楽天と日本郵便が新たな物流プラットフォームの構築など戦略的提携で合意。モバイル、金融などでも協業
楽天と日本郵便は12月24日、持続可能な物流環境の実現を目的とした戦略的提携に向け、基本合意書を締結した。
日本郵便の物流網やデータ、楽天が保有する「楽天市場」での需要予測や受注データの運用ノウハウなどを活用し、合弁会社の設立などを含めた新たなオープンプラットフォームの構築で協業する。
新会社設立を含め「物流DXプラットフォーム」を構築
基本合意の締結で、「両社の資産・知見の活用」「データの共有化と物流DXプラットフォームの構築」「共同物流拠点や配送網の構築」「新会社設立を含む物流DXプラットフォームの事業化」を行うと発表した。
2社の強みを生かし、ユーザーの利便性向上と業務効率化を両立
楽天が有する「楽天市場」の需要予測や受注データの運用ノウハウと、日本郵便の強みである全国2万4000か所の郵便局と配送網というリアルなネットワークを組み合わせ、「両社の資産・知見の活用」を進める。
「データの共有化と物流DXプラットフォームの構築」では、「顧客体験の向上」と「デジタル化による業務改善」の両立をめざす。
「顧客体験の向上」について、楽天の小森紀昭氏(執行役員 コマースカンパニーロジスティクス事業 バイスプレジデント)は、「ユーザーがより荷物を受け取りやすくなるよう、専用アプリの開発や、楽天IDを活用し、荷物の持ち込みやまとめて受け取りを行った際のポイント付与などを検討している」と説明。業務改善においては、高効率な配送システムの開発を考えているという。
合弁会社の設立も視野に
「新会社設立を含む物流DXプラットフォームの事業化」では、両社のデータを活用した事業化をめざす。さまざまなステークホルダーとの協業を検討しているといい、「楽天市場」以外に出店している店舗の荷物、他の事業者との連携も視野に入れているという。
金融・モバイルなども協業・検討進める
提携は物流面だけでなく、金融面におけるキャッシュレス決済サービスに関する連携、楽天モバイル事業拡大に向けた協業など、さまざまな事業分野で提携していくという。
合意した内容については2021年3月に締結を予定。最終合意書に盛り込んで順次、実装していくという。
安定した物流サービスの持続的な提供が課題に
戦略的提携を行った背景には、安定した物流サービスの持続的な提供がある。EC市場の拡大とコロナ禍における「巣ごもり消費」需要増加により、宅配便の取扱量が急増。こうした状況を受け、日本郵便の衣川和秀社長は「このペースで増加が続いた場合、手を打たなければ5年後に安定した配送を行えるか、危機感を感じている」と話す。
また、受け取り側のニーズの多様化も要因の1つとしてあげた。
小森氏は「非対面・非接触の受け取りや、『好きな時間に好きな場所で受け取りたい』『急ぎではないので、複数の荷物をまとめて受け取りたい』といったニーズの多様化がある」と説明。また、受け取り手のニーズに対応するため、荷主の要望も多様化しているという。
より一層強固な関係作りを進める
楽天と日本郵便は2017年から本格的な協業をスタート。楽天が運営する物流センター「楽天フルフィルメント」からの配送、「楽天市場」出店店舗への特別運賃提供など、さまざまな協業を行ってきた。今回の提携に際し、楽天の三木谷浩史氏(代表取締役会長兼社長)と衣川氏は次のようにコメントした。
楽天と日本郵便はこれまでさまざまな協力関係を築いてきた。この関係を大きく前進させるため、物流領域における提携をする。楽天のテクノロジーと日本郵便の配送網・アセットを組み合わせて、物流分野にDXを起こしたい。次世代の物流プラットフォームを構築し、可能な限りオープンな形でさまざまな事業者に展開し、持続可能な仕組みを構築してきたい。(三木谷氏)
楽天との戦略的業務提携に向けた基本合意は、日本郵便のDXを飛躍的に加速させるチャンスだと思っている。EC物流のバリューチェーン全体をテクノロジーで変革していく。郵便局を通じて、全国の物流問題に応えるとともに、ECに関わるすべてのステークホルダーが成長していける社会実現に貢献していきたい。(衣川氏)