渡部 和章 2017/7/24 7:00

マーケティング施策を自動化する「マーケティング・オートメーション」(以下MA)のツールをECに活用する動きが広がっている。ただ、「MAの具体的なメリットがわかりにくい」「導入費用が高い」といった理由からMAツールの利用に二の足を踏むEC事業者も依然として少なくない。

BtoC向けMAプラットフォーム「Probance(プロバンス)」を提供する仏Probance社CEOのEmmanuel Duhesme(エマニュエル・ドゥエム)氏と、同製品の国内総代理店であるブレインパッドの東一成統括部長にインタビューを実施。「Probance」の事例を踏まえ、MAツールを活用したECの業務効率化や売上拡大を実現するポイントを聞いた。

フランスは業務の効率化、ロイヤル顧客の育成を目的にMA導入が進む

MAの普及が日本よりも進んでいると言われるフランス。Duhesme氏はフランス国内のEC事業者がMAを活用する目的について、「生産性向上のためにMAツールを活用する企業が多く、カスタマーリレーションの効率化、マーケターの業務量を減らすことができるMAツールへのニーズも高い」と説明する。

日本のEC市場と同様、フランスのEC市場は成長が続いているものの、新規参入の増加で競争は激しさを増しているという。EC市場内での競争環境が激しくなれば、顧客の奪い合い、業務量が増加する。こうしたことを背景に、業務効率化やロイヤル顧客の育成につながるMAツールに対するニーズが高まっていると言う。

たとえば、ECの販促で重要な位置を占めるメールマーケティング。日々、膨大な数のプロモーションを目的としたEメールが飛び交う中、消費者にメールを開封してもらうことは簡単ではない。メールの内容を顧客ごとにカスタマイズし、ターゲティング配信を自動化する重要性を多くの企業が認識している。(Duhesme氏)

仏Probance社CEOのEmmanuel Duhesme氏

Duhesme氏によると、フランスでは90年代からMAツールが活用され始め、今ではカスタマイズメールやカスタマイズ、パーソナライズを行うためのソリューションの重要性は広く認識されているという。

「この顧客は、この商品を買うはず」と狙いを絞ってプロモーションメールを配信する企業は増えている。ターゲティングを重視するため、必然的に1つのメールに盛り込むレコメンド商品は平均3~5個程度となる。(Duhesme氏)。

マーケティングオートメーションを導入するメリット
MAを導入するメリット

一方、日本ではMAツールを活用する企業が増えているものの、模索中の企業も多いとブレインパッド・東氏は指摘する。

MAツールを導入する日本企業の要望で最も多いのが「売り上げを伸ばしたい」というニーズ。売上向上を求めること自体に問題はないが、プロモーションメール経由での売り上げを少しでも増やそうとする意識が強いことが問題になるケースもある。MAによってせっかくパーソナライズされたメールを送っても、1通に30~40個のレコメンド商品を詰め込んでしまい、結果的にターゲティング配信の効果が薄れているケースが散見されるという。

その原因は、「MAツールを導入する目的や、MAで実現したいことが明確になっていないことにあるのではないか。現状ではMAツールを上手く使いこなせていない企業も少なくない」と指摘する。

ブレインパッドの東一成統括部長
ブレインパッドの東一成統括部長

メールの「パーソナライズ」でCVRが3倍

Duhesme氏は「Probance」を導入したフランス企業の事例を踏まえ、Eメールを例に有効なMA施策を解説した。

MAで最も重要なポイントは、「プロモーションの内容を顧客ごとにカスタマイズすること」(Duhesme氏)。

たとえば、ショッピングカートに商品を入れた状態でECサイトから離脱したユーザーに送信するリマインドメール(カゴ落ちメール)の場合、タイトルは「商品を忘れていませんか?」といった曖昧なものではなく、たとえば「(具体的なブランド名)の靴を買い忘れていますよ」とパーソナライズする。

後者のような内容のリマインドメールのコンバージョン率(CVR)は、前者と比べて約3倍に跳ね上がることがクライアントの事例から実証されているという。

ECサイトにおけるMAの仕組み
ECサイトにおけるMAの仕組み(「Probance(プロバンス)」場合の例)

また、カートに残った商品の画像をメールに組み込むことでCVRがさらに高まると説明した。

消費者は毎日、あまりにもたくさんのメールを受け取るため、曖昧なタイトルでは開封すらしない。顧客の興味を引くには、パーソナライズ化した内容のメールを送ることが重要だ。(Duhesme氏)

メルマガのタイトルや挿入画像などは、セグメントに合わせてシナリオを最適化することで業務効率を改善していくという。

パーソナライズ化したメールを配信する際のポイントとして、東氏は「自社にとって『良いお客さま』とはどんな人物かを明確化し、その顧客との関係性を深めていく視点が重要ではないか」と話す。

単純にメール1通当たりの売り上げを求めるのではなく、「顧客の継続購入の可能性やエンゲージメントなどを総合的に考慮し、ロイヤル顧客を育てていくための施策を打つことが大切」と強調した。

Emmanuel Duhesme氏と東一成統括部長
Emmanuel Duhesme氏(写真右)と東一成統括部長

「Probance」の特徴と今度

Probance社(創業は2004年)は2007年、BtoC向けMAプラットフォーム「Probance」の提供を開始。メディア企業や通販事業者を中心に国内外で100社以上の導入実績がある。

「Probance」シリーズはSaaS型のソリューション。カスタマイズの自由度が高く主に大企業が導入する「Probance Hyper Marketing(プロバンス・ハイパーマーケティング)」と、ECに特化した「Probance One(プロバンス・ワン)」がある。

ユーザーのWebトラッキング、データベース構築、プロモーションのパーソナライズと自動化、レコメンド、CRM、レポーティングといったマーケターの業務に必要な機能を実装。データの収集と管理、プロモーション、効果検証などを1つのプラットフォーム上で行う統合化システムであることが特徴だ。

機械学習の機能により、過去の購買データやWebトラッキングデータなどから「この顧客は、この商品を買う確率が高い」といったパターンを導き出す。そして、「そのパターンをプロモーションのシナリオに組み込むことで、消費者の意思決定を促していく」(東氏)と言う。

「Probance One」の仕組み(管理画面)
「Probance One」の8つのシナリオに関する管理画面

「Probance One」は8種類のキャンペーンシナリオを無償で提供しており、テンプレートにデータを流し込めば即座にシナリオを開始することが可能。キャンペーンシナリオはクライアントの成功事例を踏まえて設計されている。

細かいシナリオの作りこみが可能な「Probance Hyper Marketing」であっても新卒社員が1人で運用しているクライアントもあるほど、シンプルな操作性にも定評があるという。

「Probance Hyper Marketing」と「Probance One」の基本機能に違いはなく、今後は統合することも計画している。

Duhesme氏は「Probance」を導入するメリットとして、以下の3つをあげた。

  • 顧客1人ひとりにカスタマイズした提案を行い、コンバージョン率を改善して売り上げが伸びる
  • マーケティング業務を自動化し、事業の生産性が高まる
  • カスタマイズやプレッシャーコントロールが最適化されることで、カスタマーリレーションの品質と信頼性が向上する

そして、MAに必要な機能が統合化された「Probance」は、シンプルな操作性によってEC事業者のビジネスの成功を後押しすると強調した。

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