石居 岳 2019/8/26 8:00
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ECの市場規模が右肩上がりで拡大する中、1人あたりの新規顧客獲得コストの増加などで新規の顧客獲得が難しくなっている。ECビジネスで収益力を高めるためには、既存顧客との関係性を維持しつつ、長期にわたり購入に結び付けるLTV(顧客生涯価値)の向上が重要なポイントとなる。LTVを高めるために欠かすことのできない、丁寧・迅速なメール対応の重要性を人気ECサイト「パジャマ屋」の事例を踏まえてラクスの矢崎澪氏(カスタマーサービス・クラウド事業部)が解説する。

顧客のファン化に取り組む前に知っておくべき3つのこと

顧客獲得に関するコスト「1:5の法則」

ECビジネスで売上高を伸ばすには、①新規顧客を獲得②既存顧客を固定化――することが重要な要素となる。

たとえば、1人あたりの新規顧客獲得コストが2万円だった場合、既存顧客のリピート化は4000円でできるとされ、新規獲得コストの5分の1で済むと言われる。このコストの差異は、新規の顧客獲得には集客のための広告費、SEO対策やそれにかかる人件費などが必要となるためだ。既存顧客をリピーターに育成することができれば、広告費はかからない。そして、生涯顧客に育成できる可能性もある。

新規顧客を獲得するために、既存顧客の5倍のコストがかかるということは、コストのかからない既存顧客の方が利益率は高くなります。新規顧客は非常に重要ですが、利益率の高い既存顧客の維持も重要なポイントです。(矢崎氏)

株式会社ラクス カスタマーサービス・クラウド事業部 矢崎澪氏
株式会社ラクス カスタマーサービス・クラウド事業部 矢崎澪氏

LTVの算出

近年、ECの市場規模は右肩上がりで成長しているものの、市場拡大に伴い競争は激化し、1人あたりの顧客獲得コストは上昇。Web広告も競合が増えることによって、入札価格が上昇し、顧客獲得単価が高騰する状況が起きている。そこで注目されているのがLTVという指標だ。

LTVとは「顧客生涯価値」の意味で、LTVを算出することによって、顧客がショップにどれだけの利益をもたらすのかがわかる。またLTVを向上させるためには、その顧客の購買回数を増やすことが大事となる。

つまり、1人ひとりの顧客を大切にすることで、顧客あたりの満足度を高めてリピーターを獲得する必要がある。

リピーター獲得には顧客満足度UPが重要

リピーターを獲得するには顧客満足度を高める必要がある。顧客満足度向上に注力している企業として、スターバックスコーヒーの名前があげられるだろう。

スターバックスコーヒーは豊富なドリンクとフード、親しみのある接客、くつろげる空間、無料で利用できるWi-Fiなどが、顧客満足度を高めている理由として考えられる。「カスタマーエクスペリエンス(CX)」という言葉があるが、これは商品購入後のプロセスやサービス利用時などに、顧客が体験する心地良さ、驚き、感動などの付加価値のことを指し、スターバックスの提供している「親しみのある接客」「無料で利用できるWi-Fi」などがこれにあてはまる。

つまり、カスタマーエクスペリエンス(CX)が顧客満足度向上のカギとなる。

CXを分解すると「内的要素」と「外的要素」の2つに分けられます。「内的要素」は提供するサービス自体の品質で、「外的要素」は提供するサービスに付随する体験の品質です。スターバックスの事例にあてはめると、「内的要素」はフードやドリンクの品ぞろえの豊富さ。外的要素は親しみのある接客があてはまります。(矢崎氏)

では、ECショップの場合、どのようにカスタマーエクスペリエンス(CX)を向上させたらよいのか。スタバは対面式接客だが、ECショップの場合、接客は主にメール、電話、チャットなどがあげられる。この内、一番使われる手段はメールで、メールでの問い合わせ対応が重要なポイントとなる。

矢崎氏によると、直近6か月でカスタマーサポートを利用した500人にアンケートを行った結果、「最初にメールで問い合わせする」と回答した方が全体の65%を占めて第1位。「最初に電話をする」は23%だった。「まずメールをしてから電話もする」が26%で第2位となっている。

メールで最初に問い合わせた内の20%のお客さまは、それ以外の問い合わせ手段を利用していません。つまり、メールで問い合わせをしたお客様に関しては、電話コールの催促をくれないので、早く対応しないと逃げられてしまう可能性が高い。ECサイトの怖いところは少しでも対応が遅れると他のサイトにすぐ心移りしてしまうことです。このことからメール対応の重要性が認識できると思います。(矢崎氏)

楽天ショップで総合評価4.8を誇るECサイト「パジャマ屋」に学ぶ支持される顧客対応

パジャマを販売しているECサイト「パジャマ屋」は、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)の受賞店舗で、顧客対応に優れていると評判の店舗だ。パジャマ屋で購入する人の6割はギフトとしてパジャマを購入している。

「楽天市場」内の「パジャマ屋」のレビュー件数は4,600件近くあり、総合評価は4.81と驚異的な数字。評価内訳の「スタッフの応対」では4.92という高評価を得ていますが、ECサイトなので「スタッフの対応」は主にメールです。実際のレビューを基に高評価を得た「パジャマ屋」の取り組みを説明します。(矢崎氏)

高評価レビュー獲得のカギは4点

ECサイトが顧客満足度を高めて高評価のレビューを獲得するには、「メール対応の丁寧さ」「メール対応の迅速さ」「豊富な品揃え」「丁寧な梱包」(ラッピング)が鍵になるという。

「モノ以外のところで考えると、メールでの対応が顧客満足度を高めるポイントとなり、レビューの評価につながってくる」(矢崎氏)。レビューの評価は、初めてECサイトを訪れる新規顧客に与える影響が大きいことも忘れてはいけない。

差別化ポイントは「迅速な対応」「丁寧な対応」

一般的に顧客満足度は、「顧客が感じた価値が期待値を上回ったときに顧客満足度は高まる」と言われている。要するに、顧客の期待を上回るサービスが提供できれば、顧客満足度を高められることになる。

そこで、重要となるのは「期待値を把握すること」だが、顧客がネットショップに期待することと言えば、「豊富な品揃え」「商品の安さ」「迅速・丁寧な対応」など、さまざまなことが考えられる。

安さや品揃えは、ECサイトがすぐ取り組むにはとても難しいと思います。送料も高くなっていますし、今よりさらに安くするというのは厳しい状況ではないでしょうか。現状の中で差別化できる取り組みとして「迅速な対応」と「丁寧な対応」であれば、すぐに着手できるでしょう。(矢崎氏)

高評価レビューにつながる問い合わせ対応のポイント

レビューの評価が低くなるようなメール対応の原因の多くは、「誰がどのメールに対応したのか」が分からなくなり、返信が漏れるといった事象。たとえば、メール担当者が急な休みによって、他のスタッフは対応状況を把握できていないため顧客対応できないといったことがあげられるという。

その他にも、新人が送るメールをチェックする体制が整っていない事例もある。経験の浅い新人がメールを対応し、言葉遣いや案内を間違えるなどでクレームに発展するケースも多い。テンプレートを使ってメールの文面を均一化するほか、テンプレートを使いながら顧客ごとに異なる一文をオリジナルで添えるなど、誰がどのメールを送ったのかを管理すると同時に、内容をチェックする体制作りが欠かせないと矢崎氏は指摘する。

高評価レビューの獲得につなげるための返信メールのポイントは、まず返信漏れをなくしましょう。そして対応スピードを上げてください。3つ目は対応品質を上げていきましょう。4つ目は特別感を演出。特別感の演出というと難しい話に聞こえてしまいますが、過去のやり取りを踏まえた一文を添えるだけでも評価や好感度が高まります。(矢崎氏)

「パジャマ屋」の事例に学ぶメール作成3つのポイント

矢崎氏は、対応メールを改善するための3つのポイントを紹介した。

1つ目は「件名は短く、的確な内容にする」(矢崎氏)こと。「Yahoo!ニュース」のタイトルは13字以内で付けられていると説明し、「それは京都大学大学院の研究によって人が1度に視覚できる範囲が9~13字とされているためだ」と矢崎氏は説明。「Yahoo!ニュース」はそのテクニックを活用しているが、ビジネスメールにも応用できるという。

2つ目のポイントは本文に「感謝の気持ちを伝える」こと。以下は実際のパジャマ屋の返信メールの内容である。

この文面には、サイト利用に関するお礼に加えて、ショップを選んでくれたことに関する感謝の気持ちが入っています。この一文があるかないかで、印象はかなり変わります。テンプレートに一文、デフォルトで入れておくのも一つの手です。(矢崎氏)

3つ目のポイントは本文に「オリジナルメッセージを入れる」こと。「パジャマ屋」の返信では「〇〇様のご友人ということで早速ご注文いただきまして感激です。どうぞ今後ともお気軽にご利用くださいませ」といった文面を入れるケースがある。個人名を入れることで機械的にならないといった効果があるという。

年々求められる対応スピード

レビュー評価の高いネットショップのメール対応の特徴として矢崎氏は、「メールの返信が丁寧」であり「オリジナリティーがある」こと、そして「対応スピードの速さ」をあげた。

対応スピードについては興味深い調査結果を矢崎氏は公開した。ECサイトを利用したことがある500人を対象に、好印象を抱く対応について聞いたところ、2011年は3時間以内に返信があれば60%の顧客は満足していた。それが2016年になると1時間以内、つまり60分以内の対応で60%の顧客が満足しているのだ。

2016年のデータは少し古いので、今は返信スピードに対してより厳しくなっていると思います。スピードが重要視される背景としては、LINEやFacebookなどSNSの台頭、楽天市場の「あす楽」やAmazonの当日配送など、モノの流れが速くなっており、お客さまが求めるスピードが年々上昇しているのだと考えられます。(矢崎氏)

他のECサイトはどうやっている?

矢崎氏は「パジャマ屋」以外のECサイトが取り組んでいるメール対応の事例を紹介した。

カニのネット通販で知られる北国からの贈り物は、問い合わせ対応は原則5分以内。返信が速ければ速いほど、顧客を安心させる材料になっているという。

ABCマートは、相手の年齢や性別を意識したメール文面で返信。「価格.com」は定型文だけで返信は行わず、200以上のテンプレートをベースに1通1通アレンジして送信しているという。

「迅速」「丁寧」なメール対応は「メールディーラー」が実現

顧客に支持されるメール対応を行うにはどうすればいいのか? こうした課題や悩みを解決するのが、「迅速」で「丁寧」なメール対応や複数のスタッフでメールを共有・管理できるシステムが「メールディーラー」(ラクスが開発・販売)だ。

自社ECサイトだけでなく「楽天市場」「Amazon」「Yahoo!ショッピング」などの複数店舗のメールも一元管理することが可能。「Yahoo!ショッピング」は最近、管理画面上からのみ返信できる設計に仕様を変更したが、「メールディーラー」なら他のモールと同様にメールディーラー上でのメール対応が可能だ。

他のスタッフの対応状況が一目で分かるようにする機能は、ECサイトの顧客対応業務を大きく改善することができる。過去のやり取りもワンクリックで呼び出せるほか、さまざまな受注管理システムと連携しており、顧客の注文情報を呼び出す手間も省けるという。

矢崎氏は、顧客をファン化させるための顧客対応を実現するための手段として、「メールディーラー」を活用する人気店舗が増えていることについて言及。次のように説明した。

2017年度の「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」総合賞に輝いたECサイトのトップ10のうち、どこのショップとは言えませんが8店舗が「メールディーラー」を利用しています。人気のECサイトは「メールディーラー」を利用しているといっても過言ではないと思います。(矢崎氏)

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