渡部 和章 2018/7/9 10:00

東京商工リサーチが実施した国内企業の賃上げに関する調査によると、2018年春に賃上げを実施した企業は82.2%だった。賃上げの理由は「雇用中の従業員の引き留めのため」が最も多い。特に中小企業が人材流出を防ぐため賃上げを行っている。

アンケートに回答した企業7408社のうち、「賃上げを実施した」と回答したのは6086社(82.2%)。大企業(資本金1億円以上)は「賃上げを実施した」が880社(84.6%)、中小企業(資本金1億円未満や個人企業)は「賃上げを実施した」が5206社(81.8%)だった。

東京商工リサーチが実施した国内企業の賃上げに関する調査

2018年春に賃上げを実施した企業の割合

賃上げした理由は?

賃上げを実施した理由について質問し、賃上げを実施した6086社のうち、5384社から回答を得た(選択式・複数回答)。

「雇用中の従業員の引き留めのため」が2735社(50.8%)で最も多い。次いで「業績が回復したため」が2008社(37.3%)、「従業員の新規採用のため」が1245社(23.1%)、「同業他社の賃金動向を鑑みて」が1121社(20.8%)、「地域他社の賃金動向を鑑みて」が1113社(20.7%)。

「雇用中の従業員の引き留めのため」は大企業が42.2%に対し、中小企業は52.1%で9.9ポイント高い。

賃上げを実施した理由(画像は東京商工リサーチから編集部がキャプチャ)

中小の小売業や運輸業は人手不足

賃上げの理由を業種別にみると、小売業は「雇用中の従業員の引き留めのため」と回答した割合が52.5%で全業種の平均より高い。中小企業(資本金1億円以下)の小売企業は「雇用中の従業員の引き留めのため」と回答した割合が220社中、118社(53.6%)だった。大企業(資本金1億円以上)は22社中、9社(40.9%)。

運輸業で「雇用中の従業員の引き留めのため」と回答した割合は、大企業が21社(構成比56.8%)で5割以上、中小企業は134社(同68.7%)と約7割に達している。

東京商工リサーチは「労働集約型の業種では規模格差=賃金格差、待遇格差の部分が強いだけに、人材確保・維持に中小企業ほど積極的に取り組んでいることがわかる」としている。

今回のアンケート結果について東京商工リサーチは次のようにまとめている。

中小企業ほど、「雇用中の従業員の引き留めのため」と回答し、人材流出を死活問題と受け止め、賃上げに真剣に取り組む姿勢が浮かび上がった。賃上げは個人消費を盛り上げ、小売業やサービス業から流通業、製造業へと景気の好循環を実現し、企業業績に好影響を与える基礎となる。だが、人口減少のトレンドに打開策が見出せない時代には、大企業が将来に向けた設備投資、賃上げに積極的に動くと、中小企業の人手不足が深刻になるジレンマが定着し始めている。中小企業も政策支援策に依存するだけでなく、独自の現状ニーズへの対応から将来のビジネスモデルを描けるだけの力量を築くことが求められている。

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