経産省のお墨付きも得た! オフィスビルを物流拠点にするアスクルのEC小口配送とは?
オフィス用品通販大手のアスクルは、ビルなどの空きスペースを借りて商品在庫を一時的に保管し、近隣エリアに台車で小口配送する新たな配送スキームの実証実験を開始する。
ビルや地域ごとに需要予測を行い、顧客から注文を受ける前に一定数量の商品を配送エリア近隣のスペースに保管。一時保管スペースからビル内・近隣エリア内への納品には台車を使う。
受注から商品到着までの時間を短縮できるほか、配送のラストワンマイルの担い手を輸配送事業者以外にも拡大することが可能になり、宅配現場における人手不足問題の解消や、CO2排出量の削減といった社会的課題の解決にもつながるとしている。
物流センターから一時保管場所までの輸送は、通常の出荷品を積載する車両の空きスペースを活用。これにより、注文量に左右されず配送量が平準化し、車両の積載高率を高めることができるという。
実証実験は7月12日から、東京ミッドタウンで開始する。対象商品は「アスクルオリジナルコピー用紙(A4)」。
実証実験を通じて有効性を検証し、対象地域を拡大する。アスクルはこの配送モデルの特許を出願中。
経産省の「グレーゾーン解消制度」で適法と確認
アスクルは実証実験を開始するにあたり、経済産業省が所管する「グレーゾーン解消制度」を活用し、ビルの空きスペースなどに商品を一時保管する行為が倉庫業法上の登録を必要としないことを確認した。
「グレーゾーン解消制度」は、事業に対する規制適用の有無を事前に確認できる制度。規制の適用の有無を政府に照会し、規制所管大臣の確認を経て回答を得るもの。
アスクルは、「事業者(EC事業者)が、オフィスビル空きスペース等を借り受け、自社商品を一時保管する場合に、当該スペースを貸与する事業者(ビルのオーナー等)の行為が、倉庫業法第二条第二項に規定する「倉庫業」に該当するか否か」と照会。
経産省は7月3日、関係省庁が検討を行った結果として次のように回答した。
倉庫業法が登録の対象としている倉庫業とは、「寄託を受けた物品の倉庫における保管を行う営業」であり、下記の3点を全て満たすものが対象となる。
- 物品の寄託を受けていること
- 物品を倉庫において保管していること
- 上記1.及び2.を行う営業であること
スペースを貸与する事業者(ビルのオーナー等)は商品購入者からの物品の寄託を受けておらず、また、自ら倉庫における保管を行わないため、上記の条件を満たさない。よって、当該行為は倉庫業法第二条第二項に規定する「倉庫業」に該当せず、登録を受ける必要は無い。
経産省はEC事業者がオフィスビルの空きスペースを借りて自社商品を一時保管する場合、「倉庫業」には当該せず、登録の必要はないと回答。EC市場の拡大を踏まえ、経産省は次のようにコメントしている。
これにより、当該サービスの実施について倉庫業法上の登録が不要であるという取扱いがより明確になりました。EC小口配送における新たなビジネスモデルとして当該サービスの導入が進めば、今後も拡大が見込まれるEC小口配送に関して、最寄拠点のハブ機能を活用することで、配送量全体の平準化による生産性の向上と最寄拠点からの迅速な配送による顧客利便性の向上を同時に実現することができます。