通販・EC市場は2035年に18.6兆円へ、ECモール市場は13.1兆円に拡大【富士経済の予測】
富士経済が公開した通販・EC市場の実態調査「通販・e-コマースビジネスの実態と今後 2025」によると、通販・EC市場は2035年に18兆6379億円へ拡大すると予測した。このうちECモール市場は13兆1870億円と推計。ネットスーパー市場も拡大し、2026年に市場規模は3130億円になると予測した。
国内の通販市場(物販)
2024年の通販市場(物販)は15兆円超で前年比2.8%増。実店舗でのECへの誘引やプロモ―ションなどの施策に加え、輸入越境ECやネットスーパーの台頭がけん引したとしている。大手仮想ショッピングモールも同様に、堅調に成長したという。
商品カテゴリー別では、物価高騰からセール時にまとめ買いが増えている食品・生鮮品、人気の韓国コスメなど商品ラインアップが豊富な化粧品が好調を維持。一方、需要そのものが伸び悩んでいる家電製品・パソコン、家具・インテリア・寝具は伸びが鈍化している。電子書籍やサブスクサービスへの需要流出が続く書籍・ソフト、健康被害問題の影響を受けた健康食品は前年割れとなった。
今後は、食品・生鮮品や生活雑貨、化粧品など最寄り品を軸とした商品の買い回りが進むと予測。ECを中心に利用頻度が高まり、2035年の市場規模は2024年比で13.9%増の18兆6379億円に拡大すると予想している。
EC全体
ECは、仮想ショッピングモールや専門型ECの台頭、カタログ通販やテレビ通販などからのシフトによって市場が拡大。2024年の市場規模は前年比3.5%増の14兆6801億円となった。物価高騰によりセール時のまとめ買いが増え、モールなどがセール時の販促を強化して需要を取り込んだ。一方、商品のカテゴリーや価格帯などによってどのチャネルで購入するかが消費者のなかで定着しつつあり、新規ユーザーが減少していると指摘している。

今後も市場は拡大すると予想している。GMS・SM、仮想ショッピングモールが注力するネットスーパーが店頭やWeb上でのプロモーション、新規利用者に向けたクーポンの配布、配送エリアの拡大などによって利用者数の底上げを進めているため。2035年の市場は2024年比で15.4%増の16兆9480億円に達すると予測した。
仮想ショッピングモール
「Amazon.co.jp」「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」などの仮想ショッピングモールの2024年市場は、下期のセール時は好調だったが、セール時以外は苦戦するケースが目立った。市場規模は前年比2.4%増の11兆4157億円。今後もセール時の需要集中は続くと見ており、日常的な利用を促進するため最寄り品のラインアップ拡充や定期便サービス、ネットスーパー事業などの取り組みを強化している。そのため市場は引き続き拡大すると予測、2035年には2024年比で15.5%増の13兆1870億円と見込んだ。
注目商品カテゴリー別市場
調査では注目商品カテゴリーとして食品・生鮮品、化粧品をあげた。

食品・生鮮品の2024年市場は前年比5.2%増の2兆7996億円、2035年は2024年比で28.0%増の3兆5840億円と予測した。
2024年は震災が発生したことから防災・保存関連の食品、実店舗で欠品となった米の需要が急増。通販適性の高い清涼飲料やアルコール飲料、おせち料理や海鮮類といった高単価商品の通販購入が定着し拡大した。通販適性の高い商品のECでの購入が定着化しているほか、ネットスーパーが配送エリアの拡張、サービスの向上により利便性を高めていることから、今後も市場規模は拡大するとした。
化粧品の2024年市場規模は前年比4.1%増の9227億円、2035年は2024年比14.5%増の1兆562億円と予測した。
2024年は韓国系コスメ人気の高まりを背景に、実店舗では取り扱いが少ないブランドや新興ブランドが仮想ショッピングモールを中心に販売を伸ばした。このほか、百貨店系のカウンセリングブランドなどがECで販売を伸ばしたことも寄与した。今後も百貨店や化粧品専門店の店舗数減少が避けられないなかで、将来的な需要流出を防ぐためにEC販売に注力する企業が多いことから、市場拡大が続くと予想した。
ネットスーパー市場
ネットスーパーの2024年市場規模は前年比6.3%増の2710億円。参入企業が初回配送料無料キャンペーンや実店舗でネットスーパーのプロモーションを進めるなど、オムニチャネル戦略を強化。2023年から本格展開している倉庫型配送型サービス「Green Beans」(イオンネクスト)や「Amazon Fresh」(アマゾンジャパン)が対応エリアの拡大を進めたことで、市場は続伸となった。

ネットスーパーは燃料費や人件費が高まる中で収益性の確保や、競合関係にある「Uber Eats」などのデリバリープラットフォームや生協宅配などとの差別化が課題となっている。ただ、今後も利用の定着や対応エリアの更なる拡大、サービスの向上により市場は拡大が続くと予想。2026年市場は2024年比15.5%増の3130億円と予測している。