株式会社エフカフェ 2018/12/18 7:00

カスタマーエクスペリエンスの向上に役立つと言われ、EC企業の多くが注目するWeb接客ツール。今回は、Web接客ツールの導入編。どのような基準でツールを選ぶくべきかを考えていきましょう。
キャラクターデザイン◎材井千鶴 イラスト◎宮川綾子

自社サイトにピッタリのWeb接客ツールとどう出会う?

質問ですが、サイトにWebツールを導入する際、どのような基準で選びますか?

  • 予算内に収まるか
  • 機能が充実しているかどうか
  • 費用対効果が見込めそうか
  • 口コミがよいか
  • 営業マンが魅力的 ……etc.
予算内に収まるかな
機能は充実してる?
口コミがよいか
費用対効果はどう?
営業マンが魅力的
Webツール、どのような基準で選びますか?

もちろんツールによってさまざまですが、上記のような基準で選定されることが多いのではないでしょうか?

Web接客ツールは近年、認知度が急速に高まっており、iTRの調査では市場規模が50億円に成長。2021年には75億円規模に拡大すると言われています。

さまざまな特徴を持つツールが数多く登場し、ベンダー間の競争も激化しています。

そんな中、何を基準にツールを選定すべきか、ますますわからなくなってきているのではないでしょうか。数あるツールの特徴をすべて把握するのは困難ですが、Web接客ツールの導入前に考えなければならないのは、①ユーザー視点での課題の見極めと②導入後の運用体制の2つです。

① ユーザー視点での課題の見極め
〜課題を見極めて最適なツールを選ぼう

1つ目の選定基準は、「ユーザー視点での課題の見極め」です。

Web接客ツールは「接客」という特性上、ユーザー視点で課題を見極めた上で「どんな接客がしたいのか」「そのためにどんな機能が必要なのか」をイメージする必要があります

どの時点で「どんな接客がしたいのか」をイメージした上で、ツール選びを行う
一般的なサイト訪問後のユーザー行動STEP
サイト訪問
サイト回遊
特定ページ閲覧
カート
申込
指標
直帰率
商品ページ
遷移率
カート投入率
カート離脱率
直帰率を下げたい
お店の魅力を伝えたい
迷子のユーザーを誘導したい
見て欲しいページに誘導したい
商品の魅力を伝えたい
購入の後押しをしたい
購入前の不安を解消したい
離脱する前に解決したい

上の図でわかる通り、ユーザーの行動ステップごとに課題を分類しただけでも、見るべき指標や必要な接客は異なります。厳密にはここにユーザー軸や時間軸なども入ってくるので、必然的にさまざまな接客が必要になります。

課題ごとに考える、Web接客の機能

ご自身のサイトで考えた場合、実施したいWeb接客や、必要な機能はどのように考えたら良いでしょうか? 例えば、次のようなケースが考えられます。

課題(いま抱えている課題)解決策(どんな接客をしたいのか)必要な機能
女性ユーザーのCVRが低い女性に合わせた情報提供をする・性別でユーザーをセグメントする機能
クーポンの販促コストがかさんでいる必要なユーザーにだけクーポンを提示して、コストを抑える・AIが自動でセグメントする機能
クーポン以外でお店の魅力を伝える・単発のポップアップ表示ではなく、チャットのような連続性のあるポップアップ機能
・チャット機能
新規顧客のトップページからの直帰率が高いコンテンツのABテストをユーザーごとに行う・コンテンツを差し替えるABテストの機能
同一ページでも流入元によってCVRの差がある流入元に応じてコンテンツを出し分ける・流入元でユーザーをセグメントする機能
会員向けサービスがあるが利用率が低い会員に特化したクローズドな接客を行う・会員情報との連携機能(別料金の場合もあるので確認が必要)
CRM施策が十分できていない再来訪を促すプッシュ型接客を行う・メール、SNS、ブラウザ通知など、再来訪を促す外部ツールとの連携機能

多くのEC事業者がコンバージョン率の向上に向けて、ランディングページやエントリーフォームの最適化など、サイトデザインの改善に取り組んでいると思いますが、Web接客ツールの中には、その段階から活用できるものもあります。また、CRM強化に活用できるツールもあります。

どんな機能が必要なのかを知るには、まずはユーザーを知ること

ペルソナやカスタマージャーニーマップの作成やユーザーテストを行い、ユーザーを理解し、ユーザー視点に立って課題を洗い出すことから始めるのが成功の鍵です。そうすれば、「どのような接客をすべきか」「どのような機能が必要か」について、さまざまなアイデアが出てくると思います。

複雑に考える必要はありません。まずはユーザーの行動、悩み、関心ごとなど、ユーザーを深く知ることです。ユーザーの理解の手法については、下記の記事に詳しく書かれています。

「導入数が多いから」「評判がいいから」「安いから」といった理由で導入してしまうと、今のサイトの課題に対して、解決策を持たないツールを選んでしまう可能性があります。「どのような機能が欲しいのか?」「なぜその機能が必要なのか?」を確認した上で導入を検討しましょう

② 導入後の運用体制の構築
〜Web接客ツールは導入後の運用で成否が分かれる

2つ目の選定基準は「ツール導入後の運用体制」です。そもそもWeb接客ツールは、導入すれば直ちに成果が上がるというものではありません。じっくりと時間をかけてPDCAを回し続け、成果を積み重ねていくものです。

また、1つの接客シナリオが成功したからといって、それだけでずっと成功し続けられるというものではありません。時代の変化や消費者マインドの変化などを見逃さず、変化に応じてシナリオに手を入れ続けることも大切です。

Web接客ツールは、接客の半自動化はしてくれますが、手放しで運用できるものではありません。成果を上げるためには、一定のWebスキル・リソースが必要です。

  • 分析(データ解析、ユーザー分析などから課題を洗い出す)
  • 企画(分析結果からアクションを考え実行する)
  • デザイン(接客の内容によってはデザイン制作が必要)
  • コーディング(接客の内容によってはコーディングも必要)
  • ツール運用(それぞれのツールの仕組み・機能を理解して、設定を行う)
  • 開発(自社サイトへのタグの埋め込み、接客内容によっては、JavaScriptのカスタマイズなども必要)

上記のようなWebスキルやリソースを社内で準備することが難しい場合は、運用サポートがきちんと付いているベンダーを選ぶとか、AIが搭載されているツールを選ぶといったことも検討すると良いでしょう。

ツール導入後の運用体制でツール選びを行う
たとえば少人数
分析
デザイン
開発
企画
・担当者のみ少人数
・Web知識に不安あり
・あまりリソースはかけられない
AI系 ecコンシェルなど
運用付き Sprocketなど
たとえばチーム
デザイナー
デザイナー
ディレクター
分析
開発
・チームで運用
・Web知識に不安なし
・がっつりやりたい
多機能 Karteなど

ちなみに、導入時にはサポートがあるのに、運用フェーズに入るとサポートが少なくなるというケースもありますので注意が必要です。ツールを選定する際は、導入後のサポート面をしっかりとヒアリングすることをおすすめします。運用サポートをしてくれる別のサービスを利用する方法もあります。いずれにしてもしっかりとPDCAを回せる体制を構築しましょう。

◇◇◇

次回はWeb接客について“本気で”考えるシリーズの第3弾「Web接客を運用する:どう運用したらうまくいくの?」をテーマにお送りします。成果に結び付く接客ツールの具体的な運用方法を“本気で”考えたいと思います。次回もお楽しみに。

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