共通IDの導入+メタバース活用など阪急阪神が進める「DXプロジェクト」とは
阪急阪神ホールディングスは、グループをあげて「阪急阪神DXプロジェクト」に取り組む。
グループ共通ID「HH cross ID」の活用、オンライン上のバーチャル空間であるメタバースにおいて新しいサービスの展開に挑戦。動画配信プラットフォームの整備も行い、顧客の裾野拡大や動画の配信コストの内部化などを図ることを検討、デジタル化を進め顧客満足度の向上につなげていく。
「阪急阪神DXプロジェクト」は、①顧客を「知る」取り組み②顧客に「伝える」取り組み③顧客が「デジタル時代の利便性」を最大限享受できる取り組み④グループの強みであるコンテンツを磨き上げる取り組み――の4つの取り組みを推進する方針を掲げている。有機的に結び付けて実行していくことで、顧客の利便の向上、新商品の開発・サービスの改善を図り、好循環を実現していく。
顧客を「知る」取り組み
既存顧客の情報に横串を刺す形でグループ共通 ID「HH cross ID」を導入している。グループ横断的に顧客データを統合し、当該データを蓄積・分析。One to Oneマーケティングや各事業間の相互送客を実現し、 ロイヤルカスタマーの拡大などを図る。新たな商品・サービスの開発などにも活用する。
構築した「HH cross ID」に係るプラットフォームを活用し、Eコマース・決済サービス・カスタマーサポートなどグループのサービスで共通利用できるプラットフォームの整備を加速。顧客データの統合を進めていく。
2021年に設立した東京大学との産学連携「データ分析ラボ」を通じて、延べ約500万人分のデータ分析を実施、現状の理解(認識)や問題把握を進めている。統計解析や最新の機械学習などのさまざまな手法を駆使し、延べ約1200万人に上るグループの顧客データの活用に向けて分析を進めていく方針。
顧客に「伝える」取り組み
スマホアプリなどのデジタルツールを通じて、顧客接点を拡充。交通広告などの既存媒体と組み合わせることで、告知効果を最大化する。
既存事業で開発済のアプリに加え、グループサービスの窓口として、外出を快適にする機能を搭載したアプリ「HH cross TOWNS」の運用を2022年5月に開始。クロスセルを行いながら、顧客とのつながりのさらなる強化を図る。
顧客が「デジタル時代の利便性」を最大限享受できる取り組み
無料Wi-Fiサービス 「HH cross Wi-Fi」の展開エリア拡大を通じて、顧客の利便性向上を図る。また、Wi-Fiサービスなど「HH cross ID」で得られる複数の利用データを組み合わせて、サービスの利用場所やシーンを分析、新たな商品・サービスの開発につなげる。
メタバースにおける新サービスの展開にも挑戦する。2021年から2022年にかけてデジタル化した阪神甲子園球場での展示会「デジタル甲子園」、大阪梅田の街を舞台にした音楽祭「JM梅田ミュージックフェス」などを実施。取り組みを拡大し、新たな収益源となるよう集客力を高めていく。
動画配信プラットフォームの整備もする。グループが保有する豊富なコンテンツを配信できる独自のプラットフォームを自社で構築。顧客の裾野拡大や動画の配信コストの内部化などを図ることを検討している。旅行などのコンテンツも充実させ、顧客満足度の向上を図る。プラットフォームの利用データも「HH cross ID」とひも付ける。
グループの強みであるコンテンツを磨き上げる取り組み
整理できていなかったコンテンツなど、デジタル技術を活用しながら集約・蓄積、系統立てて整理し、アーカイブ化。京阪神エリアで展開する事業フィールドにおいてコンテンツを新たに発掘するなどして、その価値の創出・魅力度の向上を図る。
リアルで展開している事業をデジタルで展開することについても検討、外部のパートナーと連携しながら、新たなコンテンツの開拓に挑戦していく。
「阪急阪神DXプロジェクト」の取り組みは、まずはグループの沿線においてビジネスモデルを構築する。高機能なプラットフォームを低コストで利用できることをインセンティブとしてパートナー企業を拡大、沿線外も含めた関西エリア、関西以外の他地域での展開もめざす。