「経営コンサルタント」の倒産が過去最多、「最近のコンサルは差別化と専門性が求められている」

集計開始以降、2024年度は経営コンサルタントの倒産が過去最多となった。東京商工リサーチは、今後もコンサル業界の生き残り競争が加速していくと指摘している

大嶋 喜子[執筆]

4月11日 7:30

東京商工リサーチの調査によると、2024年における経営コンサルタント業の倒産は前年比3.4%増の151件となり、2005年の集計開始以降で過去最多を記録した。

東京商工リサーチは経営コンサルタントについて、近年は差別化と専門性が求められていると指摘。事業再生やDX支援、M&Aなど、専門領域の分散化と顧客ニーズが高度化していることが背景にあるという。

2024年の倒産数はこれまで最も多かった2023年の146件を上回った。「資料集めや情報の整理などはAIに取って代わられ、単純な手続き代行や財務指導など、過去の経験則だけで生き抜くことは難しいようだ」(東京商工リサーチ)

経営コンサルタント業の倒産件数と負債総額(年度推移/速報値)
経営コンサルタント業の倒産件数と負債総額(年度推移/速報値)

経営コンサルタントの倒産の原因は、販売不振や赤字累積などの「不況型倒産」が100件(構成比66.2%)で7割近くを占めた。

形態別では、「破産」が145件(構成比96.0%)と大半を占めている。「特別清算」5件と合わせた消滅型は150件(同99.3%)。一方、再建型の民事再生は1件にとどまった。東京商工リサーチは「コンサルティング会社は経営悪化や倒産により信用を失墜すると、再建が非常に困難であることを示している」と考察している。

資本金別では、1億円未満が最多の149件(同98.6%)。従業員数別では5人以下の小規模事業者が142件(同94.0%)だった。東京商工リサーチは「コンサルティング業界は1人でも、少ない開業資金でもスタートでき、参入障壁は低い」としつつ、「人脈が途切れたり、継続的な案件取引が突然なくなるリスクもあり、中小コンサルタントの足元はぜい弱な企業が少なくない」と解説している。

2024年度のコンサルタントの倒産による負債総額は約131億円。このうち、負債額1億円以上は22件(構成比14.5%)。平均負債額は約8600万円だった。小規模な倒産が多くを占めた。

調査結果を踏まえて、東京商工リサーチは次のように示唆している。

経営コンサルタント業の実績は、コンサルタントの経験や人柄、人脈などで大きく左右される。属人的な性質が強い分野であり、どれだけ優秀な人材を確保し、顧客に高付加価値を提供できるかが問われる。

高度化する顧客ニーズへの対応には、それ以上の専門的な知識が必要になる。このため、コンサル業界の生き残り競争が加速し、特色を打ち出せないコンサルの淘汰(とうた)が続く可能性が高い。

この記事のキーワード

この記事をシェアしてほしいタヌ!

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る

企画広告も役立つ情報バッチリ! Sponsored

「声のする方に、進化する。」会社全体最適を目標とするワークマンの「補完型EC」 が実践する「レビューマーケティング3.0」とは? 12月17日 7:00 「所有から利用へ」の潮流をAIで勝ち抜く。事例で学ぶレンタル・リユースビジネスの成功法則とEC構築術 12月16日 7:00 「サムソナイト」「グレゴリー」のEC改善事例。CVR改善+購入完了率が最大45%増の成果をあげたアプローチとは 11月12日 7:00 スマホゲーム「モンスト」ファンがお得にアイテムを購入できる「モンストWebショップ」はなぜ「Amazon Pay」を選んだのか。導入効果+UI/UX向上に向けた取り組みを聞いた 10月30日 7:00 アンドエスティが「3Dセキュア2.0」の超効率的運用に成功したワケ。オーソリ承認率大幅改善、売上アップにつながった不正対策アプローチとは? 10月28日 7:00 EC業界で市場価値を最大化する――「全体を見渡せる人材」になるためのキャリア設計 10月27日 7:00 転売ヤーが引き起こすEC市場の混乱に立ち向かう! Shopifyパートナー・フラッグシップが提案する最新対策 9月29日 8:00 14か月で累計売上30億円超え。 韓国のネイルブランド「ohora」の急成長を支えたEC戦略とは 9月22日 8:00 生成AI検索が変える消費者の購買行動。UGC活用でサイト流入を最大化する 9月10日 8:00 ほしい商品が見つからないイライラを解消し、CVRを向上! 検索機能強化と顧客満足度アップを実現するBtoB-ECサイト改善のポイントとは? 9月9日 7:00