日本のお茶を世界へ─ 京都おぶぶ茶苑、900人のオーナーが支える茶畑
ここは京都府相楽郡和束(わづか)町。JR加茂駅から路線バスに40分ほど揺られてたどり着いた緑がまぶしい茶畑。今回はお茶のネット通販を手がける京都おぶぶ茶苑の「日本一の茶摘み体験」に参加しました。ファンづくりなどの一翼を担っているこのイベントで、お茶を摘みまくって来ました! 記事の最後にプレゼントのお知らせがあります。
京都おぶぶ茶苑さんは、第11回 日本オンラインショッピング大賞「最優秀小規模サイト賞」、ベストECショップ大賞2007「特別賞」などなど、数々のアワードを受賞している有名ネットショップ。先日は第8回 全国ネットショップグランプリで「ネットショップ担当者フォーラム賞」を受賞されました。
そんなおぶぶ茶苑さんの地元がこの和束(わづか)地区。和束は宇治茶の産地。水も空気も本当にきれいな所です。
でも見とれている場合ではありません。今日の茶摘みは全国茶品評会に出品するための茶摘み。合計で40キロの茶葉を摘むために、1人当たり500枚くらい摘まなければならないのです。
お茶を摘むのに大事なのは「一芯二葉(いっしんによう)」。「芯」というのは開く前の葉のことで、その下の2枚の葉までを摘む、という意味です。さらに、3枚目の葉がピーンと内側に向かって張っているのはまだ摘むには若い葉。摘むべき葉は、後ろに向かって少しだけカールしている状態。この見極めがなかなか難しいのです。
渡されたカゴがいっぱいになるとシールを1つもらえて、シールが2つたまるとスイーツ休憩。茶団子と冷たいお茶がもらえます。
お昼には茶殻の佃煮のおにぎりと、お茶っ葉の天ぷら(揚げたて!)をいただきました。
熱いファンが支える「オーナー制度」
2010年にスタートしたこのイベント。回を重ねるごとに参加者を増やし、今回の参加者はなんと180人!
仕掛け人はこの方。京都おぶぶ茶苑副代表の松本靖治さん。
松本さんは2004年からおぶぶ茶苑のネットショップを運営しています。モールに出店していたこともありますが、現在は本店サイトのみ。
おぶぶ茶苑を支えているのは「茶畑オーナー制度」。毎月1,500円を支払うことで、年4回、美味しいお茶が届く制度です。
「茶畑オーナー制度の仕組みを作るのに5年くらいかけました。“ホントにできるんだろうか”と思ったんですが、始める前にメルマガで“オーナー制度やります。興味のある人は教えてください”って呼びかけたら、まあまあ興味がある人がいらしたんです。
最終的にローンチしたら、4日間で100人の申し込みがあって感動しました。過去最高に嬉しかったです。2004年くらいからネットショップを始めて、多くのネットショップオーナーと同じく暗黒時代もありましたが、やってて良かったというか、生きてて良かった。
そこから半年くらいで200名になって、2年くらいで500名。去年テレビで取り上げてもらったら反響が大きくて、現在オーナーさんは900名です」 (松本さん)
目標は5,000名だそうです! そんな茶畑オーナー制度も今年で7年目。
「7年間ずっと続けてくださってるオーナーさんもいるんです。中にはご年配の方がオーナーになってくださって、ご本人が亡くなられても娘さんとか息子さんが引き継いでオーナーになってくださることもあるんです。“オーナーさんなくしておぶぶなし”です。本当に感謝しています」(松本さん)
イベントにもオーナーの方が参加していました。
「オーナー制度のことははたまたまホームーページを見て知りました。もともとお茶が好きで日常的に飲んでいるので、好きなもののオーナーになれるっていうプレミアム感と、こういう試みがあるのを知ってそれを応援したい気持ちがあり、誰がどうやって作ってるのかが分かるものを年数回送ってくれることもあって、4年以上オーナーを続けています。
住んでいるのは宇治ですが、宇治に住んでても知り合いがいなければこういう体験をすることもないので、イベントもちょくちょく来てます。周りの人としゃべらずに黙々と摘むこと自体が楽しいです」(オーナーさん)
日本茶を海外に広めるために、できることを全部やる
参加者を見渡すと、たくさんの外国人の方がいらっしゃいました。おぶぶ茶苑では2009年から「日本茶を世界へ」というミッションを掲げ、さまざまな活動をしているのです。
「それまでも海外にお茶持って行ったりはしていたんでが、オーナーさんが200人くらいになった頃、自分たちが何を目指しているのかをもっと明確にした方がいいんじゃないかと思い、“日本茶を世界へ”というミッションに落とし込んで、活動をそっち中心にしていったんです。
日本茶を学びたい人を海外から受け入る「国際インターン制度」をやったり、海外に日本茶の普及に行ったり、英語のWebサイトを作って通販したり。日本茶を海外に広めるために、できることを全部やるっていう感じです」(松本さん)
イベントにも外国の方がたくさんいらしていました。多い時は参加者の半分近くが外国の方だそうです。
「日本茶の国内需要は年々減っていて右肩下がりなんです。でも海外での需要は右肩上がりなんです。すごい勢いで」(松本さん)
おぶぶ茶苑でも英語版サイトを作り、世界65か国に発送し、海外に住む日本茶ファンにお茶を届けています。
外国人スタッフも活躍中
インターン以外にも海外からやって来たスタッフがいます。シモナ・ザワツキテさんはリトアニア出身。大学に通っていた時に日本茶を知り、日本に来て3年。インターンを経て社員になりました。英語の問い合わせや、海外からのお客さんの対応などに忙しい毎日です。
この日も海外から日本茶を学びに来たグループを案内していました。
100年続くことを今始めたい
新茶が出るこの時期は、一年で最も忙しい時期だそうです。夕方まで茶畑で働き、それから工場で商品化までの加工を行うそうです。工場を案内してくださった松本さんの弟さんは「お茶大好きなんで、工場で寝落ちしちゃうんです」なんて笑っていましたが、美味しいお茶を作るってやっぱり大変なんですね。
「目標は長く続けていくこと。100年続けられることをやりたい。100年続くことを今始めたいんです」(松本さん)
おぶぶ茶苑のみなさん、体に気を付けて世界中のファンに美味しいお茶を届け続けてくださいね!
「最近、茶道を始めたんです〜」と編集部に伝えたところ、「じゃぁ京都にすごいネットショップがあるから行ってみましょう!」。大喜びで向かった今回の茶摘み取材。
一番驚いたのは日本人以上に熱心に茶摘みをしたり、懸命にメモを取りながら工場を見学したりしている海外からのお客様たちの姿でした。世代や国境を越えておぶぶ茶苑さんの情熱が届いている様子は、これまでのネットショップの裏側探検の中でも特に印象的な光景でありました。
彼らが母国に帰ってお茶の話をするとき、どんな話をするんでしょうか。お茶をきっかけに、どんな日本文化が伝わっていくんでしょうか。
もしかするとお茶の世界には、私たちがまだ知ることのない、人生を豊かにする偉大なパワーが潜んでいるのかもしれません。
取材を終えた私たちを松本さんの弟さんが「また来てねー!」と笑顔で見送ってくれました。そんなことを言われたら、また来年も行きたくなっちゃいますよー!!
満面の笑みの中に、本気で世界を目指す眼差しが輝いていたのでした。
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