検索とレコメンドで実現するEC時代の接客術

消費行動はオススメの仕方で変わる。購買につながるレコメンドの仕組みを理解しよう

商品購入につなげるオススメ・レコメンドには、顧客・商品のプロファイリング、マッチング力が必要です

山崎 徳之

2015年8月18日 8:00

ジャンルやケースごとにどういったレコメンドが良いか理解していますか? 自分がショップ店員で、顧客像からどういったものをオススメすればいいのか想像してみてください。オススメをするには「どこまで顧客を把握できているか」という顧客プロファイリング、「オススメをできる商品情報を持っているか」という商品プロファイリング、そしてそのマッチング力が必要となります。当たり前ですが、何も情報がなければユーザーに対してよいオススメはできません。せいぜい新商品や売れ筋商品くらいですよね。

経験に基づくレコメンドは、なかなか集合知からは得られない

ジャンルごとにオススメ・レコメンドの良しあしは異なります。つまりジャンルごとに把握すべきユーザーのプロファイリング情報が違ってくるということなんです。

レコメンド知識の例
レコメンド知識の例

書籍やCD・DVDの場合には商品相関が良いレコメンド(「Aを買っている人は、Bも買っている」というレコメンド)となるので、購買履歴を獲得できれば最適なレコメンドにつながります。

一方、たとえば賃貸住宅のようなジャンルでは、「Aを借りた人はBも借りる」というようなことはありません。家を借りる時点での各種情報はその都度変化します。その時の条件を把握しないと良いオススメはできないのです。

Aという駅から徒歩10分圏内で家賃が7万円以下、築年数5年以内という条件だった場合、まずはそれに適合する物件があればそれを紹介したうえで、オススメとして「各種条件を緩めるケースが良い」というユーザーもいれば、「通学や通勤の条件が同じなら駅が違ってもいい」というユーザーもいます。

駅にこだわっているのか、駅からの移動時間にこだわっているのか、それはさまざまです。

中古車なども同じことが言えます。

100万円以下で走行距離1万キロメートル以内、4ドア・セダンという条件のとき、金額が絶対条件という人もいれば、状態優先の人もいます。

ところが、このように「目に見える条件だけではわからない」情報は、ユーザーから取得しない限りはわかりません

つまり、良いレコメンドのためにはそういったユーザーの背景情報を取得するインターフェースが必要になるということです。

別の例として航空券について考えてみます。

仕事で出張するためのときと、バカンスのとき、ハネムーンのときなどでは、それぞれ背景が違います。

出張の場合、ロサンゼルスの代わりにサンフランシスコというのはあり得ないですが、バカンスであればプーケットの代わりにニューヨークという選択肢すらあり得ます。

日程を変更して安くなるケースが良いオススメの場合もあれば、高くなっても直行便が良いというケースもあります。

賃貸住宅や中古車同様、背景情報を把握するというインターフェースがあることで、より良いレコメンドができるのです。

商品知識も、良いプロファイリングが重要となります。

たとえば、勤務地が丸の内であれば、下北沢を希望したユーザーに中目黒をオススメするのは良いかもしれません。

また、「ラングラー」を検索しているユーザーに「ランクル70」「ボルボのV70」をレコメンドするなど、ユーザーの背景情報に応じて商品に対する深い洞察が必要となります。

ただ、商品側のプロファイリングというのは、膨大なデータを適切に機械学習などで処理することによって得られるケースもあります。それがいわゆる集合知です。

もちろん集合知も万能ではありません。たとえばアパレルにおけるコーディネートなどは、集合知からも商品プロファイリングはできますが、ファッションに造詣の深い人間によるオススメの方が良いケースもあります

経験に基づくレコメンドというのは、なかなか集合知からは得られません

重要なのは「なにを知識としてレコメンドするのか」

このようにいろいろなケースがありますが、要約すると「なにを知識としてレコメンドするのか」ということが重要です。

  • 商品相関の場合 → ユーザーが興味を示した商品+商品と相関の高い商品という2つの情報を連結
  • 住宅の場合 → ユーザーの置かれている背景+背景にマッチする商品という組み合わせ
  • ニュース記事 → ユーザーの興味の対象+記事の内容+記事の新しさなど

本来、レコメンドというのはおおむねユーザーの置かれた背景が知識として必要になるのですが、なかには「背景をほぼ無視して興味をもった商品との相関だけでレコメンドできるジャンル」があります。そして現在、レコメンドはおおむねその程度にとどまっているということもいえるのです。

今後のECの成長や発展とともに、こうした単純なケースだけではカバーできなくなり、より高度なジャンルごとに特化したレコメンドが必要になる手前の段階であるともいえそうです。

私は今後、AI(人工知能)やディープラーニングといった、画像認識やIoTで活用を見込まれているテクノロジーが、高度なレコメンド、レコメンドというよりむしろオススメを実現するために使われていくのではと考えています

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