労働分配率から導く“儲かるネットショップ”“成長するネットショップ”の条件
ネットショップをビジネスとして成長させるには、まずは従業員の幸せを第一に考えていくことが必要条件です。EC業界では過去、勘違いをして「とにかく売り上げを伸ばす」ことを優先し、結果的に息切れして失速したり、倒産していくネットショップがたくさんあったのは記憶に新しいところです。こうした失敗から、従業員の幸せとともに成長するための企業作りを学びましょう。そのためにも、「労働分配率」を利用することで“儲かる”企業を作ることが必要です。
“儲かる&成長するネットショップ”は目標設定ができている
“成長するネットショップ”と“失速するネットショップ”の大きな岐路は、「労働分配率」を活用した目標を持てっているか、否かです。業務効率を改善し、お客さまが集まる仕組みを作るために、「労働分配率」の割合を何%にするのか把握してみることが重要です。
会社には「潰れやすい会社」と「潰れにくい会社」がありますよね。これは売上高の差ではなく、利益率や諸経費の違いによって現れてくるものです。「儲けて、従業員も幸せな会社」を作るために、「労働分配率」を理解しましょう。
その前に。ネットショップの従業員の幸せを考える指標の1つである「給与」ですが、あなたのネットショップの従業員の給与はいくらですか?
日本の主な通販企業の平均年収(平成25年7月-平成26年6月間の決算時データ)を記載してみましたので、御社の給与水準と比べてみて下さい。
ニッセンホールディングス | |
ネットプライスドットコム | |
オイシックス | |
MonotaRO | |
アイケイ | |
スクロール | |
ストリーム | |
ベルーナ | |
健康コーポレーション | |
ティーライフ | |
夢みつけ隊 | |
ケンコーコム |
この「給与」を決める1つの指標として「労働分配率」があげられます。付加価値(企業が生産、販売などの活動で新らしく生み出した価値)のうち人件費の占める割合を指したものです。
「労働分配率」について、「低い方が人件費の占める割合が少なくていい」と考えてはダメです。EC企業の成長はやっぱり“人”ですよね。スタッフの意欲アップを図るため、あらかじめ労働分配率を何%と設定し、実績に応じて給与を上げたり、ボーナスをアップさせる企業もあります。そのためにも、まずは自社の労働分配率を把握する必要があるのです。
労働分配率を算出する方法は次の計算式です。
人件費について、小さなネットショップの場合は、オーナーが自分で好きなだけ給料を決める傾向があるので、労働分配率にオーナーや社長の給料を入れて計算するとめちゃくちゃになってしまいがちになります。社長の給料は入れずに、従業員給与総支払額で計算しましょう。ほかに、人件費として捉える項目として、代表的には退職金、法定福利費、福利厚生、通勤費、教育費なども加えるべきです。
ネットショップの付加価値は次のような計算式になるでしょう。
まずは、自分のネットショップの労働分配率を過去複数年で算出し、自社の給与トレンドを調査することがスタートです。
あなたの会社の労働分配率の数字が出せましたら、まずは業界の平均と比べてみましょう。この時どこと比べるのか? これがネットショップの社長の大きな決断となります。
ネットショップでは、取り扱う商品ジャンルや、メーカー通販、卸通販、小売りなどさまざまなビジネスモデルが存在しますので一概には言えませんが、総平均の指標として捉えると、“健全なネットショップの労働分配率は、40%がデファクトスタンダードラインになるでしょう(J-FECベテラン会員談によるヒューリスティック分析)。ちなみに、小売業界の労働分配率は30~40%といわれています。
インターネット検索で「労働分配率」を公表しているネットショップを探しても、見つけることはできません。ベンチマークとなる店舗などに関する情報は、団体のイベントなどを通じ、ネットショップ経営者さんたちとの情報交換で得ることができます。実はこれ、社長の重要な仕事になんですよ。
スタッフ一人一人が会社の「付加価値」を生み出す意識を持つことが重要
たとえば、自分のネットショップの労働分配率が37.5%で、目標店舗が40%だった場合、どのように考えればよいか説明しましょう。
想定される改善策
- 利益を留保し過ぎなので、社員1人当たりの給与をアップさせる
- 従業員に負担が重くなっているので、差の2.5%を社員数増加の原資とする
- 目標店舗より販売価格を引き下げ(付加価値を減らす)、さらに安く売って消費者へ還元する
などなど、いろいろな考え方ができます。
この時、どう決断するのかによって、“成長するネットショップ”と“失速するネットショップ”の大きな岐路となります。
“成長するネットショップ”になるために必要なことは、業務効率を改善し、お客さまが集まる仕組みを作るため、「労働分配率」の割合を何%にするのか設定することです。“儲かるネットショップ”を作る上で目標設定は重要なことです。それによって、どんな投資をしていけばいいのかなど対策が見てくるはずですよ。
次は実際にどうやって「付加価値」を高めていくのか、考えてみましょう。何人の従業員でどのくらいの「付加価値」を生み出しているのかが付加価値総額になります。つまり従業員一人一人の「付加価値」の総和が会社の「付加価値」ということです。
従業員一人一人に「付加価値」を生み出さなければ会社は成り立ちませんので、手がけている仕事すべてが「付加価値」につながる、と考えるクセをつけましょう。
そう考えると、店長が付加価値の低い出荷業務をしてはいけないという結論になります(出荷業務をしている店長が運営しているネットショップの付加価値が高いはずがないですよね)。
スタッフ一人一人が、自分自身で生み出さなければならない付加価値に対して、どれだけのパフォーマンスを出していますか? それこそ“仕事の質”という話になりますよ。
従業員全員が仕事の質を意識することが重要です。
一人一人が最高の付加価値を生み出していくには。つまり……
- ITでできることはシステムに任せる
- 外注化できることはアウトソーシングする
- アルバイトに任せることができることはアルバイトにやってもらう
- 契約社員にできることは契約社員にできるようにする
このように、効率を上げる仕組み作りが、最終的に従業員の幸せを武器にしたネットショップとなります。
一般財団法人日本電子商取引事業振興財団(J-FEC)では健全なネットショップの研究をしています。労働分配率が気になったらJ-FECに集まりましょう。
一般財団法人日本電子商取引事業振興財団(J-FEC)からのお知らせ
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