検索とレコメンドで実現するEC時代の接客術

購入単価&顧客単価UPを実現するためにレコメンドの仕組みを理解しよう

集合知とか協調フィルタリングと言われる「オススメ・レコメンド」について解説

山崎 徳之

2015年7月27日 9:00

レコメンドがEC業界で注目されたのは「Amazon」がきっかけでしょう。「こんな知らない商品で、かつ、好きそうな物をよく推薦してきたものだ」というインパクトが強かったためです。当時の「Amazon」は、主に本やCD、DVDを販売しており、相関係数(2つの物理量の間の相関を表す量)によるレコメンドのアプローチがはまりやすい商品が多かったのですが、商材によっては向き不向きがあります。今回はECにおけるマッチングのなかでも、集合知とか協調フィルタリングと言われる「オススメ・レコメンド」について解説します。

理解しておきたいレコメンドの仕組み

まず集合知について。集合知というのは匿名の多数のユーザの意見から浮かび上がる知識のことです。

よく使われる例として、「ある瓶の中にたくさんのボールが入っていますがそれは何個でしょうか」という問題を多数の人に聞いた時、その平均を取ると、正解に近くなるというようなものがあります。

集合知は集団というものの知性に着目しているのであって、その集団を形成する個々の知性を重要視しません。

集合知という言葉から、「たくさんの知性を集めることによって生まれる」ようなイメージを持っているケースをよく見ますがこれは間違い。

たとえばTwitterである写真について「これは◯◯の風景だ」ということがわかって「集合知すごい」みたいなコメントを見ますが、これは集合知ではありません。

たくさんいるのでその意見を集約する、というのが重要であり、「たくさんいるからそのなかの誰かはわかる」というのは集合知ではないのです。

「協調フィルタリング」は、購買履歴などから似たユーザを探して、似たユーザの嗜好に基づきオススメをするものです。ユーザ間の類似を根拠にしています。

このユーザ間の類似度を計算するのには、いろいろな計算手法があります。代表的なのはピアソンの積率相関係数(一般的な相関関数のことで、「変数」と「変数」の類似度を測るための「-1から1」までの値をとる指標)などでしょう。

ただ協調フィルタリングは概念の名前であって、計算手法ではありません。協調フィルタリングというのは「ユーザの類似度」であり、「アイテムの類似度」ではない。一方で、相関係数ではない手法でユーザの類似度を計算する方法もあります。

レコメンドとしては、アイテムの類似度をベースにしているモノの方が多い(実際にそのほうが良いレコメンドになることも多い)のですが、それもひっくるめて「協調フィルタリング」と呼んでいるケースが目立っています。

アマゾンのレコメンド
レコメンドがEC業界で注目されたのは「Amazon」がきっかけ(画像は編集部がキャプチャ)

レコメンドは、一般的な相関関数によるアプローチは適切ではないケースもある

アイテムの類似度の場合は、「アソシエーション分析」「バスケット解析」といった呼び方をします。

いわゆる「Aを買っている人は、Bも買っている」というレコメンドは、協調フィルタリングよりもアソシエーション分析によって実現されていることが多いでしょう。

実際、ECサイトにおけるレコメンドは、漠然としたイメージで「(ユーザーがある商品を)知ったら買いそうな商品を紹介したい」というものが多い。

具体的にそのアプローチする手法は、「協調フィルタリング」「アソシエーション分析」を使い、計算方法として「相関係数」などを活用していると考えられます。

つまり、ECのレコメンドの多くは、実は相関係数の計算のことなのです。ただレコメンドとして何が良いかは、ジャンルに左右されることが多いというポイントがあります。

たとえば、書籍や漫画、映画などはこの相関係数による計算が実に効率的に機能します。買う本や漫画の趣味というのはかなり似通っていることが多いというのは想像しやすいですよね。

映画やドラマをオンデマンドで視聴できる「Netflix」はレコメンドによる視聴が70%を超えるという話があります。

レコメンドがなかったら、その70%がすべて無くなるのかといえば、そんなことはないでしょう。しかし、映画やドラマについては、相関によるレコメンドが有効に作用しやすいジャンルであると言えます。

一方、食品や衣料品の場合、相関係数によるアプローチがダメということはないのですが、本や映画ほど強力な武器にはなりません

日用品においては、流行とか値下げなどの要素もかなり重要となります。たとえば、スーパーで「大根を買った人にはサンマをオススメしよう」というのも意味がありますが、今日の特売品をオススメするというのもかなり重要なアプローチとなります。

特売品をオススメするというのは、パーソナライズされていない(いわゆる万人向け)のオススメのように思えますが、特売品をオススメするかどうかをパーソナライズするというのは有効な手法ではあります。

アパレルでも、ある商品は「発売と同時にオススメした方が良い人」もいれば、「人気アイテムになってからオススメした方が良い人」もいることでしょう。

次回はこのジャンルごとにどういったオススメ・レコメンドが有効かについて掘り下げて考えてみます。

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