EC好調で運送業者は6年連続増収、課題は「人手不足」
帝国データバンクが6月22日に公表した「道路貨物運送業者の経営実態調査」によると、道路貨物運送業者の2016年の総収入高は前年比0.8%増の約20兆760億円だった。
2007年から2016年までの総収入高の推移では、リーマン・ショックの影響などで2009年から2年連続で減収が続き2010年に約17兆6985億円で底打ち。2011年以降は増収が続いている。
総収入高の拡大が続いている背景には、ネット通販の拡大によって宅配便の取扱個数が増えたことがある。国土交通省が毎月実施している宅配便取扱個数の集計によると、2016年の取り扱い個数(トラック輸送分)は前年比約6%増の38億6930万個だった。
帝国データバンクが運営する企業概要データベース「COSMOS2」に収録されている147万社の中から、2016年(1~12月期)決算の年収入高が1億円以上の国内道路貨物運送業者で、2007年以降の年収入高が比較可能な1万6860社を調査した。主に宅配や引越し、郵便、食品など特定業界の物流に特化したトラック、軽自動車、バイクなどで運送業を主業とする業者が対象。道路貨物運送業者の経営実態調査は今回が初めて。
約9割が黒字、倒産件数は3年連続減少
運送業界の活況に伴い道路貨物運送業者の経営環境も改善している。当期純損益を比較可能な7665社のうち、約9割にあたる6902社が2016年は黒字だった。黒字企業の比率は前年比 2.5 ポイント増加している。
2016年の倒産件数は前年比17.0%減の176件で、2013年から3年連続で減少した。2017年も前年同月を下回る数値で推移しているという。
事業規模別では年商500億円以上の35社が総収入の29.9%を占めた。従業員数が100人未満の企業数は全体の90.3%を占め、小規模事業者の割合が高い。業歴100年以上の企業は121社で、業歴30年以上の企業は全体の75.9%を占めている。
課題は人手不足と値上げ交渉
道路貨物運送業界は増収が続く一方、配達量の増加などからトラック運転手が不足し、人件費が高騰するなどかつてない厳しい経営環境に置かれていることを同調査報告書は指摘している。
宅配便最大手のヤマト運輸をはじめ、配送業者各社が運賃の値上げを検討するなか、アパレルやビール業界などでは単価の安い運送業者への切り替えに乗り出す動きがみられるという。今後、運賃の値上げを進める中で、顧客を失わずに業績を維持できるかが注目されると指摘している。