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1925年から続く柳田織物の4代目社長・柳田敏正氏がECサイト「ozie」をオープンしたのは2002年。ozieは、創意工夫をこらし中小企業ならではの強みを生かした戦略で、リピーターを増やし続けている人気ECサイトだ。そんなozieを運営する柳田氏の哲学や「リピーターが生まれる EC サイトの条件」について、メール共有・管理システム「メールディーラー」などを提供するラクスの池田咲紀氏が切り込む。

EC業界の課題は物流費の高騰

株式会社柳田織物 柳田敏正氏(以下、柳田氏):柳田織物の創業は1925年で、私は4代目の代表取締役です。創業以来、当社は代々ワイシャツを販売しているのですが、代ごとに販路がすべて異なります。初代は工場で販売、2代目は生地卸、3代目が製品卸。そして4代目の私は、2002年に自社ECサイト「ozie」をオープン。ECを販路として小売りをしていますが、2014年にECと連携するショールームを東京・六本木に設けました。

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株式会社ラクス 池田咲紀氏(以下、池田氏):20年近くEC業界を見られてきた柳田社長ですが、今EC業界において、一番課題に感じていることは何でしょうか?

柳田氏:ECに特化して言うと、物流費の上昇に起因するコストの問題が一番の課題だと感じています。

ECは、展開する国によって消費者が何を求めるか変わってくるものなんですね。日本では、「良いものがより安く手に入る」ことが求められます。

物流コストが低ければ、ECで販売する商品単価を実店舗より安くすることは可能です。しかし昨今のように物流コストが上昇してしまうと、もう安売りはできません。コストが上がり過ぎてしまったために、従来のような価格帯で販売していたら利益が出ないからです。

ところが世の中的には、「EC=安い」のニーズが高い。特に私のいるアパレル業界は最たる例で、常に値下げをしているため、いつ定価で販売しているのか分からないくらいです。

そのような状況の中、価格以外のことを考えられなくなっているEC事業者が増えているように思います。

柳田織物の柳田敏正社長

池田氏:物流費や人件費などのコスト増加についてのお悩みは、店舗様からよく伺います。

柳田氏:当社の商品はすべてオリジナルなのでまだ良いのですが、他のショップでも同じ商品を扱っている、いわゆる「型番商品」を販売している事業者の方は、相当厳しい競争に晒されていると思います。

価格勝負ではないアプローチで差別化を図るには

池田氏:そうした課題を乗り越えるために、EC事業者はどんなことに取り組むべきなのでしょうか?

柳田氏:当社の例で申し上げると、「やるべきこと」と「やらないこと」を決めて、業務効率の向上に取り組んでいます。

「やらなくてもいいこと」というのは、自社じゃなくてもできること。アウトソーシングや自動化で対応できるような業務があれば、社内では行わないようにしています。

「やるべきこと」というのは、中小企業においては接客かもしれませんし、大きな視点ではブランディングになります。ブランディングという言葉が持つ意味は大きいのですが、中小企業においては、お客さまに自社を覚えてもらうことだと考えています。

たとえばリピート率の低下や購入客の減少というのは、やはり自社が認知されていないから起こってしまうことなんですね。一度購入してくれたお客さまがなぜ離脱してしまうのか。それは端的に言うと、「忘れられてしまう」からなんです。

お客さまに覚えてもらうには、自社の文化を伝えたり、自社の持っている魅力を伝えたりすることが重要です。そのためには、まず社内で日頃からコミュニケーションを取り合い、全社員で同じ方向を向くこと。社内でどうしたいかを固めることが、魅力的な発信につながる第一歩だと考えています。

自社ブランドを高めるには「接客」「スピード」「変化対応」

池田氏:自社のブランドを好きになってもらうには、お客さまとの接点も大切になってくると思います。

柳田氏:最も重要なのは日々の接客業務です。中小企業であるからこその強みを生かし、できる限りの工夫をして接客に力を入れていくことで変化は生まれます。

1つ事例を紹介しましょう。「楽天市場」で型番の水着を扱っている知り合いの店舗があるのですが、順調に売り上げを伸ばし続けてきていたものの、2018年、突然厳しい状況に陥りました。

そこで目を向けたのが、「自社を愛してもらう」ための接客や顧客対応の見直しです。その結果、「楽天市場」の中で評価が良いショップ上位3%に与えられる「優良ショップ」として認定され、売り上げも見事にV字回復を遂げました。これは、型番を扱う店舗でも、接客を見直すことでお客さまに受け入れられる良い事例ではないかと思います。

顧客に愛されるショップになるには「接客の見直し」が重要と柳田氏はいう。

中小企業の良い点は、何かを変えようと思ったらすぐに行動に移せることです。たとえば経営のトップが「明日からこちらに舵を切る」と突然意思表示をしても、ECに関わっている人数が少ない中小企業であれば、全員が納得できたら、明日から方針を変えることができます。

ところが大手企業では社内の伝達や調整にどうしても時間がかかってしまい、「明日から即変わる」というのは難しい。中小企業ならではのスピード感を生かして、トライ&エラーを繰り返し、チャレンジを続けることが大切です。

コストの課題は確かに深刻です。当社も縫製工場の工賃が2年連続で上昇しています。最低賃金が上昇している以上、それは仕方のないことです。だからこそ、価格面ではない付加価値が必要になるのですが、多くの店舗は「安くしないと売れない」という考えに囚われ、価格面以外での工夫を怠っているように感じます。

中小企業には、まだまだ工夫できる余地が十分にあります。他社に先駆けて新しいことをするのは、勝利をつかむためのポイントでもあります。現状は大変かもしれませんが、目先の売り上げではなく、次につながる「何か」に目を向けることで可能性は広がるでしょう。

リピーターを生む「ozie」のブランド戦略

池田氏:ブランディングにおいて、「ozie」で実践していることはありますか? 

柳田氏:1つに、2014年に東京・六本木にオープしたショールームがあります。

六本木に構えているozieのショールーム

当社が扱う製品は少なくとも6000アイテムあります。ECでは品数が多いのは良いことなのですが、実店舗に同じ数を並べるのは、広大な売場面積がないと不可能です。当社のECサイトを訪れるお客さまが一番悩まれているのは、服のサイズが自分に合うか。その解決策として「試着」しに来ていただける場を作りたいと考え、ショールームを設けました。

とはいえ、全てのアイテムを常時ショールームに置いておくことはできないので、物流の方たちとも連携して、お客さまからご連絡をいただいたら最短で翌日にはショールームに試着用のシャツを準備するようにしています。ショールームなので、試着したからといってお客さまは購入する必要はありません。ただ見るだけで構わないのです。

終始盛り上がりを見せた柳田氏と、ラクス カスタマーサービスクラウド事業部 池田咲紀氏(右)の対談セッション

池田氏:ショールームをオープンして、良かったことを教えてください。

柳田氏:2つありまして、1つはお客さまと直接会話できるため、次の展開に向けたさまざまな情報をインプットできることです。EC経由で届く当社への要望やお客さまの思いをダイレクトに反映したメールも参考になりますが、ショールームで実際に対面して話すことで、さらに気づきをいただけます。

2つめは、ライフタイムバリュー(LTV)の向上です。お客さまが来店した際、当社では年齢や来店履歴などいくつかの顧客データを取得しています。特に大きなシステムを入れているわけではなく、一般的なデータの取り方なのですが、それでも分かることがあります。取得したデータを使いお客さまへの情報提供やアプローチなどを行ったところ、LTVが従来の3倍になりました。

池田氏:それはすごいですね。ショールームのオープンは、先ほどおっしゃっていた「やるべきこと」と「やらないこと」で分類すると「やるべきこと」に該当すると思います。「やらないこと」の具体例があれば教えてください。

柳田氏:ECサイトで購入いただいた際、ご注文後のごく簡単なお問い合わせに関しては、中国に拠点を置く成都インハナにBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)しています。アパレルECは性質上、お客さまからサイズや着用感などに関するお問い合わせが多くなるため、自社スタッフはそうした、「自分たちにしか対応できない」質問に注力するようにしています。

ちなみに、日本サイドも中国サイドも同じ受注情報・問い合わせ情報を共有しています。中国のスタッフも日本側の対応を学び、最近は中国サイドで回答してくれることも増えてきました。当社は「自分たちにしかできないことはなんなのか」を突き詰め、「やるべきこと」と「やらないこと」を決めています。

池田氏:最後に、ECサイト運営を成功に導くためのアドバイスがありましたらお願いします。

柳田氏:どの業界でも、業界の常識は非常識といわれます。旧来の業界の常識に囚われるのではなく、自分たちがこれからもビジネスを続けるためには、どうするべきなのかをぜひ考えていただきたいと思います。

池田氏:お話を聞いて、顔が見えないECショップだからこそ、接客を大切にすることで、リピーターが生まれやすくなるのだと感じました。今日は貴重なお話をありがとうございました。

◇ ◇ ◇

「ozie」がメール対応・接客で導入しているのが、クラウド型のメール共有システム「メールディーラー」(ラクスが開発・販売)。顧客対応時における二重返信や返信漏れの防止、日本と中国の双方でのメール対応の状況共有を「メールディーラー」で行っている。BPO先である中国企業の顧客対応力向上に一役買っているという。

楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2018(楽天SOY)の受賞店舗の70%が利用。「複数店舗の問い合わせを一元管理」「受注管理システムとの連携」「LINE公式アカウントの問い合わせも管理」といった機能性がEC企業の支持を集めている。

「メールディーラー」は楽天SOY受賞の店舗も多く利用している

「働き方改革」「人手不足」に対応した顧客対応方法を設計できるのもクラウド型の利点。接客のことがわかれば在宅でも仕事ができるので、今の時代の働き方に適した環境を用意できるのも「メールディーラー」の魅力の1つだ。

「ozie」は「メールディーラー」を利用し「接客」の品質向上、業務効率化を図っている
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