成功事例に学ぶサブスクリプションサービスで稼ぐためのポイント

サブスクリプションサービスビジネスを行う上で重要なポイントや成功例を、幼児向けおもちゃのサブスクを展開する「キッズ・ラボラトリー」代表取締役の青柳陽介氏が解説する

藤田遥

2020年9月7日 9:00

日本と海外のサブスクリプションサービスの違い、日本で成功しているサブスクビジネス、サブスクを運営する上で重要な点について、キッズ・ラボラトリー代表取締役の青柳陽介氏が解説します。

海外と日本のサブスクリプションサービス

海外の成功例

青柳氏は海外の成功したサブスクサービスとして、米国のカミソリのサブスク「Dollar Shave Club」をあげます。

ユーザーが指定した日にカミソリがボックス(箱)が届き、いつでも解約ができるというサービスで、特別価格で新規顧客を獲得し、2回目から通常商品などにつなげるツーステップマーケティングが主なマーケティング手法です。主に、Youtubeのユニークな広告で新規顧客を獲得して成功したと言います。

サブスクリプションサービス サブスク キッズ・ラボラトリー 青柳陽介氏 カミソリのサブスク
米国のカミソリのサブスク「Dollar Shave Club」(画像は編集部がキャプチャし追加)

日本でも成功するわけではない

「Dollar Shave Club」を展開していた企業を買収したのがユニリーバ。日本でも同じようなサブスクサービスを「Tokyo Shave Club」(運営はOpenUp)が展開しましたがうまくいかなかったそう。その理由について青柳氏は、「米国と日本ではカミソリのライフサイクルが違うから」と言います。

米国では「カミソリは消耗品なので、安いカミソリを常に清潔で新鮮な状態で保とう」という考えがあり、頻繁にカミソリのCMが放映されます。さらにカミソリ1本で全身のムダ毛を処理する文化があるため、カミソリのライフサイクルが短いんです。

一方の日本は、カミソリで全身のムダ毛を処理する文化がほとんどありません。どちらかというと、「高製品・高機能」をうたう文化です。この文化の違いでサービスが浸透しなかったのです。(青柳氏)

※「Tokyo Shave Club」に関する内容を追記しました。記事初出時に米国の文化として「脱毛」と記載していましたが、「ムダ毛」に修正しました。

商品に対する文化の違い以外にも、「商品が届くまでのワクワク感」が海外と日本では違うと青柳氏は指摘します。

米国は日本よりも圧倒的に土地が広いので、自宅と店舗の距離が異なることも要因の1つです。

米国の田舎は自宅近くにお店がないため、自分で商品を店舗に取りに行くことが圧倒的に多い。そのため、物が届くことに凄くワクワクするんです。

しかし、日本は国土が狭いため、比較的物が簡単に手に入る環境です。地方や田舎でも、アマゾンなどで商品を購入すればすぐに物が届く。一般的なネット通販ではあまりワクワクを感じません。

日本では「頼んだらすぐ物が届く」というのが価値として当たり前になってますが、広い大陸の米国では「やっと届いた!」という気持ちがあることが大きな違いでもありますね。(青柳氏)

日本の成功例:キャッチコピーを変えて成功「airCloset(エアークローゼット)」

成功例であげたのはレディースファッションのサブスク。

エアークローゼットはスタイリストが選んだ洋服が毎月届き、コースによっては交換ができるというサブスクリプションサービス。

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レディースファッションのサブスク「airCloset(エアークローゼット)」(画像は編集部がキャプチャし追加)

エアークロゼットのサービス開始当初、サイトのファーストビューには「あなたのもう1つのクローゼット」というキャッチコピーが表示されており、「これまでにない新しいファッションとの出会いを」をコンセプトに掲げていました。しかし途中からキャッチコピーは「毎日何着ようと悩むあなたに」へと変わりました。

サブスクには一度サービスインしたからこそわかる価値というものがあると思います。サービスを続けていく中で、「新しい価値はサービスを使わないと手に入らない」ということに企業が気付いたんだと思います。だからこそキャッチコピーを変えて、まずユーザーがサービスを利用しようと思えるようにしたのではないでしょうか。(青柳氏)

サブスクを運営する上で重要なこと

サブスクで成功した例を踏まえ、サブスクリプションサービスを運営する上で重要なポイントを聞きしました。

① 定額制

定額制で有名なSaaS型ビジネスとして「Salesforce」「Adobe Creative Cloud」「Netflix」をあげます。

クラウドベースのCRM「Salesforce」は定額サービスにアドオンをさせていく仕組みなので、サブスクではないそう。ただ、機能を使うたびに価格をプラスオンするので値段が上がる仕組みのため、サブスクリプションサービスのビジネスモデルとして参考になると言います。。

サブスクリプションサービス サブスク キッズ・ラボラトリー 青柳陽介氏 Salesforce セールスフォース
クラウドベースのCRM「Salesforce」(画像は編集部がキャプチャし追加)

皆さんご存じの「Adobe Creative Cloud」は一定金額を支払えば、金額内でさまざまな機能を使用することができ、機能をチェンジすることも可能です。

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「Adobe Creative Cloud」(画像は編集部がキャプチャし追加)

「Netflix」も決まった金額を支払えば、プラットフォーム内で好きな動画を視聴できる仕組みです。

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(画像は編集部がキャプチャし追加)

「Salesforce」は少し仕組みが違いますが、サブスクリプションサービスは「定額でどれでも使える」という点が非常に重要なんです。(青柳氏)

② キャンセルが自由 or 使い放題

「サービスのキャンセルや解約が自分のしたいときに自由にできることも大切と青柳氏。そして、「使い放題のプラットフォームだからこそユーザーは新しい体験ができる」と青柳氏は言います。

③ キュレーションによる双方向コミュニケーション

青柳氏は、サブスクリプションサービスには「定額制・キャンセル自由・使い放題」であることで生まれるユーザー価値があると言います。 。

第三者である誰かが「これが面白いよ」とお勧めしてくれることがキュレーションの肝。サブスクリプションサービスではキュレーションする人が多いことが特徴です。キュレーションすることで顧客満足度が上がり、結果的として売り上げも増加します

サブスクリプションにはARPU(アープ:ユーザー平均単価)という経営指標があるのですが、ARPUを上げることが最も重要です。実店舗での販売で、お客さまの名前を呼んだり、ニーズに沿った商品を提案する接客方法が良いとされていますよね。Webでも同じ方法を採ることが成功のカギになります。(青柳氏)

キュレーションを繰り返すことで生まれるユーザーとの接点の多さが、単品リピートや総合通販とは違うところだと青柳氏は指摘します。

キュレーションすること、ユーザーに「これはどうですか?」と提案することでユーザーから反応が生まれ、次の商品をチェンジしていくのもサブスクリプションサービスの特徴。企業とユーザーの間に双方向のコミュニケーションが生まれることが、他のビジネスモデルとサブスクリプションビジネスの違いですね。

双方向のコミュニケーションが生まれることによって、ユーザーは悩んだときなどに「あの企業に聞いたら教えてくれるかもしれない」という気持ちになる。そうするとユーザーにとって「サービスを使い続ける価値」が生まれるんです。

機能や商品ではなくて「ユーザーにとっての価値が生まれるからサブスクを続けよう」と思ってもらえる。

根底に使い放題のプラットフォームがあるからこそ、双方向のコミュニケーションが取れてユーザーは新しい体験ができる。新しい体験を通してユーザーにとってサービスを使い続ける価値が生まれる。それがサブスクの強みであり重要な点です。(青柳氏)

◇◇◇

「サブスクの専門家に学ぶサブスクリプションサービスの基礎と成功ポイント」のおさらい

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