株式会社いつも. 2017/8/4 7:00

これまでBtoBで事業を行ってきたメーカーや卸の企業様がBtoCに進出した際に陥りがちなシステムの落とし穴を紹介しましょう。

失敗するBtoC ECの多くが「BtoB」の業務フローを踏襲

BtoBで事業を行ってきた多くの企業では、規模の大きさから自社で基幹システムを持っていることが多く、そのシステムをそのままBtoC ECでも使用するケースが多く見られます。

BtoBでは、お客さまによって掛け率を確認して決済を行ったり、どこの会社にまとめて配送するのかなど、「特定のお客さまに対して、お客さまごとに異なる値段で、お客さまごとに個別の納品方法、決済方法で商品を売る」形態です。

しかし、BtoCのECとなると、「不特定多数のお客さまに商品を売る」こととなり、基本は「オーダーに対して誰にでも同じ値段で同じ待遇で商品を売る」形態が基本となります。

ただし、顔も見た事も話をしたことも無い人がお客さまとなるため、送り先の住所に間違いがないか、カートで入力された個人のクレジットカードが使えるのかといった受注ごとの確認作業が重要となります。

またBtoBの営業、特にルート営業などにおいては、在庫を確認することがお客さまとのコミュニケーションとなっている場合がありますが、BtoCの場合は「在庫はサイト表記上の通りに存在していて、期限通りに出荷をすることが当たり前」となります。

在庫を確認することに時間を費やして発送できなくなると、お客さまの不信につながりません。ECではオーダーに対して自動で正確に商品を引き当てること、在庫数は瞬時に最新の状態に更新されることがとても重要となります。

受注決済~売り上がるまでの流れが「BtoB」と「BtoC EC」はそもそも違うので、基幹システムがマッチしていません。そのため、「基幹システムで対応できない業務を手動で対応する」といったことが発生してしまうのです。

メーカーや卸がBtoCのECを始める際に気を付けるべきシステムの落とし穴
受注決済~売り上がるまでの流れが「BtoB」と「BtoC EC」はそもそも大きく異なる

事例:「BtoC」に進出したが、「BtoB」の業務フローのままで対応し、売り上げが伸び悩んでしまった企業

「BtoB」の業務フローのままで進んでしまうと、日々積み重なる売り上げと顧客数に、何とか手動で対応していくことになりますが……実際のところ、売り上げが伸びず、何が問題なのかがわからないといった事態が起こっています

ある企業の例ですが、「出荷が1日10件しかできない」「物流倉庫に問題があると報告があがった」ということで調査したところ、物流倉庫側には問題は見つかりませんでした。

むしろ「出荷指示が来ないし遅い」と倉庫側は言っています。実際には物流倉庫側の問題ではなく、受注から出荷までの業務フロー、基幹システムとのアンマッチに見えない課題が多く見つかりました

その課題とは、これまで通りのBtoB業務フローをBtoCにも踏襲しているため、数多くの手作業に追われ、さらに各部署の基幹システムにお伺いを立てる必要があり、BtoC ECの件数に対応できるものではなかったのです。

カートに注文が入ると、まず売上伝票を手動で作成、経理提出用に印刷までして、ECサイトの在庫は「前日のデータ」のため、正確な在庫は倉庫に問合せないと分からず、全注文分の在庫を電話で確認します。

在庫があった場合、お客さまにようやく「注文受付」のメールが送信できてやっとお客さまに取引完了を約束できますが、業務はこれだけでは終わりません。

送り状や納品書も、手動で作成・発行して倉庫に郵送します。なぜなら、倉庫にはカートの受注データをそのまま取り込んで帳票するシステムがないため、「電話で情報を交換するよりは確実だ」「FAXで送ると文字が霞んでミスになる」「メールは倉庫業務担当がPCを所持していないので、見れないため効率が悪い」といった理由です。

また、普段は送り主をショップ名にしますが、送り主と送り先が異なる場合は送り主情報を表記する、といったBtoC特有の商習慣もさらに業務を難しくしています。

ようやく出荷指示を出すのですが、出荷後には基幹システムの売上伝票の数字やステータス更新を行い、やっと1取引が終了。ただでさえ煩雑な手作業が多い上に、各部署の基幹システムにお伺いを立てることが多すぎて、1日10件程度の対応がやっとという状況だったのです。

たとえば、BtoBでは売上伝票を起票する際に「顧客台帳」の登録の有無を確認する場合が多く存在しますが、ECは不特定多数のお客さまに商品を買ってもらうので、そもそも顧客名簿を参照していません。

ほとんどのお客さまが新規ですから、こういった場合にいちいち顧客台帳に新規顧客として住所や電話番号を登録すること自体が手間となり、決済方法などは買い物ごと異なることも珍しくありません。そもそも、登録事自体が無意味だったりします。これは受注処理の担当者の大きな負担となります。

また、入出金もお客さまごとに確認したりしません。決済代行会社や運送会社からの決められた期間の入金を一括確認するようになっています。納品後にお客さまごとに入金を確認して催促する行為自体がそもそもありません。経理担当者の大きな負担となりますよね。

こうした課題は、「業態や基幹システム的に仕方がない」と放置されていることが多いのですが、実際のところ受注管理システムを導入することでほとんどの業務を数万円以内で自動化することが可能だったりします。

「基幹システム+EC受注管理システム」という組み合せはもはやデファクトスタンダードとなりつつあり、売上/評価につながらない業務をなくそうと日々進化が進んでいます。

受注後に在庫を自動で引き当て、一括で納品書や送り状を帳票できるのがECの標準業務です。それでも「うちは無理だ」と思われる人もいるでしょう。

ECという販売チャネルを「1つのお店」「1人の顧客」「1つの銀行口座」と仮定し、基幹システムとの連携を想像するとできないことではないイメージできるのではないでしょうか。

幅広い視野を持つことで見つかる問題の本質

通常であれば上記の事例ような課題はすぐに発見できそうなものなのですが、規模が大きな会社になればなるほど、原因の究明が難しくなります。多くの部署でそれぞれ責任者を置いているため、各部署の都合や些細な見落としが原因となり、問題が表層化してこないということが多くあります。

「なぜかうまくいかない」という状況を打破するためには、幅広い視野を持つ外部の目をあえて入れることで一気に解決できる可能性があります。

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