中国ECで成功するための販促キャンペーン対策&集客を伸ばす4つのポイント
天猫(Tmall)のショッピングキャンペーン「ダブル11」が2009年にスタートしてから、毎年11月11日は、中国小売市場で最も影響力のあるショッピングの祭典となりました。その後、京東(JD.com)、蘇寧(Suning、スーニン)など各ECプラットフォームも「JD618」「蘇寧618」など各種キャンペーンを行うようになりました。
現在、後発のECプラットフォームも毎月さまざまな大型キャンペーンを実施。消費者の買い物の場、企業の出店先といった選択肢が広がっています。ECプラットフォームのキャンペーンに慣れ親しんでいる消費者に、販促キャンペーンなどを活用して売り上げを伸ばすことは必要不可欠なこと。本稿では、アリババグループの販促キャンペーンを例に、売上向上に不可欠となる店舗運営のコツについて説明していきます。
「Tmall」とタオバオの販促キャンペーン
「Tmall」の「ダブル11」の流通総額は毎年、驚異的なスピードで伸びています。2018年の流通総額は2000億135万元(1元15.76円換算で約3兆1523億円)に達し、過去最高を更新。大多数の店舗で「ダブル11」当日の流通総額が各店舗の年間流通総額の30%を占めました。多くの店舗にとって「ダブル11」は極めて重要なキャンペーンとなっているのです。
熾烈な競争を繰り広げられる中国のEC業界において、各企業は全力で「ダブル11」期間にお金やリソースを投入。年始に立てた販売目標の達成をめざしてラストスパートをかけます。
こうした「ダブル11」以外にも、多くのキャンペーンをアリババグループは実施していることをご存じでしょうか。販促キャンペーンは、その影響力によって以下の3種類に分けられます。
- S級大規模キャンペーン:三八女王様フェスティバル、618年半ビッグプロモーション、99ジュ・ファ・スァン(アリババ傘下の共同購入サイト)、ダブル11グローバルショッピングカーニバル、ダブル12ショッピングキャンペーンなどです。
※Sはスーパーという意味で、大規模キャンペーンと意味しています。 - A級大規模キャンペーン:恋人の日、88会員感謝デー、狂暑シーズン、520ママ&ベビーデイ、グローバルお正月フェスティバルなどです。
*Aは優良という意味です。S級キャンペーンのほかは、ランク付けでA-の上に、A級さらにA+級を表現しています。 - 商品カテゴリーのキャンペーン:ホーム用品類の「インテリア優待フェスティバル」、家電製品類の「グローバル着信キャンペーン」などは、商品カテゴリーごとにキャンペーンも異なります。
主な販促キャンペーン
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
---|---|---|---|---|---|
お正月用品大セール* | 恋人の日 | 三八女王様フェスティバル | 男の日フェスティバル | ママ&ベビーデイ | 618年半ビッグプロモーション |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
狂暑シーズン | 88会員感謝デー、秋冬新発売 | 99ジュ・ファ・スァン | 10.1国慶節優待祭(ダブル11のがスタート) | ダブル11グローバルショッピングカーニバル | ダブル12ショッピングカーニバル |
※陰暦は毎年変わるため、1月下旬から2月下旬前後で、「お正月用品大セール」は2月あたりです。
参加するには以下の条件があります。
- 基礎サービス評価点数が2.8点以上
- A級キャンペーン期間中、商品価格を過去15日間の最安値で販売
- S級キャンペーン期間中、商品価格を過去15日間かつ終了後15日間、最安値で販売
- ブランドの市場認知、キャンペーン活動との適合度、ターゲットのニーズ、営業年数、経営状況、運賃保険及びサービス保障などの基準を満たしている多数の応募店の中から選抜
- 一部の大規模キャンペーンで運賃保険を支払う
また、販促内容によってキャンペーンの条件も異なります。たとえば、「Tmall」プラットフォームでは、他店舗と併せ買いで一定の金額以上を購入した場合、購入額全体から割り引きを行うモール全体のキャンペーンへの参加も必要となります。
プロモーションでECサイト内外のネットトラフィックを増やす方法
「Tmall」と「タオバオ」に出店している店舗は、毎月1~2回の販促キャンペーンに積極的に参加しているのが一般的。多くのキャンペーンに参加することになるので、広告をいかに効率的に運用するかが重要になっています。「Tmall」と「タオバオ」のネットトラフィックは4種類に分けられ、それは有料広告枠からの流入、プラットフォームの無料広告枠からの流入、モール外のネットトラフィック、自発的な訪問です。
有料広告枠からの流入
現在は直通車(ズートンチャー)、淘宝客(タオバオクー)、ダイヤモンド展示ブース(バナー広告)が常設の広告枠。また、淘宝頭条(タオバオ トウティアオ)、ライブ配信のような「种草(ジョンツァオ)」(第三者に商品を紹介してもらうことで、購買意欲を沸かせる行動)チャンネルも用意されています。出店企業は自身の経営状況を把握した上で、広告予算の計画を立てる必要があります。
プラットフォームの無料広告枠からの流入
有料広告枠以外も無料広告枠をプラットフォームは用意しており、消費者の使用習慣に基づいた千人千面施策(ターゲット広告:購買履歴・行動履歴などを基にしたプラットフォーム独自のアルゴリズムで、購買意欲の高い商品を自動で表示する仕組み)からサイトに新規顧客を誘導することができます。その他にも、「手淘(ショウタオ)」(タオバオのスマホアプリ)のトップページ、タオバオ検索と「微淘(ウェイタオ)」(モール内SNS)も無料でトラフィックを集めることができる場となっています。
販促キャンペーン時に「Tmall」では出店企業に素晴らしいプロモーションスペース(無料)を提供していますが、各カテゴリ売上トップ10ブランドのみが申請できるというものになっています。
モール外のネットトラフィック
モール外のネットトラフィックチャネルについて紹介します。
新浪微博(シンランウェイボー)
日本で言う「Twitter」と似たSNSで、動画と画像をアップロードし、情報配信や共有を行うことで、消費者の興味喚起を促すことができます。話題となると注目度が48時間以上キープされると同時に、その検索指数を伸ばすことができます。
WeChat公式アカウント
LINEの様なメッセージSNSで、LINE同様に企業や店舗が公式アカウントを作ることができます。「种草(ジョンツァオ)」公式アカウントは数多くのフォロワーが集まるため、キャンペーンの際にプロモーションで頻繁に用いられるので、興味のあるユーザーがそこから店舗に足を運びます。新規顧客の獲得率を上げることができるチャネルです。しかし、この方法は効果が見込める分コストが高く、またターゲットが関心を寄せる期間が短いため、できるだけ、キャンペーンの時に特化して活用するほうが良いでしょう。
小紅書(RED)
「Instagram(インスタグラム)」に近く、写真・動画と共にコメントを投稿するSNS+ショッピングのアプリです。ブランド認知度の向上と商品使用感想の紹介に適用する企業が多いです。小紅書(RED)の活用方法としては、検索キーワードをタグ付けし投稿することで、消費者と企業の接点を増やすことができます。企業からの発信ではなく、消費者・KOLの声を通して情報を発信することが重要で、ターゲットの心が掴みやすくなります。検索や購買への誘導を図るために用いられるケースが多いため、ブランドの検索キーワードの設定が非常に重要となります。大量の一般人とインフルエンサーとの協業で行う施策が一般的です。
集客率アップ4大ポイント
「ダブル11」を例に詳しく説明します。
1. 検索ネットトラフィックの最適化
注目度が高まる人気商品(在庫が確保され、クリック率や購買転化率が高く、注目度の高い商品)を選出し、その商品のディスクリプションタグの最適化を図る施策を行い、店舗ページや商品ページのPVの増加を図ります。
「ダブル11」の3か月前である8月から継続的にタイトルタグを最適化していき、各種キャンペーン活動を介して販売件数と商品レビュー数を積み重ねていきます。そして、「ダブル11」で売り上げの激増を実現させます。
transcosmos Chinaが運営している「イオン海外旗艦店」の人気商品「CLUBすっぴんパウダー」を例に解説します。管理画面からこの商品が検索されたキーワードを分析し、そして、商品に関連する人気のキーワードをタイトルタグに入れ、露出拡大を図っています。たとえば、「保湿力が高い」「油分を抑える」「素肌感」「パウダー」などです。ちなみに、「CLUBすっぴんパウダー」は、「Tmall」とタオバオのキーワード検索ランキングで1位となったこともあります。
人気商品を生み出すことに成功したAEON店舗では、訪問者数が倍増したほか、「ダブル11」を通じて店舗の市場認知度と販売件数を向上することができました。
2. コンテンツチャンネルのネットトラフィックを取得
「手淘(ショウタオ)」(タオバオのスマホアプリ)の中には、コンテンツチャネルと呼ばれる商品紹介のチャネルが存在します。コンテンツがトップページに表示された際、クリック数が飛躍的に増えるので、このトラフィックを得たいと強く望んでいる出店企業は少なくありません。
ここ数年、中国ではコンテンツチャネルからのトラフィックの割合が次第に拡大しており、多くの店舗がコンテンツチャネルの活用に重きを置いています。そのため、コンテンツチャネルである、「有好貨(ヨウハオホア)」「ライブ放送」などのコンテンツチャンネルの運用の関心が強まっています。
予算が限られている場合、1~2つのチャンネルを活用し、素人の記事・枠を通してターゲットを絞り込んだ宣伝・アプローチを行うこともできます。もちろん予算を充分に用意できる場合は、全てのチャンネルを活用することでより幅広い集客を行うことができます。ちなみに、出店企業は主力商品に対し、30~60日前から「种草(ジョンツァオ)」を行うことが不可欠でしょう。販促期間に自社ショップへと誘導する効果が著しく高くなるためです。
新浪微博のデータセンターが2018年9月に発表した『2018微博EC白書』によると、60%以上のユーザーは人気スターが着用したアイテムを購入したいと考えており、70%以上のユーザーはインフルエンサーが勧める製品には好意的な印象を持っていると回答しています。従って、インフルエンサーによる商品のオススメはここ数年、とても効果のある「种草(ジョンツァオ)」手法であり、消費者の心を掴み、コンバージョン率の向上に有効となります。
3. DSR評価の重要性
DSR評価(Detailed Seller Ratings/セラー詳細評価)は商品の詳細が的確だったか、コミュニケーション、発送のスピードという3分野における販売者サービスについて、消費者が評価を行える制度です。DSR評価が高いショップは、検索エンジンの評価も高くなり、キャンペーン時の商品露出率が高くなります。消費者がモール内で行う検索行為に競合商品・店舗に勝つためにも重要な評価となります。
4. ショーピングカート投入数とお気に入り登録数の活用
キャンペーン期間中、優良認定されている店舗はより良い広告枠を獲得できます。リアルタイムで商品のショーピングカート投入数とお気に入り登録数をアリババグループが評価するため、より良いプロモーションスペースを獲得できます。
たとえば、10月20日からはショーピングカート投入数とお気に入り登録数が急激に増えるので、プレセール期間に「早く買ったら商品が激安」という消費者心理を上手く利用し、「限定発売」「予約限定クーポン」などの特典手段を設定することで、プロモーションスペースを獲得する企業は多いです。もちろん、プレセール期間に相当なコレクション量、購買量と転化率を維持することが必要です。
アリババグループのプラットフォーム以外でも、京東(JD.com)でも似たようなキャンペーンが存在しています。「JD618」の実施時間、ルールも基本的にアリババグループのキャンペーン活動に似ています。中国のことわざにもある「万変不離其宗(形式上いろいろに変っても本質は変わらない)」ということです。
出店企業はプラットフォームのキャンペーン情報を正確に把握し、またネットトラフィックツールを活用することができれば、販促キャンペーンという激戦区でも勝つことができるのです。
【越境EC・海外向けECに必見の一冊】世界30の国・地域のECデータを把握できる書籍『海外ECハンドブック2022』
インプレスは、越境ECや海外向けEC、海外進出に役立つ、世界30の国・地域のECデータをまとめた『海外ECハンドブック2022』(著者はトランスコスモス)を発刊。「世界のEC市場規模予測」「地域別EC市場データ」「越境EC市場規模およびEC利用者の推移」「EC市場データランキング」などを詳しくまとめています。
『海外ECハンドブック2022』のお求めはAmazonかインプレスブックスで
電子版のほか、AmazonではPOD(プリント・オン・デマンド)版をご注文いただけます。A4サイズの冊子でお届けします。
[主要30の国・地域のEC市場概況]
- 世界のEC市場規模予測
- 地域別EC市場データ
- 30の国・地域のEC市場ポテンシャル
- 越境EC市場規模およびEC利用者の推移
- 国別EC市場規模ランキング
- 世界8都市のEC利用動向
- EC市場データランキング(TOP10)
- 各国のEC市場環境比較表2021年
などを掲載。アジア太平洋、北米、中南米、欧州、中東・アフリカなど、主要30の国・地域について、各国のEC市場環境比較表などを掲載しています。
→ https://www.amazon.co.jp/dp/4295015822/