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少子高齢化、競争激化などECサイト運営を取り囲む環境が厳しくなる今後、新規獲得客からの再注文率(リピートオーダー)を増やすことが収益力を高める1つのカギとなる。スタッフの顔が見えないECだからこそ、メールのやり取りは顧客との関係性構築に重要な役割を果たす。スピーディーな返信や丁寧なメール接客がいかに大切なのか、そしてそれを実現する方法とは? 顧客満足度を高めて顧客生涯価値(LTV)を向上させるメール接客のポイントを、ラクスのカスタマーサービス・クラウド事業部・西山和人氏が解説する。

顧客をファンに変えるメール接客のポイント

西山氏はLTV向上に直結するメール接客のポイントとして、ECサイトの利用者を対象としたアンケートの結果などを踏まえ、「スピーディーに対応する」「丁寧に対応する」「品質を一定化する」の3点をあげる。

ラクスのカスタマーサービス・クラウド事業部・西山和人氏
ラクスのカスタマーサービス・クラウド事業部・西山和人氏

7割以上が満足する返信時間は「3時間以内」

「好印象を抱くメール対応」として1つ目に重要なポイントは「スピード対応」。しかも、顧客が満足するメール返信時間の水準は年々短くなっているという。

「満足するメール返信時間」は、2014年時点では「3時間以内」は58%だったが、2016年の調査では73%。より迅速な返信時間を求める傾向となっている。ECサイトに求める対応スピードが上がっている背景について、西山氏は次のように言う。

「アマゾンプライム」「あす楽」といった即日・翌日配送が当たり前になっていることと、スマホの普及でリアルタイム型のコミュニケーションに慣れてきている。メールの対応も同じくらいのスピード感を求められていると思う。

お客さまが満足するメール返信時間の水準
【アンケート対象】ネットショップを利用したことのある一般消費者500名
2014年
30分以内18%、1時間以内22%、3時間以内18%、半日以内25%、1日以内16%
2016年
30分以内43%、1時間以内22%、3時間以内8%、半日以内16%、1日以内11%
求められる水準は年々早くなっています
消費者が満足するメール返信時間は年々早くなっている

実際に大手ECモールが主催するアワードを受賞するような有力ECサイトは、どのくらいの速さでユーザーからのメールに対応しているのだろうか?

ラクスが2016年の「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」受賞ショップを対象に調査したところ、80%のECサイトが3時間以内に対応していた。しかも、2014年調査と比べると、対応速度は速くなっているという。

人気ショップのメール対応スピード
楽天市場ショップオブザイヤー2014受賞ショップ
30分以内22%、1時間以内12%、3時間以内28%、半日以内14%、1日以内15%、それ以上9%
楽天市場ショップオブザイヤー2016受賞ショップ
30分以内29%、1時間以内16%、3時間以内35%、半日以内8%、1日以内4%、それ以上10%
「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」受賞店舗は、メール対応スピードが速くなっている

顧客から高評価を得る丁寧なメール対応

メール接客における2つ目のポイントは「丁寧なメール対応」。返信メールの言葉遣いや表現が丁寧であることはもちろんだが、過去のやり取りを踏まえて顧客対応すると消費者からの評価が高くなるという。

では、「丁寧なメール」とは具体的にどのようなものか。フレックスが運営するパジャマやルームウエアのECサイト「パジャマ屋」のメールを参考に見てみよう。

まず「差出人名」は誰からのメールかが一目で分かるように店舗名を表示。注文後であれば「件名」には「ご注文ありがとうございました」記載する。つまり、送信元や件名を見ただけでメールの内容がわかり、「署名」には自社製品の特徴を表すPRも入れている。ここでのポイントは、電話、FAX、住所までしっかり署名していることだ。

住所が記載されていると、お客さまは、この店舗はきちんとした安心できる店舗だと感じる。ぜひ入れた方がいい。(西山氏)

返信メールの好事例(パジャマ屋)
誰からのメールか一目でわかる
送信元や用件が件名だけでわかる
自社のPRも忘れずに
「パジャマ屋」の返信メール事例

「パジャマ屋」の返信メールの文章には、対応したスタッフの個人名を記載されている。名前を出すことによって、1対1でやり取りしているという印象を顧客に与えるようにするためだ。

次に重要なのは、個人名を記載した上で、「大切な贈り物をお選びいただき、とても嬉しく思います」と感謝の気持ち、感情の表現を入れていること。消費者はテンプレートによる対応を嫌がる。だが、ショップ側としては1日に何件もメールしなければならないので、テンプレートはどうしても必要になる。テンプレートを使う際、「感情表現のような1文を挿入するだけで、印象が大きく変わってくる」(西山氏)。

さらに、ユーザー1人ひとりに向けた、オリジナルのメッセージを記載することも重要だという。「店長の○○がお世話になっております。お買い上げいただいたことを申し伝えます」から始まり、「○○さまとのご友人とのことで……」といった文書など、顧客しか知り得ない情報を文章に盛り込むことで、1対1のコミュニケーションが成立している印象を与えることができるという。

返信メールの好事例(パジャマ屋)本文
園⼭直希様こんにちは。【パジャマ屋】スタッフ花島みきです。新緑の季節となりましたね。この度は、パジャマ屋【本店】をご利⽤いただきまして、誠にありがとうございます。⼤切な贈り物をパジャマ屋でお選びいただき、とても嬉しく思います。【当店からのメッセージ】------------------------------店⻑の熊坂がお世話になっております。ご丁寧にお書き込みいただきましてありがとうございました。ご注⽂がありましたことは熊坂に申し伝えました。鈴⽊⾼俊さまのご友⼈とのことで、早速ご注⽂いただきまして感激です♪どうぞ、今後もお気軽にご利⽤くださいませ♪最後になりますが、到着⽇は【5⽉17⽇(⾦)20-21時着】で⼿配いたしました。発送が完了しましたら再度メールにて【ヤマト配送番号】をお知らせいたします。合わせてご確認いただけましたら幸いです。ご両親様にお喜びいただけますように・・・
顧客しか知らない情報を文章に盛り込むことも好印象という

全スタッフが同じ品質で対応する

例文で見てきたような文面を、スタッフ全員が同じように作れるようにならなければ意味がない。しかし、新人のスタッフとベテランのスタッフでは、どうしても接客力に差が生じる。

それを防ぐためには社員教育がポイントとなるが、その際重要なのは、「文面の手本を新人スタッフに示し、先輩スタッフがどのように対応しているのか、新人スタッフがいつでも見る事ができる状態にする」(西山氏)ことだ。

さらに、新人スタッフがメールを送る前に、必ず誰かがダブルチェックをしてから、メールを送信するようにすると安心だ。そういったことを心がけて、新人スタッフが失礼なメール対応をしてクレームになってしまうといったことを防がなくてはならない。

重要経営指標は「CPA」と「LTV」

お客さま1人ひとりを大切にして、お客さま1人あたりがショップで使ってくれる金額を増やしていく必要がある。(西山氏)

このようにメール接客の目的を西山氏が説明する背景として、EC市場の競争激化に伴い、顧客1人を獲得するのに必要な金額を表す顧客獲得単価(CPA)が高騰していることがあげられる。

国内のBtoC-EC市場は拡大トレンドにあり、2016年の市場規模は前年比9.9%増の15兆1358億円(経済産業省公表)へと拡大した。一方、新規参入企業の増加などプレーヤーの増加によって競争が激しくなっており、CPAは高止まりが続く。

ここで重要になるのが、顧客1人が生涯、ECサイトに対していくらの売り上げ・利益をもたらすかを示す「LTV」だ。

LTVはユーザー1人あたりの平均購買単価と平均利用回数で算出することができる。LTVを高めるには、アップセルなどで顧客の平均購買単価を高めるか、リピート率を高めて平均利用回数を増やすことが必要となる。その際、メルマガなどを活用したCRMが重要な役割を果たす

メールを使ってお客さまのロイヤリティを向上させること、ファン化させることは、『購買単価』と『利用回数』を引き上げる施策になる」(西山氏)。また、リピーターの獲得コストはCPAの5分の1と言われていることに言及し、メールで顧客をファン化することは、費用対効果の点でもメリットがあると指摘した。

顧客のファン化に役立つメール対応システムは?

顧客ニーズの変化に伴い、メールでの問い合わせが増えるなか、ショップの人員は限られるため多くのスタッフを顧客対応に割くのは難しい。こうした環境で理想のメール対応を実現するのが、問い合わせ対応専用システム「メールディーラー」だ。

「メールディーラー」ではお問い合わせメールを、未対応の「新着」メール、「返信処理中」のメール、「対応完了」のメールという風に、状態毎に管理し、スタッフ全員で確認することが可能だ。1つのメールボックスを複数のスタッフが閲覧でき、同時に作業できるといった特徴がある。また、メール対応担当者ごとにメールを振りわけることができるので、二重返信が防げるほか、自分が対応しなければならない未対応メールだけをすぐに確認することができる。

さらに、1つひとつのメールにはユーザーやスタッフのコメントを付けることも可能。クレーマー客などの注意喚起や、引継ぎ事項の共有を行うことができる。

お問合せ対応専⽤ツール「メールディーラー」Mail Dealer
お問合せに対して、「誰が」、「いつ」、「どのような」対応をしているのかを、リアルタイムで共有することで、迅速かつ⾼品質な顧客対応を実現します。
「メールディーラー」の機能の一部

「ネクストエンジン」「TEMPOSTAR(テンポスター)」「CROSS MALL(クロスモール)」といった受注管理システムとの連携機能も、ネットショップ運営企業から支持される理由の1つという。

これは、顧客から問い合わせがあったとき、メールディーラーの画面から各受注管理システムの呼び出しボタンをクリックすると、受注管理システムに保管された、その顧客の注文履歴を表示することができるというもの。

また、各受注管理システムから「メールディーラー」上の顧客対応履歴を呼び出すことも可能。この連携機能は、たとえば顧客から注文番号や注文内容が記載されずに「キャンセル」のメールが寄せられたといったケースにおいて、作業効率や正確性を向上させることができるという。

お客さまからいただいた問い合わせメールに対して、誰が、いつ、どのような対応をしているのかを、スタッフ間でリアルタイムに共有できるようになっている。これによって、スピーディーで高品質なメール対応が実現する。(西山氏)

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石居 岳

石居 岳(いしい・がく)

フリーライター、ジャーナリスト。

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