内山 美枝子 2016/8/8 7:00
この記事は『スマホ白書 2016』(インプレスR&D 刊)の一部を特別に公開しているものです

コミュニケーションからビジネス、娯楽まで生活の必需となったスマホアプリ市場は時代の流行を反映し、人気のカテゴリは群雄割拠、激しい競争が繰り広げられている。

岡田 雄伸(FULLER株式会社 セールスマネージャー)

2015年に最も利用されたアプリ

 2015年のスマートフォンアプリ市場では、コミュニケーション以外のニュースアプリ、CtoC、Fintech、定額制のストリーミングアプリ、デーティングアプリなど、様々なジャンルが大きな盛り上がりを見せた。

 これまでPCで利用されてきた生活に密着したコンテンツをディベロッパーがよりリッチなものとしてGoogle PlayやApp Storeで提供しはじめたことにより、スマートフォンが必需品となり、生活がより豊かになった方も少なくないのではないだろうか。

 弊社FULLERは調査サービスApp Apeを運用している。日本におけるアプリ利用の利用率や男女比、利用時間帯などを推計する調査サービスを展開しており、そのデータから今回の分析を行った。

 まず最も利用されたアプリランキングをご覧いただこう(資料2-2-13左表)。1位はやはり、生活の必需ツールとなっているLINEだ。コミュニケーションツールの代名詞となるほど利用されており、2015年も圧倒的な利用率をみせた。

注:2015年1月〜12月の各月MAUを合算したランキング。通信キャリア系のアプリはプリインストール率が高いため、ランキングから除外。成長率とは、2015年1月(100%)と2015年12月を比較した際の比率
資料2-2-13 2015年利用アプリ&カテゴリ別ランキング
出典:App Ape Analytics 2015年データ

 SNSとして非常に注目されているFacebook、Twitterだが、Facebookは6位、Twitterは8位となった。国内ではFacebookよりもTwitterのほうがユーザーが多いイメージが強いが、弊社の調べでは月間アクティブユーザー(Monthly Active User。以下、MAU)ベースではFacebookが堅調に数を伸ばしている。

 ただし、Twitterも2015年1月と比較すると同年12月は伸びており、成長率ではFacebookを超えている。二大SNSであるFacebookとTwitterの2016年のユーザー動向も非常に楽しみだ。

 さらに注目したいのが12位のクックパッド。レシピ投稿・検索アプリとしては有名だが、ランキングで相対的に比較するとYahoo! Japanアプリと競うほどのMAUを保持しており、ポテンシャルを非常に強く感じる。

 ゲームでは『パズル&ドラゴンズ』がランクイン。『パズル&ドラゴンズ』が14位、『モンスターストライク』が16位となっている。ただし、MAUでみると『パズル&ドラゴンズ』は減少し、『モンスターストライク』は維持しながら数を重ねている。

 そして、25位のInstagram。若年層の活用事例が多く見られ、各企業のマーケティング担当者にとってもInstagramは無視できない存在となっていただろう。2015年の前年からの成長率も150%と、MAUランキング全体でもトップクラスだ。

この1年で急成長したジャンルとアプリ:流行が如実に反映するアプリカテゴリにみるトレンド

 アプリには様々なジャンルがあり、そのカテゴリ別の成長率は時代を映しているといっても過言ではない。オンデマンド系の動画サービスや動画投稿サービスが伸びて注目される一方、自撮り文化が生まれ、写真投稿アプリのInstagramなどが成長している。また、CtoCのフリマアプリやショッピングアプリの急成長など、特定のカテゴリの成長はこういった世の中のトレンドに大きく左右される。カテゴリ別の利用率ランキングと成長率は資料2-2-13の右表にまとめたのでご覧いただきたい。

 注目したいのはゲームももちろんだが、「メディア&動画」カテゴリだ(資料2-2-14左上)。このカテゴリ内で特に成長しているアプリはniconico(ニコニコ動画)で、母数もさることながら、137%の高成長率を続けている。さらに同カテゴリ内では、TV・ラジオ視聴系もニーズが高く、radikoなどのアプリも母数が多い。

 「ソーシャル」カテゴリでは、主にFacebookやTwitter、Instagramの成長が目立つ(資料2-2-14右上)。

メディア&動画/ソーシャル/デーティングアプリ/ライフスタイル
資料2-2-14 カテゴリ内利用ランキング
出典:App Ape Analytics 2015年データ

 「デーティング」アプリも成長が著しい(資料2-2-14左下)。pairs(ペアーズ)、YYC、タップル誕生などが特に存在感を出している。特にタップル誕生は成長率が250%を超え、マーケットのポテンシャルを感じさせる。知名度の高いpairsも安定的に成長を重ねている。

 「ライフスタイル」カテゴリにはO2O系、レシピ系、ツール系、ショッピング系といった生活の利便性を向上させるアプリが集まっているが、なかでもO2O系アプリの成長率が著しい(資料2-2-14右下)。実店舗への集客や割引など、ユーザーにも利用価値の高い機能が多く、各企業の注力具合がうかがえる。

 さらに、O2O系のみで3アプリを比較し、大手レストランチェーン「ガスト」と回転寿し「スシロー」、ファストフード「モスバーガー」の成長率をまとめた(資料2-2-15)。

ガストアプリ203.5%/スシロー1104.7%/モスバーガー107.4%
資料2-2-15 O2O利用動向
出典:App Ape Analytics 2015年データ

実店舗系アプリの利用動向に関して2016年はO2O系アプリの群雄割拠の年となるか

 前述の通り、O2O系アプリの成長が外食産業をさらに盛り上げていく可能性が高い。またO2O系アプリのほか、オムニチャネル系アプリも存在する。

 O2Oとは「オンライン to オフライン」つまり、オンライン上からオフラインへ送客する手法である。具体例としては、スマホで発行したクーポンを実店舗で使用する、アプリ上でお店の予約をする、などがある。前段で紹介した「ガスト」や「スシロー」のアプリはO2Oに含まれる。

 それに対して、オムニチャネルとはオンライン/オフライン問わず、どこでも顧客が購買できる手法で、主な活用事例としてはUNIQLOやMUJI Passportなど、アプリ上で購買してもよいし、アプリで予約し店舗で品物を引き取るなど、店舗に行く動機も作れることが特徴である。

 O2Oアプリとオムニチャネルアプリの成長率を比較してみよう(資料2-2-16)。O2O系はすでに母数がある状態からさらに成長している。特に「ガスト」「スシロー」の成長率は非常に高い。「スシロー」は2015年3月頃から火がついたようにユーザー数が増え、マーケティングが順調に成功していることがわかる。

O2Oアプリ/オムニチャネルアプリランキング 成長率とは、2015年1月(100%)と2015年12月を比較した際の比率
資料2-2-16 O2Oとオムニチャンネルの利用ランキング
出典:App Ape Analytics 2015年データ

 一方、オムニチャネル系はアプリユーザーが増加している。オムニチャネルという語自体は、2015年当初からマーケターには浸透していたが、2016年に入ってからはより活発に利用され、浸透していくだろう。

平均所持数やカテゴリからみる日本のゲーム市場:パズルは頭打ち? 伸びているのは強豪ひしめき合うロールプレイングカテゴリと意外なあのカテゴリ

 アプリゲームのTVCMを見ない日は皆無といってよいほど、アプリゲームのプロモーションは一般的になった。ゲームは幅広い年齢層に提供され、男女問わず様々なゲームが日々プレイされている。

 FULLERでは1人あたりゲーム所持数を分析した(資料2-2-17)。弊社の調査データは、ユーザーが月間に3日以上起動するゲームアプリの数を調べたものをゲーム所持数としたものである。そのデータから平均を計算すると、日本では「1人あたり3.24個」のゲームアプリを所持していることとなった。つまり、ゲームアプリの成功とはこの「3.24個」の1個を取るという椅子取りゲームに勝つことを意味する。

注:n=60,103 アプリを3日以上起動していないユーザーも含む
資料2-2-17 ゲームアプリ所持数
出典:App Ape Analytics 2015年データ

 そこで、どのカテゴリにおいて勝率が高いか、需要があり伸びているカテゴリはどれか、などが非常に重要になってくる。当然、右肩下がりのカテゴリに挑むよりも、ユーザーに需要が出ている市況に参戦したほうが勝率は高くなる。

 今回はゲームカテゴリをさらに深堀し、どのカテゴリが伸びているかを調査した。資料2-2-18をご覧いただきたい。

成長率とは、2015年1月(100%)と2015年12月を比較した際の比率
資料2-2-18 ゲームアプリカテゴリ別ランキング
出典:App Ape Analytics 2015年データ

 1位はやはり不動の「パズル」カテゴリ。同カテゴリにはLINE系の『ツムツム』、『ポコポコ』、ガンホーの『パズル&ドラゴンズ』、キングの『キャンディークラッシュ』などが入っている。母数も「ロールプレイング」カテゴリの3倍のユーザー数が存在している。ただし、2015年間を通してみると、母数がそもそも多いためか、このカテゴリは頭打ちでまさに椅子取りゲームの状況という印象が強い。

 4位にランクインしたのは「ロールプレイング」。コロプラの『白猫プロジェクト』、『黒猫のウィズ』やスクウェア・エニックスの『星のドラゴンクエスト』、Cygamesの『グランブルーファンタジー』などの家庭用ゲーム企業からソーシャルゲーム系企業の多くが参入しているカテゴリだ。母数も多く、かつ成長率も非常に高い。このカテゴリが他のカテゴリと大きく違うのは、新タイトルが既存の上位タイトルにユーザー数で追いつくことも多い点だ。チャンスも多いが消耗も早いカテゴリといえる。カテゴリそのものは全体として順調に伸びているので、ユーザーのニーズが高いことがわかる。

 意外に思われるのは5位の「シミュレーション」だろうか。マーベラスのディズニーの牧場ゲーム『マジックキャッスルドリームアイランド』やジークレストの『夢王国と眠れる100人の王子様』、Happy Elementsの『あんさんぶるスターズ!』などが上位にランクインしている。内訳としては、女性向けシミュレーションとカジュアルな育成ゲームが多い。特に女性向けシミュレーションは売り上げランキングでもたびたび目にする。「シミュレーション」カテゴリは「ロールプレイング」の母数まではいかないものの、ゲームカテゴリ内で成長率では2015年のトップに立った。

 今後は、売り上げ、ユーザー数ともに女性向けシミュレーションが躍進する可能性は多いにあるだろう。

この続きは『スマホ白書2016』

スマホ白書2016

 

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