法令違反にならないために知っておくべき広告の定義とルール。
健康食品や化粧品を販売するにあたり、売り上げを左右するといっても過言ではない広告媒体。これらは多岐にわたります。テレビ、Web、新聞、折込チラシ、雑誌、店頭で見せるPOPやリーフレット、そして特定顧客にしか配布しないクローズドなもの……。それぞれコンプライアンスの差異はあるのでしょうか。
広告であれば、コンプライアンスのレベルに差異はない
広告には定義があります。
「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」
厚生省医薬安全局監視指導課長通知(平成10年9月29日 医薬監第148号)
- 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
- 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
- 一般人が認知できる状態であること
※健康食品の場合には、「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果に関する 虚偽誇大広告等の禁止及び公告等適正化のための監視指導などに関する指針(ガイドライン)に係わる留意事項について」に上記と同じものが広告の定義として記されています(この場合には2の「特定医薬品等」が「特定食品等」となります)。
簡単に説明すると、上記の3要素を満たすものが「広告」とされます。そのため、広告である以上、薬機法などのルールに抵触しないようにする義務が生じます。
実は、「クローズドなツール」は公の媒体ではないのだから、多少ルールに抵触しても許される……と思われているケースが多いようです。
確かに、「クローズドなツール」というものは“特定のお客さま”のもとへしか配布されないもの。公になる可能性が一般メディアなどに比べ低いため、行政の目に入りにくいということは言えるでしょう。
また、“クローズドだから”という理由で、上記広告の定義の中にある「3. 一般人が認知できる状態であること」を満たさないと考えられてしまいがち。実際は「クローズドなツール」であっても、「一般人が認知できる状態である」とされています。そのため、上記3要件を満たす「広告」と解釈されます。
広告には公開レベルでの基準に差異は設定されていません。オープンであろうとクローズドであろうと、メディアや媒体手法を問わず、薬機法などの厳しい基準に則る必要があります。
商環境上、医薬品的効能効果に触れる内容の資料を製造業者が販売業者に渡すことがあるでしょう。業者間のやり取りであったとしても、資料の存在自体が不当である、という見方はもちろんあります。
ただ、もっと重要なのは製造業者からのその資料をそのまま、販売業者が顧客への販売に使用すると、規制対象広告になるということ。表現によっては違法広告となりますので、念頭に置いておいた方が良いです。
お客側が広告と判断したらその時点で規制対象広告になる
2006年年末の「東京都健康食品取扱事業者のための講習会」付近から、従来の“3要素を満たすものが「広告」”という考え方に修正されています。仮に、表向きは3要素を満たさず「広告ではない」と言える手法が存在したとしても、お客側が広告と判断したらその時点で規制対象広告になると説明されています。
また、店頭の販売ツールも同様です。コンプライアンスレベルに差異はありません。
たとえば、商品名、商品画像、販売元などは記載していなくても、商品の成分について医薬品的効能効果を標ぼうする資料を、商品付近に配置したりするケースがあるでしょう。また、お客が購入する製品に合わせて、医薬品的効能効果を標ぼうする資料を渡すという方法もあります。
ありがちな方法ですが、これら一連の行為は医薬品的効能効果を暗示させているということから、全て不可です。
Webやチラシなど、不特定多数の人が目にする機会が多いものに比べ、「クローズドなツール」と同じように店頭POPや資料は、目に付きにくいものと言えるでしょう。しかし、薬局などの場合、保健所の立ち入りや試買調査がありますので、その際に指導されるケースは、珍しいことではないと言われています。
実際問題、ルールが遵守されているとは言い切れない微妙な部分なのかもしれませんが、ルールで決められている以上、指摘が入ってしまった場合には「知らなかった」「他の企業もやっていたから」は通用しません。 今一度、広告としての定義を社内で見直してみると良いでしょう。