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知育玩具のサブスクリプションECを手がけるキッズ・ラボラトリー代表取締役の青柳陽介氏に、「通販・EC業界から見たサブスクビジネス」「顧客対応」など、サブスクECを運営している経験を踏まえて読者の皆さんにお伝えしたいこと、ビジネスに役立つ具体例などをお聞きしました。

通販・ECから見たサブスクビジネス

「通販の立場でサブスクを考察すると、サブスクは非常にスタートしやすい、利益を積み上げしやすい魅力的なビジネスに見えます」(青柳氏)。しかし、実際はさまざまな問題があり、事業の立ち上げ、運営のハードルは高いそうです。

原価率、廃棄率、故障率の違い

サブスクサービスで取り扱う商品は、洋服やオフィス用家具、玩具など多岐にわたります。商材によって原価率が大きく異なるので、投資回収期間を含めて経営を維持するための価格設定の難しさがあります。

また、商品が破損や故障してしまう場合もあります。商品によっては使用できるシーズン、そもそも商品自体の耐久年数が短いモノがあります。仕入れ、メンテナンスといったコストを含め、キャッシュフロー経営が重要視されます。

たとえば、アパレルはクリーニングと廃棄率が経営の大きなポイントとなります。素材によってはクリーニング方法が異なるのでクリーニング代が必要になる。ファッションにはシーズンや流行がありますし、洋服を何度も使用している間によれてしまったりして、商品として価値がなくなるスピードが速いので、廃棄率も高いと思います。

オフィス家具ではユーザーに商品を送れば、ほとんど交換は発生しません。そのため、原価から利益を上乗せした価格設定を行いやすい。消費者が一度商品を使ってくれれば、破損時の修理などは必要となりますが、長期間その商品を使ってもらうことができます。そのため、投資回収などを含めた収支計画をシミュレーションしやすいです。(青柳氏)

商品によってさまざまなコストが継続的に発生します。そのため、自社が扱う商品に合わせた収支をシミュレーションし、経営計画を綿密に立てる必要があると青柳氏は指摘します。

サブスクはスタートアップしやすいように見えて、実際に始めるととても大変な実務が多い。さまざまな商品から利用するモノが選べるようにするための仕入れ、そして一般的な仕入れ販売よりもキャッシュインが少ないので、資本力が必要になりますね。(青柳氏)

レンタル系のサブスクECは入出庫の在庫管理が難しい

サブスクビジネス立ち上げ期で最も難しいのが、「商品の在庫と入出庫の管理」とのこと。

創業1年目であるキッズ・ラボラトリーの物流業務は社内。アウトソーシングも検討しましたが「お客さまからの商品のお戻し状況を自分たちで確認して、今後のCRMの戦略を立てたい」という思いから自社運営にこだわっています。

自社の倉庫ではフリーロケーション管理を採用しています。空いているロケーションに商品をどんどん保管していく管理方法のことで、保管スペースの有効活用が可能になります。そのためには、在庫管理システムなどを利用しなければ適正な在庫管理ができなくなります。

商品ごとに決められたロケーションに商品を保管する管理方法であるロケーション管理の場合、私たちのビジネスのようにレンタル系のサブスクリプションECでは、送った玩具が出ていった後、保管スペースが空いてしまうといったデメリットが出てきます。ロケーション管理ではスペースを有効活用しにくいため、コストが多くかかってしまうケースが多いと思われます。(青柳氏)

キッズ・ラボラトリー サブスク サブスクリプションサービス 玩具のサブスク 商品棚の一部
「キッズ・ラボラトリー」商品棚の一部(画像提供は「キッズ・ラボラトリー」)
キッズ・ラボラトリー サブスク サブスクリプションサービス 玩具のサブスク 商品棚の一部
(画像提供は「キッズ・ラボラトリー」)
キッズ・ラボラトリー サブスク サブスクリプションサービス 玩具のサブスク 商品棚の一部
商品の在庫がない状態の商品棚(画像提供は「キッズ・ラボラトリー」)

さらに商品の入庫が加わると作業は煩雑になるとのこと。

化粧品の定期購入の場合、「AさんとBさんはBBクリームを買う」といったように購入商品がある程度決まっています。そのため、同じ商品をそれぞれ箱に詰めて納品書を入れればいい。しかし、私たちのようにユーザーによって送る商品が異なる場合は、「Aさんには玩具①と玩具②」「Bさんには玩具③」と1つひとつピッキングリストと突き合わせしながら作業をしなければならないので、ピッキングの工程が複雑なんです。

同梱物にも工夫していて、購入回数や誕生日などの記念日に応じてお届けするものを変更しています。こういった作業が自社出荷を採用しているからこその、きめ細やかなサービスです。

キッズ・ラボラトリー サブスク サブスクリプションサービス 玩具のサブスク 同梱物
同梱物のメッセージはスタッフが記載(画像提供は「キッズ・ラボラトリー」)
キッズ・ラボラトリー サブスク サブスクリプションサービス 玩具のサブスク 同梱物
誕生日に同梱しているメッセージカード(画像提供は「キッズ・ラボラトリー」)

発注、検品、仕入れ、受注、売り上げ、そして貸し出した物が戻り、その商品をクリーニングして在庫に反映させる――。レンタル系のサブスクリプションECは、入庫から出庫までの管理が非常に難しいですね。(青柳氏)

容易ではない顧客対応

サブスクの難しい点として、商品管理のほかに「顧客対応」をあげました。

青柳氏のレンタル系サブスクECでは、ユーザーが気に入った玩具があれば買い取りもできるサービスを提供しています。

また、コミュニケーションツールはメールのほか、LINEを導入しています。LINEは手軽に質問しやすい環境を提供できますが、一方で気をつかう点も多いそうです。

LINEでのコミュニケーションで難しいと感じる点の1つ目は、返信時間。朝の8時から20時までは玩具コンシェルジュが対応しています。以前はBotで対応していましたが、お客さまから多くのご意見をいただき、今はすべて有人対応をしています。

2つ目は、手軽にメッセージのやり取りができるツールであるため、さまざまな連絡や質問が届くこと。この対応はリソースがかかります。ユーザーからは「買い取りをしたい」「子どもが説明書を破ってしまった」「こういった玩具の入荷はないか」などのメッセージが寄せられます。玩具に対する感想を送ってくれる方もいます。また、契約していない方からも配送料やサービスについて質問がきます。

ただ、メールよりも作業負荷は軽減できます。メールではメールボックスを開いてメールを作成するといった一手間がかかりますが、LINEはさっと聞けます。「メールでの問い合わせなら恐らく来ないだろうな」という連絡がきますね。(青柳氏)

顧客対応の負荷軽減のため、Webサイトの充実に合わせてInstagramへの送客を実施しています。Instagramの公式アカウントにはサービスの説明、年齢別の事例など多くの情報を掲載。キッズ・ラボラトリーが発信した情報に加え、ユーザーがハッシュタグをつけて投稿してくれるのも大きなポイントになっています。「今や、Instagramなしの運営は考えられません」(青柳氏)。

システム面での課題

「現状、日本国内にはサブスクサービスに求められる機能にすべて対応しているカートシステムがない」と青柳氏は言います。

スクラッチで構築すると、開発費に数千万という費用がかかりますし、ノウハウも必要になります。サブスクビジネスを始めるには、一定のITスキルは必須。まったくITのスキルがない状態だと、サブスクビジネスを運営していくのは難しいと思います。(青柳氏)

サブスクに向く商品、向かない商品

サブスクサービスには多くの商品が扱われています。その中で向いている商品、向いていない商品を青柳氏に聞いたところ「消耗材が入っていないと難しい傾向があります」とのこと。

海外では電動歯ブラシのブラシ部分のサブスクが人気があります。理由は、ブラシの堅さや長さをユーザーが自分の好みに合わせて選んで使えることができるため。ユーザーとしても「いろいろ試しながら自分の好みの物が清潔な状態で送られてくるのは良い」と思うからですね。

サービスを通じて商品を使って比較して、自分が気に入る商品を見つけていくような商材は適していると思います。(青柳氏)

サブスク サブスクリプションサービス キッズ・ラボラトリー 青柳氏 玩具 米国のサブスク 電動歯ブラシ
米国で人気の電動歯ブラシのサブスクリプションサービス(画像は「shyn」サイトから編集部がキャプチャ)

反対に向かない商材は「ユーザーがサービスを使う間に商品について詳しくなってしまう物」だそう。

日本酒のサブスクは解約率が高い。なぜだかわかりますか?

「日本酒が好きだけれどよく知らない。キュレーションされるから試しに使ってみよう」と思いサービスを使い始めます。サービスではさまざまな日本酒がガイドブックと一緒に届くので、ユーザーが日本酒に詳しくなっていきます。日本酒はそこまで種類が多くないので、ある程度日本酒について知ると自分で選べるようになる。そうすると最終的に自分で好きなお酒を買うようになって、サービスを解約してしまうんです。

ユーザーが商品について詳しくなりすぎると、こちらからキュレーションしなくてもユーザー自身が選べるようになるので、続けにくくなるという問題がサブスクにはありますね。(青柳氏)

ユーザーのテンションを維持できるか

1回目の記事で「サブスクはLTVが高い」をいう話をしましたが、「ユーザーのテンションが高い状態を維持する」こともサブスクの特徴だと青柳氏は解説します。

アパレルや化粧品はテンションが高いのは商品を購入した時なんです。通販で購入した場合、商品が家に届いたときは購入時よりテンションは下がっています。

アパレルは服を着た時にまた新たな体験が得られるので良いかも知れませんが、化粧品はもっと難しい。化粧品は次にテンションが上がるのは効果を実感した時だけ。そのためCRMのスキームとしてユーザーに「使い続けて下さいね」とDMなどを送ってテンションを上げてもらおうとするんです。ただ、DMは一方向的になるのでユーザーとのコミュニケーションポイントが生まれにくい

サブスクでは翌月以降のサービスをどうするかやり取りをしたり、キュレーションすることによって双方向のコミュニケーションが生まれるので、ユーザーのテンションを維持しやすいというメリットがあります。(青柳氏)

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藤田遥

ネッ担編集部

保険系SE→ECサイト運営を経て、編集未経験でインプレスに入社し、ネットショップ担当者フォーラム編集者に。カレーとコーラが好き。

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