」とする健康増進法の観点から日本民間放送連盟を通じて媒体社に広告の「厳正な考査」と「適正化に向けた取り組み」を要請している。

民放連は会員への通知に加え、今後「放送基準審議会」さらなる対応の必要性を検討。また、日本通信販売協会は「(会員であり)厳正な処分をせざるを得ない」とした。行政処分は「資格停止(3カ月~1年)」相当。ライフサポートの社員がかつて薬事法違反で逮捕された際は、資格停止6カ月の処分を行った。

【ラジオ通販市場への影響は】媒体への締めつけ強化か

「ついにきたかという感じ」。ある業界関係者は、今回の措置命令の印象をこう話す。消費者庁がラジオ広告に踏み込んできたことだ。

健康食品を巡る措置命令の変遷をみると2013年のモイストに対する処分以降、消費者庁からより詳細な「媒体社情報」が開示されるようになっている。モイスト、コマースゲートの時は同封チラシやフリーペーパーの発行元、プライム・ワンでは掲載雑誌が開示されている。通販コンサルを行うある会社は、「表現はフリーペーパーが最も自由。折込チラシは販売店により考査なく持ち込めるが基本は各自治体にある関連協会の考査を受ける。同封チラシは、カタログ発行元がイメージを重視するためチラシより厳しい。ラジオは局によるが、それ以上に厳しい印象はある」と話す。

収録番組ならまだしも、パーソナリティとライブで掛け合う「生コマーシャル」となると、表現が過剰になる場合もある。制作を行っていたある放送局では「健食関連はとくに『生コマ』は怖いので常に録音して(表現を)管理していた」という。物証を確認しづらいため、ほかの媒体より不当表示認定のハードルが高いが、消費者庁では、これら収録番組の物証を集め認定に至った。

局側には「公表を受けていない中にも放送局でいくつか流しているところはある。(事前に放送内容の提出に)協力した21局が公表され、協力しないところは何のお咎めもないのは不公平感がある」という声もある。

とはいえ、消費者庁の考えは「(行政が)監視できるのは氷山の一角。放送局はもともと考査基準をもっており、そうした形で工夫してもらうことが未然に誤認を防ぐことにつながる」というもの。「何人も」を対象にする健康増進法を背景に媒体社への締め付けは今後より厳しくなりそうだ

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ライフサポートの業績や、健食のラジオ通販市場への影響はどうか。

今回、13年末の時点で全ての局が措置命令を受けた健食の放送を止め、以降、とくにダイエット関連は扱っていない。ダイエットは若年層の聴取率が高いFM局が主流だが、今回の処分で市場の縮小が加速しそうだ。

ただ、ライフサポートの主力事業はカニなど食品で、不当表示期間(約8カ月)の売り上げは年間売上高のわずか0.3%(3500万円)。健食全体でも同数%であることから業績への直接的な打撃はない。

処分を受け、ある局は「取引のあった在坂のAM局の担当者が今後取引しないことを伝えにいったと聞いた。スポーツ紙も発行する新聞社の系列局なので、(出稿していた)スポーツ紙などに影響があるのでは」と話す。ただ、確認できたFM十数局全てが13年末に健食以外の商品への差し替え、取引も継続。ラジオ通販事業者も「放送枠の放出は限定的」としている。

◇◇◇

西山社長を知る元幹部は、「(西山社長の人柄は)仕事にはとても厳しいが、それはきちんとしているという意味で。人格的にしっかりした人。テレマートが経営破たんしてそれまでいい顔をしていた取引先が手のひらを返した。ライフサポート立ち上げの時もとても苦労し、せっかく軌道に乗り始めた矢先で心配している」と話す。とはいえ、08年、社員の薬事法違反を受け「コンプライアンス第一主義の経営」を宣言した上での今回の処分。「健食を扱う専門店ではなく、認識が甘かった」(ライフサポート)というが、三度目の正直となるだろうか。

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