「送料は当社負担という表現に」 物流コストの負担関係明確化を、経産省審議官が協力要請
経済産業省の佐々木良審議官が通販・EC事業者に、送料無料に関する物流コストは誰が負担しているのか、それを明確化するよう協力を求めた
公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)が6月20日に東京都内で開催したJADMA総会記念パーティーで、経済産業省の佐々木良審議官(商務流通・国際博覧会担当)が通販・ECの物流面を取り巻く環境について触れ、「(送料無料と記載する際は)送料は当社負担というような表現にしていただきたい」と、通販・EC事業者に呼び掛けた。
政府は2013年6月、政府における物流施策や物流行政の指針を示し、関係省庁が連携して総合的・一体的な物流施策の推進を図るものとして「総合物流施策大綱(2013-2017)」を閣議決定した。
その中で、送料無料記載にまつわる問題として、「送料無料と銘打った商品の販売が広く行われ、消費者が物流コストを正しく認識しづらい状況にある」と指摘されており、佐々木審議官の発言は、この状況を改善したいという意向を示したもの。
佐々木審議官は、「送料無料と言うと物流はそうしたモノなんだという社会的な扱いを受けてしまう。送料は当社負担というような表現にしていただいて、この問題の改善・対応にご支援をいただきたい」と通販・EC事業者に協力を求めた。
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数年前から通販企業では、「送料無料」を問題視する声が上がっている。「配送キャリアに勤める夫が送料無料のあおりを受けて、過酷な労働を強いられている」。かつて通販業界を取材していた際、そのテレビショッピング企業のコールセンターにこんな苦情が寄せられたことがあると広報担当者から聞いたことを思い出した。
「○○○○円以上は送料無料」。EC業界を中心に定着しつつある送料無料は、価格競争、コスト競争の引き金を引いたことは否めず、そのしわ寄せは物流業界に飛び火。物流費の削減が標的にされ、そのあおりを喰ったのが、物流支援や配送会社だろう。近年の配送キャリアの値上げは、こうした影響を受けたことは否めない。
そもそも、サービスには相応のコストがかかるものではなかったのか。実店舗に買い物に行くには電車やガソリン代などのコストがかかる。ネットでの買い物も一緒で、相応のコストがかかるのは当たり前。通販・ECで発生するコストは、実店舗で例えるならば電車賃やガソリン代に当たる。
荷物はタダで運ばれているわけでない。まずは消費者に誰が送料を負担しているのかを伝えることは、事業者に課せられた責務でもあるのではないだろうか。「送料無料と言うと物流はそうしたモノなんだという社会的な扱いを受けてしまう」。佐々木審議官が一石を投げた言葉を業界改善の試金石にしたい。