ネット通販でも社会貢献を――。「楽天市場」での買い物を通じ、消費者と販売企業が気軽にチャリティ企画へ参加できる新たな取り組みが2016年にスタートした。めざすは、消費者、出店者、楽天の3者が協力し、ネットでも気軽に社会貢献活動へ参加できる“EC発”の寄付文化作作り。楽天から招待を受け、編集部は熊本県に飛んだ。

熊本の子どもたちを元気づけた“EC発”のチャリティ企画

とてもおいしかった」「おうちでお母さんと一緒に作りたい」――。

熊本地震から約1年1か月がたった5月26日。給食の時間帯を迎えた熊本県阿蘇市立阿蘇小学校の教室には、子どもたちのこんな元気な声が響いた。普段、食することは難しい、ミシュラン1つ星の割烹店「新宿割烹 中嶋」の店主自らが腕を振るった料理が給食として提供されたためだ。“食の名人”の味に子どもたちは舌鼓を打ち、笑顔が絶えない時間が続いた。

給食を食べる蘇市立阿蘇小学校の児童たち
「おいし~」などと声をあげながら元気よく給食の時間を過ごした生徒たち

実はこの取り組み、「楽天市場」を利用する消費者、出店者、楽天の3者が協力して実現にこぎつけたチャリティ活動の一環。消費者は買い物を通じ獲得されるポイントの一部を寄付出店者は協賛という形で支援楽天は活動のための資金を自ら負担して実現したのがこの企画だ。

「楽天市場」に関係する三者が一体となって社会貢献活動に取り組むこのチャリティ企画、実は楽天では初めての取り組みという。

熊本で実施されたのは熊本地震復興支援企画「スーパー給食」。料理人が社会貢献活動を行う団体で、被災地を含む全国の小中学校で給食を振る舞うといった活動を行う一般社団法人超人シェフ倶楽部の取り組みを楽天が支援する形で実現した。

「新宿割烹 中嶋」の店主でもある中嶋貞治氏が、地場産の食材や郷土料理を取り入れたオリジナル献立を阿蘇学校給食センターで調理。熊本県阿蘇市立の小中学校7校に提供した。

蘇市立阿蘇小学校の児童たちと新宿割烹 中嶋の店主 中嶋貞治氏
生徒たちと給食をともにする「新宿割烹 中嶋」の店主でもある中嶋貞治氏

料理の腕を振るった中嶋氏の訪問先は、冒頭にも記載した阿蘇小学校。阿蘇市の小中学校では地震発生直後から2016年7月まで、給食センターが被災した影響で通常の学校給食の提供は停止。子供たちには簡易式の給食が提供されていたという。

楽天が「スーパー給食」を熊本で実施するチャリティ企画を立案したのは、「食べる喜びを感じてもらいたい」と考えたため。そこで2016年12月、1か月間限定で行う社会貢献活動支援の寄付プログラム「楽天チャリティー」の支援プロジェクトの1つとしてスタートした。

楽天はこれまで、「楽天IT学校」、「楽天クラッチ募金」、生物多様性保全のための取り組み「楽天の森」といった社会貢献活動を行っている。ただこうした枠組みでは、消費者側は支援するプロジェクトを選ぶことができなかった

「楽天チャリティー」の特徴は消費者が自ら支援先を選び出店者は支援プロジェクトに協賛するというのが最大の特徴。「楽天の最大の特徴である店舗と消費者の関係性をもっと生かすことができる」(楽天のECカンパニー マーケティング部 CSR課・田島朝子さん)と考えている。

「スーパー給食」など2016年12月に始まったチャリティ企画はこうした経緯を踏まえ、「楽天市場を利用する消費者や店舗が能動的にチャリティへ参加できる仕組みを考えた」(同)。

蘇市立阿蘇小学校でのスーパー給食の様子
給食の間、生徒達の会話は途絶えることがなかった

消費者、出店者、楽天の3者が参加するチャリティの仕組み

寄付プログラムは、楽天が用意した専用エントリーページに消費者が能動的に参加表明することが必要。参加した消費者はプロジェクト期間中、「楽天市場」で買い物をするたびに、一定の楽天ポイントが社会貢献プロジェクトに寄付される。

楽天市場1ポイント 賛同ショップ1ポイント あなた1ポイント→社会貢献プロジェクト
寄付プログラムの仕組み(画像は楽天市場からキャプチャ)

プロジェクトに賛同した出店者のサイトで買い物すると、店舗側も消費者と同様にポイントをチャリティプログラムに寄付する。「楽天市場」を運営する楽天も店舗と同じようにポイントを自社で負担する仕組み。

賛同ショップでお買い物あなた1ポイント+楽天市場1ポイント+賛同ショップ1ポイント=エントリーしたプロジェクト3ポイント
チャリティプログラムに賛同している店舗で買い物をした場合の寄付ポイント(画像は楽天市場からキャプチャ)

プロジェクト賛同店舗で消費者が買い物をすると基本的には3ポイント(消費者、出店者、楽天がそれぞれ1ポイントずつ負担。なおユーザーによって1回あたりに付与されるポイントが1ポイントと10ポイントにわかれる)、非賛同店舗での買い物では2ポイント(消費者と楽天がそれぞれ1ポイント負担)が、消費者の選んだプロジェクトに寄付される。

その他のショップでお買い物あなた1ポイント+楽天市場1ポイント=エントリーしたプロジェクト2ポイント
非賛同店舗(その他のショップ)で買い物をした場合の寄付ポイント(画像は楽天市場からキャプチャ)

楽天はなぜ、こうしたチャリティ企画を始めたのか。それは、「ネット通販でも気軽にチャリティへ寄付できる仕組み、文化を作りたい」(同)という楽天の思いもあった。

たとえば、コンビニエンスストア。レジのすぐそばには寄付箱が設置され、買い物の精算後におつりを気軽に寄付できるようにしている。しかし、ネット通販には気軽に寄付できるような仕組みがない。「気軽に社会貢献活動に寄付できるような仕組みが『楽天市場』でできないか」(同)。そこで、楽天が目を付けたのが、買い物を通じたポイントを活用したチャリティの仕組みだった。楽天の田島さんは次のように説明する。

楽天市場にはポイントという大きなアセットがあります。ポイントを寄付する仕組みであれば、消費者も気軽に寄付できるのではないかと考えました。社会貢献の一環として買い物をする楽天ユーザーが気軽に参加できるチャリティ企画を考案しました。

ただ、この仕組みに賛同する店舗にとっては、買い物のたびに寄付ポイントの原資を負担しなければならないため、新たなポイント負担のコストが発生する。ただ、否定的な声はない。楽天によると、チャリティ企画への賛同は任意のためだ。

自社でやるのには限界があるので、企画に乗る形であれば参加しやすい」。こうした社会貢献活動に関わりを持ちたいといった企業が、任意でプロジェクトに参加しているという。

店舗さん自身でCSR活動を行っているケースもありますが、それはほんの一握り。やりたくても1社だけではコストやリソースなどの観点から難しいという事情があります。楽天が企画し、それに賛同する形であるのであれば「やってみたい」「参加しやすい」といった声があり、今回の三者共同でのチャリティ企画が実現しました。

2016年12月に実施された寄付プログラムは複数から選ぶことができ、「スーパー給食」はそのうちの1つのプロジェクト。消費者からは1万8318円、賛同店舗からの寄付金は2685円。プロジェクトを実施するための寄付総額は50万円に設定していたため、実現には遠く及ばない。

そこで、消費者の買い物時に寄付される楽天負担ポイントに加え、残分を「楽天市場」として楽天が寄付している。その総額は47万8997円分。こうして熊本で開かれた「スーパー給食」は実現にこぎつけた。

現実的に、ある程度の資金がなければ動くことができません。そこは主催者として担保しなければならないところ。本来であれば、チャリティの趣旨としては三者による積み上げが必要です。しかし、チャリティが実現できなければ次はありません。自身の買い物を通じてチャリティに参加するという仕組みが浸透していけば、新しい寄付活動へのモチベーションの創出にもつながると思っています。消費者さんや店舗さんが「寄付してよかった」などと思ってもらうことが、次の社会貢献活動などへのモチベーションになりますから。

なお、チャリティ企画に募金した消費者には、プロジェクトの進捗状況をメールのほか、Webサイトで報告。実行にともなうフィードバックもしっかりと行っている。

楽天チャリティー専用ページ
楽天チャリティー専用ページで、経過報告している(画像は編集部がキャプチャ)

2016年のチャリティ企画はすべて実行に移され、6月までに結果報告が行われた。次回の開催については未定としている。

くまモンと児童たち
小学校にはくまモンも登場、生徒たちと楽しい一時を過ごした
くまモンと記念写真
最後にくまモン、中嶋シェフとともに記念撮影
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瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

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