瀧川 正実 2014/5/12 16:10

ヤフーが昨年10月に発表した「eコマース革命」。約半年が経過した4月25日、ヤフーは14年3月期通期業績を発表、営業利益ベースで100億円のマイナス影響となったことを明らかにした。「eコマース革命」は業績にどんな影響を及ぼし、今後、どのような戦略を立てていくのか。「eコマース革命」の影響を考察してみる。

 

ECに携わる事業者、メディアなどからも注目を集めた「eコマース革命」。その内容は、「Yahoo!ショッピング」のストア出店料(月額2万5000円)と売り上げロイヤルティ(1.7%~6.0%)を無料化したもの。加えて、「Yahoo!オークション」の出品手数料や、落札者がプレミアム会員である条件などを撤廃した。

販促費に40億円など、営業利益で100億円のマイナス要因

「ECではロイヤリティの無料化による減収。攻めにいく以上、販売促進費も投じたので、利益は1桁(の成長)。利益を無くすくらいの投資をECに行っているので、(eコマース革命がなければ)売上高と並んで利益も2桁に届いていたのではないか」。4月25日に行われたヤフーの決算説明会。宮坂学社長は全体の業績に与えた「eコマース革命」のインパクトをこう説明した。

ヤフー全体の業績を見てみると、売上高は前の期比12.6%増の3862億円、営業利益は同5.9%増の1974億円。「eコマース革命は売上高で60億、販促費を積極的に投入したので、費用側で40億円の影響を受けた。(無料化に伴う)売上高が落ちたことにより利益も下がり、40億円の販促費が加わったので、(営業利益は)半期で100億円くらいの影響があった。eコマース革命がなければも2桁成長ができたかもしれない」。大矢俊樹・執行役員最高財務責任者もこのように「eコマース革命」の影響を説明する。

「eコマース革命」の影響を具体的に見てみる。ショッピングモールやオークションなどのコンシューマ事業の売上高は同0.8%増の1018億円。微増の主因は「eコマース革命」による、手数料収入などの減少だ。宮坂社長、大矢氏の説明によると、「eコマース革命」によって、2014年3月期の下半期だけで100億円の営業利益が吹き飛んだ計算になる。その影響を受けたため、コンシューマ事業の営業利益は2四半期連続のマイナス成長。第3四半期はマイナス1.5%、第4四半期は同1.3%だ。

だが、こうしたマイナス要因は将来の成長には欠かせない先行投資。「足腰は強くなっている」(宮坂社長)と、成長への土台作りが少しずつ固まりつつあるとの認識を示している。

マイナス成長の要因である100億円の投資効果はどうだったのか。一つの指標として上げられる流通総額(モールやオークションのサイトなどで商品が売れた金額)を見てみる。

2014年3月期におけるコンシューマ事業部の流通総額は同7.6%増の1.7兆円。モールの運営にあたるショッピング関連事業の流通総額は同5.2%増の3227億円だった。第4四半期だけでは、同20.5%増の888億円と大躍進。月次の取扱高成長率を見ても、2013年前半から同9月辺りまでマイナス成長が続いていたが、eコマース革命後はV字回復を見せ、右肩上がりの成長を続ける。2014年3月度の成長率は35.8%と驚異的な伸び率を記録した。

宮坂社長はeコマースの戦略についてこう力説する。「最初にやるべきことは売り手の数を増やし、商品の数を増やす。これが一番大事である」。eコマース革命後、出店店舗などを示すストア数は14年3月末時点で7万8307店と前年同月比約6万点増加。商品数も13年3月末と比べても約4割増の100万点近くまで品数が増えている。

ヤフーの「eコマース」戦略における今後の方針

ヤフーはショッピングの流通総額を増加させ、広告売上高を拡大するためのエコシステムを回していきたいと考えている

ショッピングの出店者数は100万店まで広げる方針

「eコマース革命」が始まり6カ月強。第4四半期は消費増税前の駆け込み消費という特需もあり、2013年度後半は流通総額が堅調に伸びた。ただ、こうした数値を額面通りに受け取るのは時期尚早だろう。消費増税が始まり、これからが「eコマース革命」の真価が問われることになるからだ。

昨年10月に孫正義会長が掲げた「201X年までに商品数と流通総額でナンバーワン」。この目標達成のため、ヤフーは今年に入り地方自治体と連携、運営する仮想モールで全国各地の特産品を販売する試みを1月から開始するなど施策を打ち始めている。関係者によると、「ヤフーショッピング」の出店者数は将来的に100万店舗まで増やす方針をヤフーは掲げているという。現在の10倍超にあたる規模だ。「BASE」「Stores.jp」といったECに関する無料サービスなど、さまざまな企業と連携し、出店する事業者や個人の出店母数拡大を図ると関係者は推測している。

また、イー・アクセスの株式の99.68%、親会社のソフトバンクから6月2日に取得し、日本初のネットキャリア事業に参入する。この取り組みがショッピングなどに与える影響について宮坂社長は「ECもポジティブな役割になる」とコメントし、ネットキャリア事業とECの連携を視野に入れる。「商品数と流通総額でナンバーワン」となるため、ヤフーは次々と新たな一手を打つ下準備を進めているようだ。

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