Web接客よりも自然にメリット訴求ができる「トリガーメール」を知っていますか?
カゴ落ちメールは、いわゆる「トリガーメール」の一種だが、今回はカゴ落ちメール以外のトリガーメールにどんな種類と活用方法があるのか見てみよう。特に今から注目しておきたいのが「ブラウザ放棄メール」と「モーダルポップアップ」だ。この2つはカゴ落ちメールと同様、比較的新しい施策で今後利用が広がる可能性が高いので詳しく説明したい。
接客としてのトリガーメール
「トリガーメール」とは、ユーザーの何らかの行動や変化をきっかけ(トリガー)として送信するメールのこと。ユーザーの行動を細かく追い、それにうまく反応することで成果を上げられるので注目されており、さまざまなシーンで活用されてきた。
この連載の第3回で述べたように、ポイントは消費者の行動をリアルタイムでつかみ素早く反応する「タイムリー性」、消費者の状態に合わせて最適な接客をする「One to One性」だ。顧客の視点でその2つをうまく実現すれば、予想以上の成果を上げられる。
カゴ落ちメール以外のトリガーメールには、どのようなものがあるか見てみよう。
[1]ウェルカムメール
会員登録の完了をトリガーとして、登録の御礼やサイトの使い方、おすすめキャンペーンなどを案内する。海外を始めMA(マーケティングオートメーション)の活用で、ウェルカムメールは1本だけでなく、ステップメールとして送るサイトも増えてきている。
[2]ウィッシュリストメール
ウィッシュリスト(お気に入り)に入れたままの商品をリマインド訴求する。「在庫僅少」や「値下げ」などの情報を付加して訴求する場合もある。
[3]再入荷メール
在庫切れ商品についてユーザーが再入荷の通知を希望していた場合、再入荷を通知する。
[4]再購入メール
消耗品などを対象に、購入から一定期間経過し、再購入するタイミングで同じ商品を訴求する。
[5]アンケートメール
購入後に商品レビューの投稿を促したり、サイトに関するアンケートを依頼したりする。
[6]ポイントメール
新たにポイントが付与されたタイミングや、ポイントの使用期限が近づいたタイミングでお知らせする。
[7]記念日メール
ユーザーの誕生日やあらかじめ登録した記念日をリマインドする。
[8]ブラウザ放棄メール
商品ページを見たが購入せず離脱したユーザーに対して、サイト訪問の御礼や閲覧商品の訴求を行う。
[9]モーダルポップアップ
ユーザーが離脱しそうになったタイミングで、メールアドレスの入力フォームをポップアップ形式で表示させる。メールアドレスを入力すると閲覧していた商品などがリアルタイムで送信される。入力時にクーポンなどのオファーが提示される場合もある。
こうしたトリガーメールは、会員登録時に御礼をしたり、サイトの使い方やキャンペーンを案内したり、商品をリマインドしたり……これは一種の接客とは言えないだろうか?
最近、さまざまなタイプの「ウェブ接客」が流行っているが、それよりももう少しリアル店舗の接客に近い、もっと自然な感じのする接客だ。自然な感じでユーザーにメリットを与える接客を行ってきたわけだから、トリガーメールが一定以上の成果を上げてきたこともうなずける。そこにトリガーメールが注目されてくる要因があり、一括送信のメールとは根本的に違う部分でもある。
カゴ落ちメールと合わせて配信すべき「ブラウザ放棄メール」とは?
「ブラウザ放棄メール」は、商品ページを見たけれど結局は購入せずに去って行ったユーザーに対して、何らかのアクションを起こすこと。ブラウザ放棄はリアル店舗で言えば一度手に取った商品を、また棚に戻すようなものだ。
リアル店舗ではその商品に興味があることがその場で分かるので、「他の色もありますよ!」「それは先週入荷したばかりでよく売れているんです」などと声がけができるが、ECサイトではそれができない。そのため、ブラウザ放棄メールが有効な「接客」になる。店でもECサイトでも同じだが、「どんな商品に興味があるか?」というのは接客において一番重要な情報だ。
前回までのテーマだった「カゴ落ちメール」でももちろんユーザーの興味のある商品が特定できるが、「その商品に興味はあるけれどカートに入れるには至らなかった」多くのユーザーを逃してしまっている。それをもう少し早い段階で捉えて、その段階で接客しておこうというのがブラウザ放棄メールの着想だ。結構大胆な施策と思われがちだが、きちんと効果が出てきている。
以下の数値は、国内最大手のジーンズメーカーであるエドウインが運営する「エドウイン公式オンラインショップ」での結果だ。
ブラウザ放棄 | カゴ落ち1通目 | カゴ落ち2通目 | |
開封率 | 43.4% | 47.7% | 36.0% |
クリック率 | 11.5% | 22.0% | 18.0% |
完了率(click to) | 9.2% | 25.3% | 17.3% |
ROAS | 1,246% | 4,152% | 2,475% |
ブラウザ放棄メールのROAS(Return On Advertising Spend/広告費用対効果)はカゴ落ちメールより劣るとはいえ、それでも約1,200%。売上高では3種のメールのうちで最も貢献が大きい。施策トータルのROASは1,800%以上だ。
ブラウザ放棄メール単体でも効果はあるが、このようにカゴ落ちメールを組み合わせることで施策の幅が広がり、なおかつ相互に強みと弱みを補完でき「厚み」のある施策を打つことができる。
これから普及しそうな「モーダルポップアップ」
ユーザーが離脱しそうになったタイミングで、メールアドレスの入力フォームをポップアップ形式で表示させ、閲覧していた商品などをリアルタイムで送信するのが「モーダルポップアップ」だ。
上記であげたその他のトリガーメールが既存ユーザー(会員)を対象にしているのに対して、モーダルポップアップは新規ユーザーを対象にしているところが大きく違うところ。新規会員を増やしたいサイトやゲスト購入が多いサイトなどで、より高い効果が期待できる施策と言える。
実際に気になる商品があった場合、リアル店舗では写真を撮ったり、ECサイトではメモ帳に書いたりして、忘れないようにした経験をした人は多いだろう。サイト離脱時に興味のあった商品を自分宛てにメールしておくことで、すぐにサイトに戻れるようになる。
海外では「いま登録するとすぐに10%割引の特典が受けられる」といったクーポンや値引きなどのオファーと共に、アドレス登録を促す手法もよく用いられている。
店舗で言うと、ちょうど店を出ようとしているお客さまに対して、「よろしかったら後でご覧ください」と商品カタログを渡したり、「今ならちょっとお得な情報がありますよ!」と声を掛けたりするようなものだ。これも今後、重要な接客手法の1つとなっていくだろう。
今回はさまざまなトリガーメール、中でもこれから注目の「ブラウザ放棄メール」と「モーダルポップアップ」を"接客"という観点から捉え直してみたが、いかがだっただろうか。
次回は、離脱フォローメールを実際に導入する際に発生する課題とその解決方法についてお話しをしたいと思う。