CVRが大幅アップ。日本トイザらスによるgoo Search Solution導入事例
2000年にEC事業開始以来、「イノベーションなくして成長ならず」をキーワードに、業界に先駆けたあらゆるチャレンジをしてきた日本トイザらス。現在同社が力を入れるのが、サイト内検索の改善と、チャットボット導入によるカスタマーサービスの向上だ。goo Search Solutionの導入によりCVRに大きな変化があったという同社の実践例を紹介する。
シームレスリテーリングへの挑戦
店舗・ECの資産を活かした取り組み
2000年10月にEC事業を開始した日本トイザらス。特にこの5年は、「シームレスリテーリング」(※編集部注:日本トイザらスでは意識的にオムニチャネルではなく、シームレスリテーリングという表現を使用)を実現するため、全国にある168店舗とECサイトという資産を活かし、「常に早く取り組み、拡大を意識してきた」(日本トイザらス株式会社 eコマース本部 シニアディレクター 西原慎祐氏)。
チャットボットの導入で応答率大幅改善
チャットボット利用数、前年同期比倍増
ECサイト改善策の一環として強化しているのが、チャットボットを利用したカスタマーサービスの向上だ。同社には年間数十万件の問い合わせがあるといい、特にクリスマス前の11月、12月は問い合わせ件数が大幅に増える。
以前は電話とメールで対応していたが、繁忙期のピーク時には応答率が40%を下回ることもあり、お客さまの2人に1人は電話がかかってきても応対できない状況だった。(西原氏)
応対ができなければ、消費者は諦めて他社サイトへ行ってしまうか、クレーム対応の場合は、「お待たせした分苦情が大きくなる(西原氏)」などさまざまな問題に発展する。
そこで目をつけたのが、チャットボット。2017年にLINEアカウントコネクトの利用を開始した。日本トイザらスの公式LINEアカウントと友だちになると、ユーザーはLINEを通じて問い合わせができる。内容によって自動応答か有人対応かが振り分けられ、「送料が知りたい」など答えが明確な質問に対しては、人を介さない自動応答も可能だ。
その後、PCやスマホサイトでもチャットボットの仕組みを導入。2018年の繁忙期のチャットボット利用率は前年同期比倍増となり、2019年はさらに増える見込みだ。
メール、電話による応答件数大幅に削減
チャットボット導入によるメリットは、計り知れない。まず応対可能時間が営業時間内に限られる有人対応と違い、チャットボットであれば24時間365日となり、応対できる件数が大幅に増える。
顧客からの質問は、必ずしも有人対応の必要がないものもある。人を介する必要がある複雑な問い合わせに時間を割けられれば、自ずとサービス向上につながる。
以前は、11月、12月に対処できなかったものが1月まで持ち越されることもあり、カスタマーサポートは常に対応に追われている状態だった。チャットボットを導入したことで自動応答率が圧倒的に増え、メールや電話による有人対応の割合が大幅に減少した。(西原氏)
これらの取り組みの結果、2018年11月の応答率は100%に近づき、大幅に改善した。
サイト内検索改善でCVRが大幅アップ
表記ゆれを吸収し、ゼロ件ヒットをゼロに
2018年から日本トイザらスは、サイト内検索の改善に注力している。サイト内検索は直接CVRに影響を及ぼすことから、検索トラブルの改善が求められていた。
特に課題になっていたのが、「ゼロ件ヒット」だ。「レゴ( LEGO)」のような人気商品は検索回数が多いが、「REGO」など入力ミスも多い。以前はこうした「表記ゆれ」があると検索対象にはならず、「ヒット0件」という結果になっていた。そこで表記ゆれ対策に強いNTTレゾナントのgoo Search Solutionを2018年7月に導入。検索経由のCVRが、導入後は倍増した。
NTTレゾナントのシニアコンサルタント 北岡恵子氏は、企業がサイト内検索に注力すべき理由について以下2つをあげる。
- 検索を利用するユーザーは、ある程度欲しい商品が決まっている
- 広告や特集に比べると検索経由のCVRは高い(CVRが10倍程度上がる商品もある)
サイト内に検索ボックスを設置しているEC事業者は多いが、活かしきれていないケースも多い。検索で目当ての商品が見つからなかった場合、来訪者の56%は「他サイトに行く」、29%が「実店舗に行く」というデータもあり、検索結果に満足しなかった場合、実に8割が離脱する傾向にある。
ユーザーが求めている商品を素早く上位に!
こうした機会損失はなぜ生まれるのか。北岡氏は主に3つ理由があるとする。
特に多いのが、ユーザーが入力したキーワードを正しく理解していないケースと、日本トイザらスの「レゴ」の事例にもあったとおり、表記ゆれを吸収できていないケースだ。
たとえばユーザーが「電子レンジ」の検索を目的に、「レンジ」と入力したとする。よくあるのが、「オレンジ」や「オレンジ色の何か」を検索結果として表示してしまうケースだ。これではユーザーが求めている検索結果からは離れてしまう。
また、「ゴミ箱」を探しているユーザーのなかには、「くず入れ」「ダストボックス」といったキーワードから検索する人もいる。こうした表記ゆれをいかに吸収できるかもポイントだ。
最後に、ユーザーの求めている順に検索結果が表示されているかにも注目したい。よくあるのは、Tシャツを探しているユーザーに、スニーカーを出してしまうケース。スニーカーの商品説明文のなかに「Tシャツ」が入っている場合、そのスニーカーが売れ筋商品だと上位表示されることがある。
goo Search Solutionでは、サイトに蓄積されたログを毎日AIに学習させることで、本当に売れている商品がしっかり上に出る。関係ない商品が出なくなる仕組みを取っている。(北岡氏)
また表記ゆれに関してもログを活用する。自社ECサイトにたまったログと、20年以上の運営実績を持つgooのポータルサイトに蓄積したログ、それぞれからAIが表記ゆれ辞書を自動で生成。この2つを掛け合わせることで、各ECサイトに特化した「専用の表記ゆれ辞書」を作るという。
「ミライの検索」はこうなる
画像、音声。検索はもっとラクに便利に
最後に北岡氏は、これからの検索方法として次の3つをあげた。
①ダイレクト検索
特定のキーワードで検索したときに、指定ページに飛ばせる機能。たとえば検索ボックスに「ブラックフライデー」と入れると、直接ブラックフライデーのランディングページに移動する。
<メリット>
- よりCVRが高いページに送客できる
- 検索ボックスに商品名ではなく、「送料」「返金方法」などと入力するユーザーが一定数いる。検索から直接「送料」や「返金方法」のFAQページを案内できる(カスタマーサポートの負担を減らせる)
②画像検索
写真を撮影すると、体のどの部位なのかAIが判別。トップス部分をクリックすると、トップスに絞り込んだ形で検索結果が表示される。
③ 音声検索
「送料無料の1500円以内の新品の腕時計が欲しい」など自然な言葉で話すだけで検索できる。その際いきなり結果を出すのではなく、上記画像のように、まず検索の候補を出すことで、よりユーザーにマッチした検索結果に導くことができる。
仕組みは、下図の通りだ。
音声検索はハンズフリーであることから入力スピードが早く、また他に作業をしながらでも検索できるなどさまざまなメリットがある。米スタンフォード大学の調査では、2020年には、モバイル検索のうち5割が音声検索になるという。音声検索への対応は各EC事業者に求められる課題となりそうだ。