通販新聞ダイジェスト

景品表示法検討会の狙いは「ステマ対応」。消費者庁は独禁法の「確約制度」導入に関心

消費者庁が行う「景品表示法検討会」の狙いがステルスマーケティング規制であることが、通販新聞者の調査によって判明。消費者基本計画工程表の改定案に明記しているという

通販新聞

2022年5月25日 7:00

消費者庁が行う「景品表示法検討会」の狙いが、ステルスマーケティング規制であることが本紙の調べでわかった。5月12日、自民党「消費者問題調査会」で消費者庁が示した、消費者基本計画工程表の改定案に明記されている。これまで、検討会の狙いは明確に示されてこなかった。独占禁止法に導入されている「確約制度」は、消費者取引に近い領域で対応事例も増えており、景表法への導入を視野に入れているとみられる。

ステマ対応は「いくつかある課題の1つ」

工程表は、年1回、消費者行政の進捗を踏まえ改定。今年度は6月をめどに公表する。自民党部会で説明された改定案では、「検討会においてステマの対応を検討」と触れている。

ステマ対応について、表示対策課は、「メインではない。いくつかある課題の1つ」と話すにとどめる。工程表の改定を担当する消費者政策課も「必ずしもメインテーマではない。検討会は、景表法全般の課題について議論する」とする。ただ、両課とも検討会会合で複数の委員が言及したこともあり、重要課題とは認識している

米国や欧州では、ステマについて、その内容が虚偽誇大であるかを問わず、「広告」と明確に示されなければならないとの共通理解で規制が行われているという。同日の検討会第3回会合で、ヒアリングを受けた学識経験者が説明した。法規制の対応例もあるとする。中川丈久座長は、「独占禁止法をさらに超えて、欧州の工夫している部分に追いつくべきか、次回会合の検討課題」とする。

「確約制度」は不当表示全般の命令以外の対応を念頭に議論

また、同会合では公正取引委員会が、独禁法の「確約制度」について説明した。

通販新聞 確約制度について
独占禁止法の「確約制度」の流れについて

「確約制度」は、独禁法違反の疑いのある行為について、公取委と事業者の合意により協調的に解決する仕組み。18年末、TPP協定の発効を受けて導入された。事業者が提出した改善計画を認めた場合、排除措置命令など違反認定せず、調査を終了する。

通販新聞 確約制度について
「確約制度」について(画像は公正取引員会の資料から編集部がキャプチャし追加)

最近では、ラーメンチェーンの一蘭が家庭向けカップ麺などの販売をめぐり、小売業者に販売価格を値下げしないよう強制した「拘束的条件付取引(再販売価格の拘束)」の疑いで調査を受けた。一部報道によると一蘭が確約制度に則り、改善計画を提出したという。

公取委は、「審査の有無などは公表していない」、一蘭は「審査は事実」としつつ、確約制度の活用は「詳細を答えられない」とする。BtoBだけでなく、消費者取引に密接に関わる事案でも確約制度の利用は増えている

中川座長は、景表法規制について「少なくとも独禁法まで追いつく必要がある」と第3回会合で言及。「確約制度」を想定した発言とみられる。表示対策課は確約制度について「不当表示全般の命令以外の対応を念頭に議論するもので、ステマだけを想定したものではない」とする。

「確約制度」導入に関心、返金措置など柔軟な対応を想定

景品表示法検討会の第3回会合では、独占禁止法の課徴金制度と確約制度、海外の広告規制のヒアリングが行われた。

確約制度は、入札談合や価格カルテルなど一部を除く違反行為が対象。金銭回復措置など、排除措置命令では命じることができない措置が盛り込まれることがある。

調査開始後、公取委の通知を受け、事業者が確約計画を作成・申請する。認定した場合、公取委は違反認定を行わない。認定されない場合は、通常の調査により命令が行われる。司法取引がイメージに近い。

是正措置以外に、被害回復など柔軟な措置が取れる意味で、複数の委員が関心を持つ。米国では、確約にあたる同意命令で、サプリメントの購入者に返金を行った事例がある。独禁法でも、取引上の被害を受けた事業者に返金が行われた前例がある。すでに独禁法に導入されており、法改正において法制局の審査も通りやすいとみられる。

被害回復は通常、当事者間の民事訴訟で争われる。確約は、違反認定ではないため、独禁法の排除措置命令に適用される無過失損害賠償責任(違反行為の被害者が損害賠償を請求できるもの)はない。確約の返金措置は、中小事業者の被害回復で、独禁法が目的とする「公正な競争環境」を早期に回復する目的から前例がある。

「確約制度」活用ハードル高まると実効性の確保が困難に

一方の景表法は、消費者庁への移管で競争法から、消費者保護を目的とする消費者法に法目的が変化した。BtoC取引中心の規制であるため、被害回復との親和性も高い。ただ、確約制度活用のハードルが高まれば事業者の利用が進まず、結果的に迅速な事件処理など実効性が確保できなくなる可能性もある

表示対策課の南雅晴課長は、確約を通じた被害回復について、「行政法違反行為は、そのまま民事、私的紛争における侵害行為になるわけではない。(損害賠償は基本的に)当事者同士で損害に関する主張・立証を行わないといけない枠組み」とする。

次回会合は6月23日。これまでの議論を踏まえ、消費者庁が、検討の方向性を示す素案を提示する。

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