購買の9割は実店舗。オンラインにも貢献するオフライン購買データの活用法
加速度的に自社ECやプラットフォームEC、ソーシャルコマースといったオンラインコマースビジネスが拡大しています。こうしたなか、企業内のデジタル担当者は、売上増や効率改善を課題にオンラインを中心とした施策に注力する一方、オフラインと統合した施策に対しては手があまり付けられていない状況にあるのではないのでしょうか。
実は、オンライン同様にオフラインにおけるデジタル化も進んでおり、購買データ1つを取り上げてもできることが増えているのです。今回は、オフライン施策を最初から領域外のものと振り分けず、購買データを上手く利用しオンオフ両方の対応をしていくことで、オンラインにも良い影響を与える活用法を紹介します。
オンライン、オフラインそれぞれの購買行動特性
生活者の購買のECへの移行は急加速しています。2022年のECを含む通信販売の規模は前年比7.6%増の約13.6兆円、中でも元々大きな構成比を占めている家電製品・パソコンのカテゴリーでは前年比9.8%の伸びと予測されています※1。
一方で、2020年のBtoC-ECにおけるEC化率8.08% ※2が示すように、いまだに購買の90%以上がオフラインで行われていることも忘れてはならない事実です。つまり企業は、情報があふれ趣味嗜好が細分化されている現代のユーザーを、オン・オフ両方の購買行動特性からしっかりと捉え、そのデータを施策に活用していく必要があると言えるでしょう。
※1:富士経済「通販・eコマースビジネスの実態と今後2022」
※2:経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
まず、オンラインとオフラインの購買行動における特徴を見ていきましょう。購買までのユーザーの意識がそれぞれ異なり、大まかに分類するとオンラインは計画購買をする傾向が高く、オフラインは非計画購買が発生しやすいと言われています。
たとえば、どこで購入をすると一番得か、そもそもその商品を買うべきかレビューを参照したり、類似商品と比較検討したりするなど、購入するモノを検討する時はオンラインが向いています。
一方で、自身が興味ないモノ、買う予定がないモノ、そもそも知らないモノに関してはオンラインの購買は発生しにくいでしょう。その点、オフラインでは接客やマーチャンダイザーによるレコメンドなど、衝動的に購買する要素がそろっているため、ある程度強制的に視認させることで、目的外のモノの購買が期待できます。
こうした購買行動の違いから、たとえば「新規顧客獲得」を狙うなら、購買のボリュームが大きく非計画購買が発生しやすいオフラインが重要なチャネルになることがわかります。
オフラインを攻略するための購買データ
オフラインでの購買をより施策に生かすためのアプローチの1つとして、購買データがあげられます。オフライン購買データとは、実店舗において各小売やポイント事業者が持つユーザーが購入した時のデータのことで、商品の買われ方、つまり「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「いくつ」「いくらで買ったのか」を把握することができます。
日用品、飲料・食品といったFMCG(Fast Moving Consumer Goods:日用消費財)カテゴリーの購買活動は、購買までのカスタマージャーニーが短く、オンライン上の閲覧などによる比較検討行動が発生しないことが多いため、オンラインデータではどんなユーザーがどのようなモノを購入しているか知ることができません。
このような場合、ユーザーをより深く知るためにオフライン購買データを活用します。これをIDと連携させることで、何が購買に寄与しているのかという「購買から逆算したプランニング」が可能になります。まとめると、購買データを活用することによって、
- Web上の行動データだけでは把握ができないユーザーの分析が可能
- 購買の可能性が高いユーザーへのアプローチが可能
- 実際の購買に寄与しているかどうかの測定が可能
といったポイントがあげられます。つまり、オンライン施策が苦手とする新規顧客獲得を行いながら、オフライン施策にありがちな、施策効果が見えないという双方の課題をクリアすることが期待できるのです。
購買データを活用した具体的なアプローチとして、新規顧客獲得を例に紹介しましょう。
① 0次分析、広告配信による新規顧客へのアプローチ(分析/配信)
購買データや属性データを連携した分析を行い、購買者や購買可能性のあるユーザーを可視化します。この分析を基に、購買者や非購買者などアプローチしたいユーザーのペルソナを作成。各メディアでターゲティングし広告配信を行うことで、実購買データを活用したセグメント作成と新規顧客へのアプローチが可能となります。
現在こうしたデータ活用に特に積極的なのはドラッグストアで、他にもコンビニエンスストアやスーパーマーケットが追随しています。また、各データの活用パートナーやポイント事業主においても購買データを活用したソリューションを独自で提供しており、各企業は数多あるソリューションのなかから、自社商品の購買ボリュームの大きいチャネルや実施目的などに合わせてプランニングしていく必要があるでしょう。
② 販促プロモーションによる新規顧客へのアプローチ(プロモーション)
①の効果を増やすためにも、サンプリングや「マストバイキャンペーン」(購入を条件としたインセンティブキャンペーン)といったプロモーションを実施し、トライアルを促進していきます。一度試してもらい良質な体験を提供することで、直接その後の継続利用につながり、間接的にもそれ以降のオンライン上での比較検討時に商品を想起させることが期待できます。さらに店頭メディアと組み合わせることで、オフライン特有の衝動的な購買を促進することも可能です。
③ 施策実施後の効果検証&EC誘導(計測/分析)
オフライン施策を実施後それだけで終えるのではなく、効果検証やECへの誘導を促すことでオンラインへの貢献を実現します。効果検証では、施策による購買リフト(どれだけ購買があがったか)はもちろん、購買者やキャンペーン参加者分析を行うことで、次回以降のコミュニケーションに活かすことができます。
たとえば、分析した属性や興味関心に合わせたメッセージやキャンペーンを設計し、アプローチすることで継続的な購買を促します。さらに、継続購買に向けた直接的なアプローチ以外にも、ユーザーが日常的に接触しているLINEのようなプラットフォームを活用し、各ユーザーに合わせたメッセージ配信することで、ECへの誘導がよりスムーズになるでしょう。
「オフライン施策は手間がかかって効率が悪い」というイメージがまだまだあるかもしれません。しかし、オンライン上だけではアプローチができないユーザーも存在しているのが現状です。そうした時、新規顧客の獲得効率だけに目を向けるのではなく、オフラインチャネルの活用など施策ごとに目的をカスタマイズしていくことで、EC事業全体への貢献が期待できるでしょう。