小売事業者は、人間の行動心理を理解した上でWebサイトを制作しなければいけません。気づいてもらうためには目立たせる必要があります。「購入」ボタンには背景の色に溶け込まない色を使いましょう。

ECサイトを最適化する際、ユーザー心理の原則を考慮することなく、戦術に特化してしまいがちです。

「コール・トゥ・アクション(CTA)」の色は何色がいいかという議論を見れば明らかでしょう。コンバージョン率が優れたボタンの色を聞かれたら、“赤”とか“オレンジ”、もしくは他の色を答えるでしょうが、大抵の場合は間違っています。

マーケティングブログHubSpotに掲載されたCTAボタンに関する有名な実験で、「赤は緑に勝つ」という結果が報告されています。

赤と緑のボタンのクリック率をテストしたところ、赤いボタンの方が21%多くクリックされた
赤と緑のボタンのクリック率をテストしたところ、赤いボタンの方が21%多くクリックされた(編注:HubSpotの記事を編集部がキャプチャし追加)https://blog.hubspot.com/blog/tabid/6307/bid/20566/the-button-color-a-b-test-red-beats-green.aspx

この結果に関して、私の中の心理学者の血が騒ぎ、この実験の欠点に気づきました。根本的な心理原則を考慮に入れつつ、実験の条件を変えたら「緑が赤に勝つ」という結果になったことでしょう。その心理原則とは、感覚順応の原則です(この記事のなかで触れる原則の1つです)。

コンバージョン率アップのためにECサイトの最適化を試みている場合、戦術だけに注目した単純な物の見方を避けることが大切です(実験結果を再現するのが難しくなります)。そうではなく、ユーザーの行動に影響する心理原則を理解し、それらの原則に基づいてサイトを変更しましょう。今回は大切な3つの原則をご紹介します。

心理の原則1:感覚順応

「赤は緑に勝つ」という結果を掲載したHubSpotの実験に話を戻しましょう。実験に使用された2つのページを注意深く見てみると、共通項があることに気がつくはずです。CTAボタンの実験が行われたWebページは両方とも緑が基調です。その結果、赤いボタンが目立ち、緑のボタンは溶け込んでしまったのです。それが、結果に影響を与えた可能性があります。

心理学では、周りに溶け込むものは気づかれず、目立つものは気づかれると言われています。これは感覚順応(神経順応)と呼ばれる、「一定の刺激に対する感覚システムの反応の時間変化」です。

言い換えると、私たちの脳は同じ刺激に何度も触れると、反応が鈍くなるということです。靴や洋服も時間が経てば新鮮味がなくなりますし、熱湯に手を入れても、少し時間が経つと、痛みをあまり感じなくなるのと同じです。同じ理由で、緑が基調のWebページでは、緑のボタンは簡単に気づかれないのです。

ECサイトへの示唆

サイト訪問者に新しいCTAや新機能に気づいてほしければ、サイトに溶け込まないようにしましょう。赤を基調としたサイトならば、CTAボタンを赤にするのは得策ではありません。このルールは、サイトのどの要素にも当てはまります。感覚順応の原則を取り入れてECサイトを作れば、コンバージョン率は急激に上昇するでしょう。

心理の原則2:ウェーバーの法則

いくらコンセプトは良さそうでも、心理的に突然の大きな変化には心の準備ができていないものです。スナップチャット(編注:カメラアプリ)がデザインを新しくした際、大きな反発を受けたのはそのためです。

デザイン変更でも価格変更でも、既存商品の改善であっても、最小(丁度)可知差異の原則を知ったうえで行いましょう。最小可知差異とは、何かを変更する際に、短時間で気づいてもらえる最小単位の変更を指します。

どんな変更を施すかによりますが、その変更が最小可知差異よりも下なのか上なのかを確認することが大切です。ポジティブな変更は最小可知差異ちょうどかそれ以上、ネガティブな変更は最小可知差異よりも下であることが大事です。

サイト改善のアドバイス
  • すでに人気のWebサイトのデザイン変更をする場合、大胆に変えるのはやめましょう。少しずつデザインを変更していくことも可能です。
  • 商品の価格を上げたい時は、大きな値上げは避けましょう。希望価格になるまで、少しずつ価格を上げていくのです。
  • 顧客からリクエストがあった商品改善案を採用した場合、すぐに変化に気づいてもらえるよう、変更前との違いを明確に示しましょう。

商品の値上げでもECサイトのデザイン変更でも、何かを変えるときには、ウェーバーの法則、最小可知差異を意識して、反感を買うのを避けると同時に、コンバージョン率を上げましょう。

心理の原則3:快楽原則

快楽原則という考えをフロイトが紹介したのは、我々が今より忍耐強かった時代です。しかし今、ECサイトを快楽原則に反した形で最適化すると、コンバージョン率は下がるでしょう。

我々はすぐに得られる喜びを求めることが、心理学者の研究でわかっています。それだけではなく、すぐに喜びを得られない場合は、無視したり反発したりするのです。人間の集中力が続く時間はどんどん短くなり、今では集中持続時間が短いことで有名な、金魚よりも短いという調査結果もあります。Webサイトのローディングが1秒遅れるだけで、コンバージョン率が7%も下がると言われるのも理解できるでしょう※1

※1 編集部注:アバディーングループの調査によると、Webページの表示速度が1秒遅くなると次のような悪影響を及ぼす
  • コンバージョン率:-7%
  • ページビュー:-11%
  • 顧客満足度:-16%

スピードが遅いサイトは、快楽原則に反するため、コンバージョン率が下がります。ECサイトのスピードを最適化していない場合は、何かしら手を打つ必要があります。

快楽原則を満たすためのポイント
  • Webサイトのスピードを早くしましょう。キャッシュを有効にし、CDNを活用し、スピードに特化したWebサイトビルダーやCMSを使いましょう。膨らんだコードを削除し、必要であればホストを変えましょう。
  • サイト上での行動の進捗が見えるようにしましょう。たとえば、チェックアウトページやページローディングの時などです。サイト上で進捗を明確に示し、待ち時間がわからない状況が売り上げに悪影響を及ぼさないようにするのです。
  • チェックアウトプロセスを簡潔にしましょう。記入すべき多くのフィールドや長いチェックアウトページは、コンバージョン率に悪影響を与えることが調査でわかっています。
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この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア「Internet RETAILER」の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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