通販新聞 2022/5/18 7:00

キューサイは3月25日付で、代表取締役社長に佐伯澄氏が就任した。売上高は、20年12月期を底に前期は4%増の256億円と回復基調に転じている。佐伯社長に今後の成長戦略を聞いた。

MOAのEC強化などを評価され、代表取締役に就任

――就任の経緯は。

キューサイ株主であるアドバンテッジパートナーズに、(家電通販の)MOAのEC強化など実績を評価してもらった。同じく株主のユーグレナの成長戦略の説明を受け、昨年10月に依頼された。

――健康食品、化粧品通販の経験は。

リピート通販はない。食品分野では「アマゾンフレッシュ」の立ち上げ、テレビ通販はジュピターショップチャンネルで事業戦略の立案、タイ事業の立ち上げに関わった。

――ここ数年、青汁のブランドイメージから脱却し、ケールを軸とした「ケール事業」への転換を進めていた。評価は。

青汁というベースがあることは強みだ。製販一体で高い品質の商品を提供できている。ただ、1つの商品でお客さまの健康すべてを支援できる時代ではない。購買行動も変化している。テレビ通販、コールセンターという接点だけでは成長に限界がある。

通販新聞 キューサイ 代表取締役社長の佐伯澄氏
キューサイ 代表取締役社長の佐伯澄氏

40代~50代へのアプローチ、システム投資に注力

――ここ数年は若年層の開拓にも力を入れていた。

まだ成果は出ていない。顧客基盤は65歳以上が8割を占めている。主要チャネルからシフトできておらず、伸びしろがある。

――前期は増収に転じた。回復の要因は。

デジタルへの着手、戦略商品への広告投資などやるべきことを適切に進めてきたことに尽きる。底を打った。ただ、資産である顧客基盤の活用の本格化はこれから。今期以降、成果が出始めると考えている。

――25年12月期に300億円の売り上げを計画している。何に取り組む。

1つは、現状よりやや若い層へのアプローチ。デジタルの売り場、接点強化に取り組む。収益性を高める上でも必要だ。すでにインスタライブなどSNSを活用したマーケティングも着手しているが、あらゆるチャネルで同じ顧客体験ができ、商品、情報の面で満足度を高めることができる接点を作らなければ若年層を引きつけることはできない

もう1つは、その実現のため、段階的に基幹、フロントサイトのシステム投資を進める。すでに着手しているが、年内に一定の成果が出したい。適切なCRMを確立できれば、膨大な顧客基盤を生かし、個別最適のサービス展開が可能になる。

ライフスタイルをトータルで支援していく

――ターゲットとする顧客層は。

40~50代の開拓を進めたい。主観年齢と実年齢の差を感じ始めるのが40代とされる。年齢を重ねることを前向きにとらえてもらうための商品、サービスを提供できている会社はまだ少ない。心身の健康を保ち年齢を重ねる「ウェルエイジング」を支援する企業として社会への浸透を図る。

――これまでと何が変わるのか。

ウェルエイジングを具体的に解釈した言葉として「“人生初”の体験をいつまでも」というメッセージを発信していく。年齢を重ねても人生初の体験に前向きに取り組めるような心身が充足した状態だ。

これまでのビジネスは商品を通じたケアなど対症療法的だった。たとえば、測定サービスを通じて心身の状態を自覚できれば、ケアすべきポイントを見える化できる。体験価値の提供を含め、食習慣、生活習慣、ライフスタイルに踏み込んでトータルで支援したい

通販新聞 キューサイグループのミッションとビジョン
キューサイグループのミッションとビジョン(画像は編集部が「キューサイ」サイトからキャプチャ、追加)

――個々のニーズは多種多様だ。現状の商品、サービスでは不足がある。総合サプリメント企業をめざすのか。

マルチチャネル、マルチプロダクトで顧客層を広げていく道もある。商品面の充実も必要だが、優先順位を定め展開していく。2年前に始めた医薬品通販もウェルエイジングの実現のなかで果たす役割は大きく、投資領域の1つ。

ユーグレナ社の知見も生かし、将来的には海外進出も視野に

――「ケール事業」は継続するのか。

ケールという軸は重要だ。ただ、健康への訴求だけでは響かない。他社とのコラボレーション商品、若年層向けの商品開発などを進める。事業は踏襲しつつ、健食、化粧品に続く第3の柱の育成が必要だと考えている。

通販新聞 キューサイが販売するケール商品
キューサイが販売する商品「ザ ケール」
(画像は編集部が「キューサイ」公式通販サイトからキャプチャ、追加)

――デジタル以外のチャネル開拓は。

ケールは、美容・健康意識の高い層にスーパーフードとして認知されている。これらの層と接点が多い美容室やヨガ教室も販路を開拓したい。GMSなど大手流通も拡大の余地は十分ある。また、原材料としてのニーズもある。将来的には海外販売も見据えたい

――ユーグレナ社とのシナジーは。

リテールビジネス、海外進出の知見は豊富なため、連携を進めたい。研究・商品開発でも協業を模索したい。

――ユーグレナ社の傘下に入り企業風土に変化はあるか。

九州地場でじっくり顧客に向き合い事業を構築してきた。反面、大人しさというか、対外的に打ち出していくエネルギーは弱かった。ベンチャー精神を持ち、スピード感を持って事業展開するユーグレナ社に学ぶ点も多い。就任と前後して、CRMやブランディングの担当役員の選任など新たに経営体制を構築した。

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